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きみの手を引いて:番外編2

  

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい 
             

   第2話

             
「風呂入って来い」
 オレを部屋に上げた男は、顔をしかめて命令した。そーいや四日か五日か風呂入ってなかったんだっけ、と自分の肩に鼻を寄せて臭いを嗅ぐ。

 男は本当にホンモノの金持ちみたいだった。高層マンションの最上階にひとつっかない部屋、めちゃくちゃ広い大理石張りの玄関、吹き抜けのある広いホール。これまただだっ広いLDKを抜けて反対側のドアを開けると廊下に並ぶドア。その内のひとつ、引き戸を開けるとそこが洗面所兼洗濯乾燥室で浴室に続いていた。

 垢だらけの身体と髪の毛を何度も洗う。特に髪の毛。汚れのせいでなかなか泡が立たない。
 多少苦戦した後、青くて丸いでっかいバスタブに浸かる。一瞬、空腹を忘れるほど心地いい。

 あー極楽。やっぱ風呂入んなきゃダメだよねー。
 すっかり気分を良くして腰タオルでリビングに行く。着たきりで汚れ放題だった服を身に着けるのは抵抗があった。

 ─── ピザが来ている。リビングのドアを開けたとたん判る、フクイクたる香り。
 オレは陶然となってセンターテーブルにふらふらと近寄り、愛しのピザとご対面。
「よだれ垂れてんぞ」

 ソファーに座って煙草を吸っていた男が指摘する。
「えっウソ、マジで」
 一応そう答えてみたが、ヨダレなんかどうだっていい。オレはピザを一切れ引っつかんで口に運んだ。おおー、チーズがハムがたまねぎがサラミがトマトがハンドトスの生地がすばらしいハーモニー。イタリア最高。デリバリー万歳。

 毛足の長いラグの上に座り込んで夢中で食べ進めるオレに、男は缶ビールを寄越す。ちょっと躊躇して ─── ビール飲んだことなかった ─── それでも平静を装ってプルトップを開ける。苦い。
 一息ついたオレは男に訊いた。

「あのさー、オレマッパなんだけど。着替え貸して?」
 そう訊かれるのを予想していたように、男はソファーの上のスウェットを顎で示す。
「あんたの? これ」

 舐めた指をティッシュで拭いて、パジャマ代わりらしいそれを広げる。多分デカいな、これは。新しいトランクスとTシャツも広げてみて、さあ着るか、と腰タオルを押さえて立ち上がる。

 男が、じっと見ていた。
 絡み付くような熱っぽい視線。煙草を吸いながら、オレを観賞している。
「……着替えづらいんだけど」

「そうか?」
 平然としたまま男は視線を外してくれない。タオルの下まで透視されているような気がして、いたたまれず、俯いた。

「着替えづらけりゃ、部屋、貸してやる」
 男は着替え一式を手に取り、リビングを出る。浴室があった方の廊下を進んで一番奥のドアの前で立ち止まり、オレを待っている。

 洗面所でいいのに、と思いながらその前を通り過ぎた。

 オレの片手に着替えを持たせ、外開きのドアを開ける。
「……ほら、入れよ」

 中は暗かったが廊下からの明かりで様子が判る。黒い絨毯。カーテンの引かれた大きな窓。パソコンが載ったデスク。─── 真ん中に大きなベッド。
 寝室だ。恐らく、この男の。

 どん、と背中を強く押される。オレは足を縺れさせながらその部屋に踏み入った。
 着替えが、ばさっと落ちる。

 振り返り、後ろ手にドアを閉める男を見上げた。
 オレは今どんな顔をしているんだろう。ほっぺた引きつってる?哀願する目付き?
 いや待て、まだ挽回できる。この状況を打破する、最上にして最強の一手。

「……オレ、男だよ」
 どうだ。上擦った声でも威力は絶大、うっかりオレの顔に血迷った男は我に返り、背を向けて出て ─── 。
 行かなかった。

「判ってる」
 男は唇の端を上げて哂いながら近づいてくる。
 そりゃそうだ、オレが男だなんてことは先刻承知、顔だけならともかく、剥き出しの薄い胸も、脛毛がほとんど生えてない肉付きの悪い足も、女と見紛うのは無理だ。

 無理があり過ぎる。
 つまり。
「……!」

 逃げろ。

 男の脇を通り抜けようと突進、あとちょっとでドアレバーに手が届く ─── 。
「おっと」
 男はとおせんぼするように腕を伸ばし、突っ込んできたオレを抱き止める。その勢いのまま、ベッドに押し飛ばされた。

「……ッ!」
 仰向けに飛ばされたオレは、ベッドに肘を突き、頭を上げる。そこへ、体勢を変える間もなく男が馬乗りになった。

「ちょっと待ったちょっと待ったっ!?」
 二回も言った。あまつさえ、男のがっしりした胸板を押し返しもした。
 しかし男は、これっぽっちも、ほんの少しも、ちょっとも、待たない。

 オレの腕をなんなく捕らえ、ベッドに押さえつける。耳の下に口付けた男はそのまま、鎖骨まで唇を這わせた。
「……ん……っ……」

 皮膚が粟立つ。足がベッドカバーを蹴飛ばす。男の拘束を解こうと腕に力を入れる。
 頭を何度も横に振った。

「抵抗してるつもりか?それで?」
 せせら笑い、オレの耳に囁く男の言葉に自尊心が傷つけられる。だってマウントポジションなんだぞ! その上、この男の方が縦も横もデカい、どう考えたって逃げらんねーよ!?
 
