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きみの手を引いて:42

  

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 第四十二話

 

  
 柚月とナオの間に割り込んだ和臣は、殺気に満ちた視線を柚月へ向けた。
「……柚月くん、言うのを忘れていたが」
「なる、……成沢さ」
 うっかり和臣の目をまともに見た柚月は後悔した。─── 背筋に寒気が走るほど怖い。

「こいつは俺のものなので金輪際指一本触れないでくれ」
「オーナーやめてください、店内(ここ)でヘンなこと、言わないで」
 和臣の背中から困惑したナオが抗議する。肩越しに振り返った和臣はイライラと言った。
  
「変なことってなんだ、全然変じゃない! お前も簡単に触らせるな!」
「大きな声出さないでっ……みんなに知られる」
「知られて何が悪い!?」

 宥めようとするナオの手首を掴んで和臣はフロアを横切る。
 こっちに向かってくるハルと、ナオは通り過ぎざまに目が合った。
「は、……」
 ハル、と言いかけながらナオは和臣に手を引かれていく。

 ハルはぽかんと口を開けてスタッフルームに消えた二人の背中を見送った。
「……なんだアレ。拉致? 大丈夫かよ、ナオ」
「……ハル」
 
 ナオを気遣いながらハルは柚月に近づく。
 ついさっきまで盛大に泣いていたことが気恥ずかしい。それでも、柚月のそばで、柚月と話せることが嬉しくて精一杯見上げた。
「あの、……殴られたり、しなかった……?」
 
「……殴られはしなかったけど殺されるかと思った……」
 一瞬死を覚悟したらしい柚月に、ハルは苦笑した。
「……成沢さん、ナオに夢中なんだって。スタッフのひとが言ってた」
「……」

 ハルに掛ける言葉が見つからず、柚月はただ彼を見つめた。─── ナオの存在を知るまで、成沢に恋人がいるとは全く思ってもみなかった。ヘヴンズブルーに来てハルを成沢に預ければそこで自分の恋は終わり、ハルは幸せになれると信じていた。
 
 ところが。
「……オレ、成沢さんに邪魔だから来んなって言われた」
「う……」

「ナオはいい奴だから来ないでとか言わないだろうけど、……でも、ヤダと思うよー、オレが成沢さんちにいたら」
 当然だろう。ナオからすればハルと和臣が同居するなど、気が気でないはずだ。さらに、ナオと和臣が同棲中だとしたらハルは単なる邪魔者でしかない。
 
 しかしそれを肯定するわけにもいかず、柚月はハルに確かめた。
「……前から、あのふたり付き合って……?」
「んー、最近だと思うけど。前まで全然そんなカンジじゃなかったんだよ」
 心配そうにハルはスタッフルームと書かれたドアを見つめた。

「大丈夫かなー、ナオ。臣……成沢さんに泣かされてないかなあ?」
「……大丈夫なんじゃないか。成沢さんのこと話すとき、嬉しそうだった」
「へえ?」

 和臣(アレ)の恋人になって嬉しいなんてナオの気が知れない、と思いながらハルは壁に背中を寄りかからせた。
 柚月は自分の失言に気付き、目を伏せる。
「ご……ごめん。嬉しそう、なんて」
 
「……」
 ハルはじっと柚月を見上げた。─── 和臣に恋人が出来たということは、柚月にとってまたとないチャンスのはずだった。この機に乗じて、つけこむことが出来る。
 
 けれど柚月がそれをしないということをハルは半ば確信していた。失恋で心が弱っている ─── と柚月は思っている ─── 自分を甘い言葉で慰める、などという器用な真似が出来るのなら、とっくの昔に恋人同士になっている。

 不器用に、相手のことを一番に考える柚月だからこそ惹かれたのだ、とハルはうっすらと頬を染めた。
 柚月に判らないようにそっぽを向く。

「……オレ、どこ行ったらイイ?」
「え……」
「もう成沢さんとこ行けない。ゼッタイ邪魔者扱いされんもん。……柚月さんが行けって言ったところに行くよ。ダレか引っかけて泊めてもらう? ついでにイイコトしてお小遣いもらって」

「駄目だ。そんなことは、駄目だ」
「柚月さんがオレんこと追い出したんじゃんか!」
 どうして柚月を前にするとこんなことばかり言ってしまうのか、とハルは自分の口を塞ぎたくなる。判っているのに言葉は止まらない。

「オレ行くとこねーもん。……柚月さんに置いとけないって言われたもん。オレがダレか引っかけたって柚月さんにカンケーない」
「関係ある。とにかく駄目だ」
「ダメ、ダメって、じゃあどーすんのっ? 野宿でもしろってのかよ!」

 オレはバカか? とハルは自分のひねくれた性格にあきれた。もっと可愛らしく「成沢さんちに行けなくなったから柚月さんとこ置いて?」とお願いしたらいいのに、どうしてそう出来ないのか判らない。挑発するような態度を取っても、柚月を困らせるだけなのに。

 案の定、追い詰めれた柚月はうろうろと視線をさ迷わせた挙句、やっと言葉を吐き出した。
「……判った。俺が成沢さんと話す」
「はあっ?」
「成沢さんの気持ち、確かめてみる。本当に、……ナオくんだけなのかどうか」

「確かめるって……」
 確かめるまでもない、とハルは思った。

 ハルの知る限りずいぶん前から特定の恋人がいない和臣が、嫉妬であれほど我を失うのは初めて見た。レイに対しても然り、柚月に対しても然りだ。それだけ本気だという証しだろう。
(絶対ナオだけだと思う。……ナオには気の毒だけど)

 そんなハルの気持ちとは裏腹に柚月は先に立って歩き出した。
「柚月さんっ」
 慌ててついて行くハルに、人の隙間を縫って歩きながら柚月は話す。
 
「……成沢さんに本気の恋人がいるなんて信じられないんだ。こう言ったらなんだけど、遊んでるひとみたいだから」
「……確かにそうなんだけど~」
 
 反論のしようもない。ハルにしても和臣が夢中になる相手がいるとは、牧田に聞くまで想像もしなかった。
「オレだって信じらんないけどさ、でも、アレ、マジだよ」

「……お前の方が、先に好きだったのに」
 俺は諦められないんだ、と言って柚月はスタッフルームのドアノブに手をかけた。
 

  

  

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