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きみの手を引いて:6

    

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

  

 第六話

 

        
 ドアが静かに閉まり、柚月の寝室は真っ暗になった。ハルは薄目を開けて部屋の主が出て行ったことを知ると、上半身だけ起こす。

(……何も、しなかったな)

 膝を抱えた。

(アタマ、撫でられた)

 柚月がやったように自分の頭を撫でてみる。顔を膝に埋めた。

(子供扱いすんじゃねーよ……!)

 ハルは柚月に抱き上げられた時からずっと起きていた。彼をからかったのだ。

 ベッドに連れ込んできっと何かするに違いないと思った。眠っているのをいいことにイタズラするに違いない、と。─── レイプされるかも知れない、とさえ思っていた。

(それなら、それでいい)

 減るもんじゃなし、それで今まで出して貰った洋服代、食費 ─── 全部チャラになるなら安いもんだ、と思った。

 ところが柚月は。

 何も、しなかった。頭を撫でてその手さえもたちまち引っ込めて、その後は指一本触れずに静かに行ってしまった。

(いくら好きな奴としかしないったって、溜まってんだからこの際オレで我慢しとけばいいのに)

(……そんっなにオレじゃ嫌なのかな……)

 眠ってると思ってイタズラするぐらいだったら見逃してやったのに。

 ハルは柚月の出て行ったドアを見つめた。

 

 

 

 ─── 気が付くと朝になっていた。
 
 自分のいる場所が判らず、ハルは飛び起きる。柚月のベッドだと思い出して辺りを見回すが ─── 柚月はいなかった。

 ベッドを下りて柚月の寝室を出る。
 
 リビングのソファーで横になっている柚月を見つけた。半分落ちたタオルケットを朝の弱い光が照らしている。

 ハルはぼんやりと柚月を見つめた。

(……どうしてこんなとこで寝てんだろう)

 柚月のベッドはダブルだった。ハルが小柄な分、ふたりで横になっても充分な広さがある。
 彼がソファーで寝なければならない理由は特に見当たらない。

 横幅はないが背だけは高い柚月に、ソファーはひどく窮屈そうに見える。と、眉根を寄せて少し唸ると足を伸ばそうとする仕草をした。

 もちろんそれは果たせず、片方の足は床に落とし、もう片方は曲げたまま動かなくなった。

 ハルは見かねて、声をかけた。

「柚月さん、起きて。ベッド行こう」

 誘ってるみたいだと思い、戸惑う。そうじゃなくて。

「……ベッドで寝てください、」

 柚月はぐっすり眠っている。

 ハルは柚月をお姫様抱っこするような腕力も体力も持ち合わせていない。どうしようもなく、傍らに座り込んだ。

 どうして自分のベッドで寝なかったんだろう。ハルは思いを巡らせる。

 オレと一緒なのが嫌だった。ならわざわざオレをベッドへ運ぶ必要はない。

(オレがここで寝れば済むことだし)

 じゃあ、実はヤってしまうつもりで連れて行ってうっかりソファーで寝てしまった。

(いくらなんでもそんなマヌケな)

 考えてみれば、眠っている相手をベッドに連れ込んで犯すなどという荒技を柚月が繰り出すとは思えない。

(……疑ってたオレが言うのもなんだけど)

 柚月が優しい、いい奴だ、とハルにも判っていた。

 冗談一つ言うわけでも、愛想がいいわけでもなく、ハルが話しかけなければ一日中でも黙っているような男だったが ───。

(……優しい、いいひとなんだ)

 好きでもない自分に欲情しても指一本触れない、そういうひと。

 力ずくで乱暴したり ─── あるいは、家に置いてやる代わりに抱かせろ、などど天地がひっくり返っても言えそうもない。

(かと言って、好きだって嘘つけるひとじゃないし)

 自分自身にも、ハルにも。

(……好きじゃなくたって、嘘つかなくたって、やらせてやるのに。オレ平気なんだから。そんなのちっとも)

 そう思いながら、ハルは心のどこかで安堵していた。
 ─── 柚月が自分に手を出さなかったことが嬉しかった。

 柚月の顔を覗き込む。意外に長い睫毛や高い鼻梁、少し乾燥しているけれど形の良い薄い唇を順番に眺める。うっすらと生えた無精ヒゲに手を伸ばした。

 指先に触れるその感触を珍しく思いながら指を這わせる。

 ハルはヒゲが生えたことがなかった。発育不良なのだと思う。
 いい加減、十六にもなればヒゲくらい生えて、喉仏も出て、脛毛も多くなっても良さそうなのに ─── せいぜい声変わりしたくらいで、しかもそれとて低い、通りの良い声とは言えない。

 柚月の高い背丈や大きな手、広い背中に喉仏、無精ヒゲまでもがハルのコンプレックスを刺激した。

(男前で背が高くって頭も良くて優しくて誠実で、……なんかそれって出来すぎ。イヤミだよなー)
 
 ハルは柚月の唇に目を留める。ちょっとした、イタズラ心だった。

 くちづける。

 ほんの軽く触れるだけのキス。

 すぐに離れた。

(……あれ)

 自分の心臓の鼓動が速まっている事に気づく。

(なんだ、これ。……キスなんかなんでもないだろ。ちょっとからかってやっただけ。後でこの人が聞いたらどんな顔するかな、と思って)

(ほんとどんな顔するだろ。真っ赤になるかな。好きな奴以外にするなって怒るかな)
 
 好きな奴 ─── と考えて、ハルの鼓動はますます速くなる。

(なんかおかしい、オレ。変だ)

 ハルは立ち上がり、落ちかけているタオルケットを柚月の胸まで引き上げた。
 逃げるようにロフトに上がる。カーテンを閉めて布団に横になると、頭までタオルケットを被った。

 何も考えないように ─── と思えば思うほど柚月の顔が、その唇の感触が蘇って来る。

(……なんだよ、これ。どうかしてる。絶対おかしいって)

 目を閉じてもとても眠ることなど出来なかった。

  

  

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コメント

かぁぁわいい★
ちょっと切なくもなりますね(yωy*)
柚月がハルに手を出さなかった所。
本当優しいんだなぁ、この人。柚月の家に居候したい♪なんて∑
ドキドキしてるハルが可愛すぎてギューってしたくなります*
今日はここまで、また続きは明日見に来ます^^
 
 ≫以下レスです。
 コメントありがとうございます♪
 お忙しいのに、連日のように来て頂けて嬉しいです。
 連載してた頃は柚月の煮え切らなさが読み手の皆様をヤキモキさせたんですが、優しいと言って頂けて大変嬉しいです。
 
 一話ずつがちょっと長い話かもしれないので、休み休み読んで下さいね~^^*

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