 ─── 逃げられない。自分の言葉で絶望が襲う。

「……っあ!」
 絶望して力を抜いたそのとき、男の手が背後にまわり、タオルごとオレのものを掴んだ。せっかく左手が自由になったのに、力が入らない。

 身体を丸めて逃げたい。男がそれを許すはずもなく、馬乗りになったままタオル越しにオレを揉み解す。

「んっ……う……さ、わんなっ……」
 半分喘ぎ声みたいな声。情けない。涙が滲むのが判った。
 男の手はさらにオレを弄りだす。巧みな指が勃ち上がった根元を揉み、カリの窪みをなぞる。

「あ……っあ、ん、や……んん……っ」
 タオル越しなのに。いやタオル越しだからか。ざらりとした質感が敏感な部分を刺激する。声を、顔を隠したくて左の手の平を口に押し当て声を殺す。
 
 ぴたりと男の手が止まった。
「─── 手ェどけろ」
 口を押さえたまま、頭を振って拒絶。自分のこんな声、聞きたくない。

 男は目を眇めた。

 ふいに、拘束されていたオレの右手とオレ自身が解放される。さらに馬乗りになっていた男は身体を浮かせてオレの足先に移動した。

 何が興を殺いだのか判らないが、男はやる気が失せたのだ。助かった、とずり上がり、男と距離を取ろうとする。

 甘かった。

 男はオレの足首を掴んだ。
 片方の足首だけ掴んで、もう片方の手は外れかけたタオルに包まれたものを握りこむ。ついさっき、男の手で役に立つようにされたそれは萎えてはいなかった。

「ん……んっ……」
 緩急をつけた男の手の、指の動きに翻弄される。新たな刺激に、口を押さえた手の隙間から声が漏れた。
 
「あ……あっ……んん、……や、あ……っや、だ……っ」
 もう泣きたい。なんで、こんな声。サイアク。
「声。我慢すんだろ」
 
 からかう男の声がオレの足の間からする。頭を上げるとタオルにくるまれて屹立しているオレのものを弄りまくっている男の顔。
 オレが見ていることに気付くと、にやりと笑う。

「なんか濡れてきたぞ、ここ」
 先端の部分を親指の腹で撫でる。
「あ……っあんたがしつこくイジるからだろっ……」

 タオルに先走りの液体が滲みだしたのを知り、死にたくなる。喘ぎ声を上げて、気持ちが良かった証拠の体液を漏らして。最低だ。
 男がどいた時にめちゃくちゃ抵抗すれば逃げられたはず。

 逃げられなかったのは。
 身体が、男が与える快楽を期待していたからだ。

 一度他人の手で ─── 長谷川さんの手で、達かせられる快楽を知った身体は容易くそれに流れる。心を、裏切って。

「タオル、取って欲しいか?」
 優しい声で男が訊く。
「じかに、触って欲しい?……舐めて欲しいか?」

 しゃべる間も男の手は止まらない。体液の滲みはどんどん拡がっていく。
 勝手に腰が浮いてしまう。
「ん……っふ、あッ……あっ」
 
 自分の淫らな声と男の手を欲する仕草に涙が浮かんでくる。
 タオルを取って欲しかった。直にソコに触って欲しかった。舌で、舐めて欲しかった。

 限界。

「……タオル、……取って……」
 喘ぎながら、やっとの言葉。
「聞こえねーな」
 意地悪な男の声が言う。

「言ってみな、ちゃんと。じかに弄って、舐めて、イかせてくださいって」
 サドだ、こいつ。ひとを辱めて、自尊心を破壊して、悦ぶタイプ。

 恥ずかしくて顔が火照る。涙で目が潤む。
「……イかせて……」
「弄って、舐めて、は?」
 間違えた、こいつはドSだ。

 オレはごく、と喉を鳴らした。心臓がばくばく言って苦しい。達きたくて気が変になりそうだ。
「……い……」
 ダメだ。言えない。

「だ……れが言うか……っイかせろ、って……言ってんだろっ……」
 オレのバカ。
 最後の最後で自尊心が邪魔しておねだり出来なかった。

 イジって、舐めて、イかせてください、って言うくらいなんだってんだ、今からでも遅くない、言え、言えばイかせてもらえる、ラクになれる ─── と身体が言う。

 そんな恥ずかしいことダレが言うか、初めて会った名前も知らない男にねだるぐらいなら死んだ方がマシだ、と心が叫ぶ。
 
 心と身体が引き裂かれそうだ。

「ふーん」
 男はオレから手を離した。追い上げられる苦しさが引いていく。
 でも、快楽に晒された身体の熱が冷めるわけじゃない。
 
 放り出されて、辛い。どうにかして欲しい。イきたい。
「ふ……っ」
 オレは身を捩った。

 男はもうオレを拘束してはいなかった。起き上がって、ベッドを下りて、汚れた服を身に着けて、ここを出て行く。やろうと思えばすぐ出来る。

 なのに。身体が動かない。

 男の手が欲しい。快楽に導いてくれる、その手。
 心が、身体に流される。

 それに抵抗しようとタオルを股間に押し当て、横向きで身体を丸める。一度硬くなったそれは容易に元には戻らない。

 先端部分がタオルを通してぬるぬるする。男が言ったとおりの状態に、情けなさで涙が滲む。
 オレはタオルの中に手を入れてそれを握った。また溢れる体液を親指の腹で先端からくびれまで塗りこむ。

 ─── 視線。
 男がベッドに腰掛け、高みから面白そうにオレを眺めて、言った。
 
「─── ひとりエッチ、見せてもらおうかな?」
 
 ………冗談だろ。

   

        

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