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ヘヴンズブルー:4

       

 R-15BL小説です。15歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

  

 第4話

 

     
「オーナー?……」
「そう。紹介したいのって、ヘヴンのオーナーなんだ」

 訝しげな表情を浮かべるレイと話しながら、ナオはスタッフルームの中でも一番奥まった部屋のドアをノックした。

「入ってもいいですか」

 入れ、と中から声がする。ここ入るの緊張するよね、とナオはレイにいたずらっぽく耳打ちした。

 ドアを開けると革張りの黒いソファーが目に入る。その向こう側の机にはデスクトップのパソコンがあり、和臣はその前に座っていた。

「この間の約束」
「ん?」

 近づいてくるナオを見て和臣は驚く。スタッフの誰かだと思っていたのだ。

「約束? なんだ?」
「もー、キレイなコ、紹介するって言ったでしょ。連れてきたよ」

 和臣はナオの隣に立つレイに目を向ける。

「レイだよ。まだ十七なんだって」

 レイは軽く頭を下げた。「どう?」と言わんばかりにナオはにこにこと笑って和臣を見た。

 和臣は ─── 顔には出さないが、正直不愉快になる。

 レイはナオの言うとおり、美人だった。

 白い肌。切れ長の瞳。真っ黒で癖のない髪がさらさらと揺れる。日本人形的な美に近い。身長は170cmはあるだろう。腰の位置が高く、長い足を黒いジーンズで覆っている。

 紹介されて不愉快に思う理由がないほどの美形だ。

 その隣りのナオはどう見てもレイの引き立て役だった。

 レイよりも小さいその顔はなかなか可愛らしかったが、いかんせんそばかすが目立つ。くせのある茶色い髪は少し長めだ。インディゴブルーのジーンズにTシャツをレイヤードに着た姿は、160センチそこそこの身長と相まって中学生ぐらいにしか見えない。

 その中学生は何かに気づいてばつの悪そうな表情をした。

「すいません、気が利かなくて。……じゃ、僕はこれで」

 そう言うとレイを置いてドアへ向かう。
 レイは一瞬ナオを呼び止めようとしたが、それより早く和臣が動いた。

「ちょっと待て」

 足早にナオのもとへ向かう。
 ナオはドアノブに手を掛けたまま、和臣を見上げた。

「えっと、……なにか?」

 自分が邪魔なのだ、と思っているナオは戸惑う。
 和臣はナオをまっすぐ見て訊いた。

「今日、客ついたのか」
「はあ?……そういうことは本人に聞いて下さい」

 ナオは机のそばに立つレイをちらっと見た。

「お前に訊いているんだ」
「あ、そっか。レイが思ったより美人だから気後れするんでしょ。多分ねー、ついてないと思うよ。一人だったから」

「そうじゃない。お前に、訊いてるんだ。今日、客ついたのか?」

 ナオは自分を指差した。

「僕……? ですか? あのう、ついてませんけど……そんなの関係な」
「じゃあ俺のマンションに来い」

 ぽかんと口を開けた後、ナオはあわてて頭を横に振る。

「……俺に買われるのは二度とごめんか?」
「や……そうじゃなくて」

 視線をまたレイへ向ける。レイは困惑するわけでもなくふたり ─── 主に和臣の様子を観察していた。

 どう見てもナオに執心で言い寄っているようにしか見えない。それは客が男娼に対してというより ───。

(なんだ。男、いんじゃん)
 レイは軽く肩をすくめた。
 ドアの近くでふたりはまだ揉めている。

 和臣は財布から紙幣を取り出し、二つに折ってナオに差し出した。

「シゴトなら受け取ってくれるんだろう?」
「そうじゃなくて、ですね、僕はレイを紹介しに来たわけで、紹介が済めば僕は邪魔なわけで」

 『北の国〇ら』状態でナオは必死に言い募る。和臣の真意は計り知れないが、自分が連れてきたレイに恥をかかせるわけには行かない。

「だから、つまり、そのお金はレイに渡してください」

 はっきり「レイと寝ろ」と言われた和臣は途端に機嫌を悪くする。紙幣を財布にしまわずに自分のスーツの胸ポケットに突っ込んだ。

「要するに俺の相手は嫌だってわけか。それにしちゃ、一昨日はずいぶん色っぽい声上げてたけどなあ? あれも仕事の内ってヤツか。さすがプロ、たいした役者だな」
「オーナー」

