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きみの手を引いて:43

 

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 第四十三話

 

   
 自分の手首を掴んで離さず、強引にフロアを突っ切って行く和臣の背中をナオは見つめた。
 ─── 少しだけ、和臣を疑った。

 ハルが手元に戻ると判れば和臣は自分を「いらない」と放り出すのではないか、と ─── やはりキレイで強気で魅力的なハルの方が良くて、自分は単なる代わりに過ぎなかったのではないか、と思った。

 杞憂だった。
 和臣は自分に触れた柚月に対して嫉妬も露わに「自分のものに指一本触れるな」と威嚇した。

 それは確かに一瞬、ナオの心を暖かくした。どうしようもないほどの嬉しさ、泣きたくなるほどの幸福感を覚え、─── その後、ナオはうろたえた。

 ─── そんなに大声を出したら、他の少年や客に自分たちのことが、和臣の気持ちが、明るみになってしまう。

 スタッフルームのドアの内側の、従業員控え室や和臣の使う事務室に繋がる狭い廊下でようやく立ち止まった和臣から、ナオは自分の腕を取り戻した。
 和臣を見上げて食って掛かる。

「どうしてあんなこと言ったんですかっ?」
「あんなこと?」
 他の男に触れさせたナオに我を失い、怒りを向けた和臣だったが、こうして二人きりになって唇が彼の柔らかい髪の毛をかすめる距離にいると嫉妬が徐々に失せていく。

 自分を精一杯見上げて、臆することなく咎めるナオを和臣は愛しそうに見つめた。

「あんな、……僕に、触るな、みたいなこと、……」
「なんで言ったらいけない? 所有権を主張しただけだ。……それとも、柚月くんに一目惚れでもして触ってもらいたかったのか?」

「もうっ、そんなこと言ってない!」
 壁を背にしたナオは、嫉妬の火種を残したまま耳元で囁く和臣の身体を押しのけようとその肩に手をかけた。びくともしない。

「お……臣さんは、オーナーなんだから、僕にそのう……僕と付き合ってる、みたいなこと店で言ったらダメだよ。お客さんとか、他の子たちに聞かれたらどうするの?」
「自慢する」

「……自慢になんかならないよ……!」
 ナオはそばかすの散る白い頬に血を昇らせて俯いた。
「み……みんなが使った、お古を、ヘヴンのオーナーが大事にしてるって……笑われるよ……? 金で何でもさせるのに、夢中になって、……入れ上げてるって……」

 唇を噛んで耳まで赤く染めているナオに和臣は目を細める。
「オーナーが恥ずかしい思いするだけだよ……お願いだから誰にも僕のこと言わないで、……ね?」
「みんな知ってる」
「え?」

 和臣は赤い耳たぶに唇を触れさせながら囁いた。
「……俺がおまえにちょっかい出してるって。フリの客ならともかく、常連は知ってる。……結構前から客付かなくなったろう?」
「な、……」
「お前ぐらいだ、俺に口説かれてるのに気付かなかったのは。……他の奴らは知ってる」

 これ以上なく真っ赤になったナオの頬に手を添えて、和臣は彼のこめかみにキスを落とした。レイと柚月に煽られた嫉妬はそのまま独占欲となり、結果ナオに触れずにはいられない。
「や……めて、臣さん」
 ナオは和臣の腕の中から抜け出そうと焦った。

「……みんな、知ってるって……っ、な、なんで……?」
 和臣の唇が自分のそれに近づいてくることに気付いて、ナオは顔を背けた。
「……やらせろ」
「ダメ、……」

「なんで」
「こっこんなとこでキスしたら誰かに見られるよっ! 離してください!」
「大丈夫だ、誰も見てない」

 大丈夫なわけがない。すぐそこのドアが開いたらフロアなのだ。
 和臣の腕の中でナオは気が気ではなかった。
「お願い、臣さん、離して……こんなとこ誰かに見られたら、なんて思われるか判んない、……お……臣さんが、僕と付き合ってる、だけじゃなくて……本気で、夢中だって思われ……」
 
「事実だ」
「……僕が無理やり、臣さんに恋人にしてもらった、ってことにするから……臣さんは、僕のこと、興味ないって顔しなきゃダメだよ、……僕のせいで臣さんが笑われるなんて嫌なんだ……」

 ナオは俯いて、自分を取り巻く和臣の腕を外そうと、ぐい、と押した。
 ─── その腕は頑固にナオを離そうとしない。
 のみならず、ナオの手を取ると、その甲に口付けた。
 
「やっ……やめて下さい、ちゃんと、話、聞いて」
「聞いてる、ちゃんと。……こっちの手だったな? 他の男に触らせたのは」
「他の男って……ハルの、恋人だよ……? それに、腕掴まれただけだしっ……ヘンな意味じゃ」

 ナオの手が引こうとするのを許さず、もう一度、甲にキスをしてぺろりと舐めた。
「……っ」
 息を飲んだナオの表情を見逃すまいと上目になった和臣は、彼が涙で潤んだ瞳を恥ずかしそうに逸らすのを捉え、満足する。

「……今度他の奴に触らせたら」
 ナオの手を掴んだまま、彼の耳元で低く囁いた。
「殺してやる」
 
 びくっと身体を震わせるナオ。ためらいながら、自由な方の手で自分を閉じ込めている和臣のスーツの腕を掴む。
 額をYシャツに包まれた広い胸に押し付けた。

「……臣さんに殺されるんなら、いいよ」
「お前じゃない、相手の奴だ。男でも女でも触らせるな。……レイとデートもするな」
「……?」

 ナオはきょとん、と和臣を見上げる。
「レイと? デート?……する予定、ないよ?」
「あいつに奢らせたろう。それをいいことに、どっか行きませんかー、とか言ってくるぞ、あいつ、絶対、……言葉巧みに家にでも連れ込まれたらどうするんだっ?」

 妄想が暴走する和臣にナオは無警戒の笑顔を見せる。
「まさか。まーた、変なことばっかり、……レイはそんなことしないよー、だって、僕よりレイの方がずーっとキレイだもん。どっか連れ込まれそうなのはレイの方でしょ」

「何を暢気なことを………」
 和臣は焦燥に駆られ、歯噛みしてナオの唇を塞いだ。。
 噛みつくようなキスにナオは抗う。

「……っやめて、ダメだよ……っ」
 抵抗するナオを身体ごと壁に押さえつける。頭を振って逃れようとするナオの耳の下に口付け、そのまま首筋に舌を這わせた。

「いや……っ、臣さんっ、離して……お願いだから……!」
「……」
 ナオの懇願を聞き入れず、和臣は白く柔らかな喉に所有の跡を付ける。

 その時。
 ─── フロアに続くドアが、開け放たれた。

 

 

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