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きみの手を引いて:13

 

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 第十三話

  

                  
  ハルが部屋から出て行ってしまうと柚月は布団から顔を出し、ぼんやりと天井を見つめた。
(「……まさか、あの子のこと好きなの?」)
 疑いを孕んだ、否定して欲しくて堪らないあやの声が耳に蘇る。

 否定出来なかった。
 
 一時間前、この部屋で目を覚ました柚月は、ハルが出て行ったことを知った。─── 恐らく、あやのことを勘違いして。

 ハルを捜しに行く、とパジャマのまま家を飛び出そうとする柚月を必死に押し留めながら、あやは驚くべき鋭さで核心を突いた。

(「あの子のこと、好きなの?」)
(「……何で判った?」)
(「判るわよ! ハル、ハルって自分がどんだけ半狂乱か格好見て判んないの!?」)
 あやは無遠慮にパジャマ姿の柚月を右手の人差し指でびッと指した。

 それからその指を握りこみ、胸の前で左手で右手を包み込む。
(「……凍死覚悟で外に飛び出すほどあの子が好きなわけ?」)
 凍死を覚悟したわけではない、ただ熱で頭が朦朧として、それでもハルを連れ戻さなくてはとそれしか考えられなくて。

 正直にそう告げるとあやの目はみるみる吊り上った。
(「男の子じゃない!信じらんない、なんで好きになるの!? ……まさか寝たりなんて」)
(「そんなこと出来るかっ! あいつは俺とお前をくっつけようとしてるんだぞ! 許すはずないだろうっ」)

(「許すって……身体を?」)
 自分で言ってあやは絶句する。熱のせいで赤かった顔をさらに赤くする柚月を見て、あや自身は顔色を失った。
(「じゃ、じゃあもしあの子が許したら、寝るの?」)

 柚月は口を噤んだまま唸った。当然じゃないか?
(「……とにかく、お前はもう帰れ。お前がいたらあいつ帰って来ない」)
 出し抜けにあやは、すぐ側のダイニングテーブルに置いてあった小さな紙袋を引っ掴み、柚月に投げつけた。
 
(「なによう要ちゃんのばかッ! フラれちゃえ!!」)
 振られちゃえって、もう振られたも同然だと思うが……。
 足音も高く玄関を出て行ったあやの捨て台詞を思い出して、ため息を吐いた。

(そうだろう? ハル)
 天井を見つめて自分の額に手を当てる。
 
(……嫌がらせしてしまった)
 ハルの手の平を反芻する。
(冷たくて柔らかい手だったな。……指も細くて)

 無理やり頬に移動させた時、びくッとして手を引っ込めようとするのが判った。
(……セクハラだ。最悪……)
(嫌だって言えなくて、困って泣きそうな顔をしていた。……離して欲しくて)
 
(好きでもない奴の顔を触るように強制されたら、当たり前だ)
 風邪薬を買い忘れたと嘘を吐いて外に出たのは、うっとうしい自分をあやに押し付ける為。
 
  ハルの気持ちが自分にないのは明白だった。
(……元々、好かれてはいないと思ってたが)

 あの夜以来、ハルは柚月に近づいて来なくなった。親しげに口を利いていても見えない壁でもあるように、一定の距離からは近寄ってはこない。柚月のほうから近寄れば、さりげなく距離を空けようとする。

 さっきはハルの気持ちを確かめる最後のチャンスだった。もしも、嫌がらないでくれたら希望が持てる。
(結果はご覧のとおりってわけだ)
 
 柚月が半ば予想していた通り、ハルは無理やり掴まれた手を離して欲しくて涙を浮かべた。嫌だと言いたくて、けれど言えなくて我慢して、やっと離してやったら心底ほっとして。
 それでも表面上は良好な同居人の関係を壊したくなくて、何事もなかったかのように振る舞った。
 
(いっそ正面切って告白してやろうか)
 それこそ嫌がらせ以外の何ものでもないだろう。柚月はすぐに想像出来た。
 ハルは、嫌だとは言わない。言えない。

 同居人の機嫌を損ねて追い出されたら、行くところがないからだ。

 セクハラされても我慢していたのがいい証拠、きっとさっきのように驚いて泣きそうになって、─── それから慌てて笑顔を見せるだろう。
(『えっと、……オレも、柚月さんのこと好きだよ。……寝ても、イイよ』)

 嘘だ。頬を触らせただけで泣くほど嫌がっていたくせに。
 好きなのは俺だけ。
 ハルにしてみれば、ただ、ここにいたいから我慢するだけ ───。

(嘘なら要らない)
 柚月は寝返りを打ち、ドアに背を向けた。

 

  

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