 レイがいるこの場であからさまに自分を辱めようとする和臣の言葉に、ナオは非難がましい目を向けた。

 自分を見据えるナオのきらきらとした瞳に和臣は見惚れる。
 レイはため息をついて和臣とナオに近づいた。

「─── お取り込み中のところ、すいませんけど」
「え?」
「お邪魔みたいなので失礼します。─── じゃ、ナオさんお先に」

 名残惜しそうな視線をナオにくれ、レイは部屋を出て行った。

「待って、レイ、違うんだ」
「何が違うんだ?」

 レイの後を追おうとするナオの前に和臣は立ちふさがった。唇を引き結んで、ナオは和臣を睨みつける。しかしすぐにうつむいた。

「……レイ、気を悪くしてる。きっと」
「あいつ、なんだ? 物欲しそうな目付きでお前を見てたぞ。買いたかったんじゃないのかお前のこと」

「まーたそういう、わけの判んないことを……臣さんじゃなかったオーナー、レイはヘヴンいちのキレイどころなんですっ、見たら判ると思うけど! せっかく頼んで来てもらったのに……」
「頼んだ? キスでもさせてやったのか?」
「オーナー!」

「俺は紹介してくれなんて言ってない」

 詰め寄ろうとしたナオの両手首を強く掴んで引き寄せる。和臣は目を眇めた。

「俺と寝るのが嫌で他の奴を紹介したのか?」
「……臣さんに寝たいって言われて断る奴なんていないよ」
「ここにいる」
「だから、それは僕みたいのよりキレイなコの方がいいと思って……放してください」

 ナオは和臣の手を放そうともがいた。

 すぐに、和臣が自分を放すつもりがない事を悟り、懇願するように彼を見上げる。不意に身体の力を抜き、和臣にもたれかかった。

 ナオの柔らかな身体の重みに気を逸らした和臣はつい手を緩める。

 途端にナオは両腕の自由を取り戻し、和臣の胸を押して離れた。

「あー痛かった。ひっどいなーもう、商売道具なのに」

 ナオは掴まれた手首をさすった。両手首とも赤く指の跡が付いている。

 甘えるような仕草して期待させといておあずけとはあんまりだろう、と口から出かかっていたが、和臣はその言葉を飲み込んだ。色仕掛けに引っかかったと自分から言うようなものだ。

 放してやったんだ、という顔をして和臣は胸ポケットから二つ折りの紙幣を取り出す。

「シゴトの依頼だ」

 今度は優しくナオの手を取り、紙幣を握らせる。

「断る奴なんていないんだろう?」
「……だから、多すぎるって」

 ナオの手の中にある厚みは十枚は下らない。

 ナオも欲がないわけではない。もちろん、もらえるものなら全部欲しい。

(……けど……ハルの代わりはムリだ……)

 うつむくナオの顔を上げさせて和臣はキスをした。なんだかナオが嫌がっているような気がしてならない。

 和臣はいらついて、乱暴に舌をからませた。さんざん口腔を犯してから解放してやる。

「……俺に買われるの嫌か?」
「……そんなこと、あるわけないよ」

 ナオはぎこちない笑顔を見せた。いつもの軽い口調で言う。

「じゃあ稼がせてもらおうかな。そんなもらうんならサービスしなくちゃね」
「……」

 和臣はナオを無理やり金で買うつもりはなかった。嫌なら嫌と言ってくれていい。無理強いはしない。自分がヘヴンのオーナーだから断りたくても断れないのだろうか。

 なんだか、無性にいらいらとしてもう一度乱暴に口付けた。
 

 

 

 
 起き上がろうとしたナオは和臣に肩をつかまれ、ベッドに押さえつけられた。
「臣さん」
「……また、帰る気か?」

 その日の夜、和臣の部屋のベッドの中。

 和臣は馬乗りになりナオの抗う気持ちを殺いだ。元々、抵抗するつもりのないナオはじっと和臣の目を見つめる。

「……この間、僕が帰ったのはここにいたら迷惑だろうと思ったからで、……」
「なら、ここにいて下さいと俺が頭を下げて頼んだら?」

 ナオの髪の毛を撫でて唇を寄せる。

「……帰らないで下さいと土下座したら、ここにいてくれるか?」
「……臣さんがそんなことする必要ないよ」

 耳元で囁かれ、ナオは背中をぞくぞくとさせる。終わったばかりでまた反応していると思われたくない。

 ナオは和臣の唇を手のひらで塞ぎ、横を向いた。

「いてもいいんだったら、います」
「……言葉の割には嫌そうだな」

 和臣はナオの手を自分の唇から外し、横を向いた彼の顔を自分の方へ向ける。何度もキスを繰り返した。

 ─── ナオの身体を手に入れたことで和臣の苛立ちは軽減されていた。嫌そうだと口に出せるのがその証拠だ。

(……でも、それもいつまで続くのか)

 身体を手に入れて満足出来る内はいい。ナオは断らない ─── 断れないだろうから。

(もし ─── もしも、ナオの心が欲しくなったら……?)

 その時こそどうしたらいいか判らない。金ずく、力ずくで手に入るものではないからだ。

 和臣はナオの心を欲しがる自分を予感していた。

「苦しい、臣さん」

 馬乗りになったままだった。和臣はナオの上から退き、今度は背中から抱きしめる。

「─── 何でこんな仕事してる?」
「……」
「教えろよ」
「……そんな大層な理由はないよ」

 ナオはぽつりぽつりと小さな声で話し始めた。

   

     

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