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きみの手を引いて:44

 

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 第四十四話

 

  
「いや……っ、臣さんっ、離して……お願いだから……!」
 ドアを開けた途端のナオの悲鳴に、ハルと柚月は固まった。
 いきなり現場に踏み込まれた和臣はもちろん驚いたが、ポーカーフェイスを保ったままナオを離そうとはしない。

 ナオは、 ─── 可哀想なくらい真っ赤になって、やっと和臣の腕の中から逃れた。
 はッと我に返った柚月が後ろ手にドアを閉める。同時にハルは和臣を咎めた。
「な……な、なにやってんだバカかあんた、ダレがドア開けるか判んねーのに」

「あ、……あの、ハル、これは、そのう」
 和臣を庇うように前に出たナオは、Tシャツの裾を引っ張りながらおろおろと取り繕うとする。
 何をどう言ったらいいのか判らないという様子で柚月とハルを交互に見るナオに、ハルはそっと近づいた。

「……ナオ。ガチで訊いていい? まさかとは思うけど、そこのヘンタイエロオヤジに借金とかしてそのカタに無理やりなんて」
「ことないから! ぜんぜん!」

 真顔で訊ねるハルにナオは慌てて首を横に振った。邪魔され、面白くない和臣が不機嫌そうに腕を組むのを、動揺の治まらない柚月が見つめる。
「レイプ未遂じゃね? 今の?」
「ちが、違うよ、……臣さんは」

 ハルは自分の喉を突付いて、ナオに和臣の唇の跡が付いていることを知らせる。気付いたナオはまたも頬を染めると喉を手の平で覆い隠し、俯いた。
「……僕、臣さんが好きなんだ……」

 小さく、囁くような声の中に微かな決意が見て取れる。ハルは素直に自分の気持ちを言葉にするナオに面食らい、同時に少し羨ましく思った。
 ナオの言葉を耳に拾った和臣は唇を引き結んだまま、眉間の皺を消して目を細める。その視線の先にはナオの後ろ姿があった。
 
「ナオ、趣味悪ィ」
 苦笑いするハルと、和臣に対する気持ちを聞かされて情けなさそうな顔をしている柚月に、ナオは上目遣いを向けた。

「……僕が、一方的に好きになったんだよ。臣さんは、あの、……遊びで、付き合ってくれてるだけ。……オーナーが僕に本気になるわけないもの」
 たどたどしく言うナオの乱れた髪の毛に、ハルは手を伸ばした。指で軽く梳く。

「だからさ、誰か、他の……シュウとか、お店のお客さんとかに訊かれても、恋人じゃないって」
「おい、気安く触るな俺のだぞ」

 和臣の体面を気にしたナオの言葉は、ずかずかと歩み寄ってきた当の本人によって一瞬で台無しになる。
 ナオの腕を掴んで引いた和臣はハルの前に立ちはだかった。

「二度と触るな、絶対触るな」
「やめてよ、臣さん、ヘンなこと言わないで」
「オレでもダメなわけー?」
「ダメだ」
「やめてってば!」

 ナオは和臣の前に回りこむと胸元をぐいぐいと押して、ハルと柚月から引き離した。
「もうっ、臣さんはカウンター行ってて! 僕が話すからっ」
「お前が話したらなにでっち上げるか判んねえだろ、……ストーカー紛いに追いかけ回されて、仕方なく恋人になったんだってちゃんと言うか?」

「そんなんじゃないよ!……そんな風に思ってたのっ? 仕方なく、って?」
 胸を押すナオの手首を掴んだ和臣は、その手の平を自分の唇に押し当てる。
「……今でも思ってる。お前は他の奴に平気で触らせる。俺の目の前で」
「だって……ハルだよ……?」

「誰だろうと許さない」
 手の平に、和臣の唇と吐息を感じる。くぐもるその低い声にナオは背筋をぞくりとさせ、手を取り戻そうと強く引いた。
「や……もう、離して、臣さ……」

「─── やってらんない。行こ、柚月さん」
 付き合ってられない、とばかりに砂でも吐きそうな顔でハルは柚月を促す。すっかり当てられた柚月は、ああ、とも、うう、ともつかない声を上げた。
 
「なんだまだいたのか」
 まるで今気付いたかのようにしゃあしゃあと言う和臣を睨みつけるハル。
「ええ、まだいてすいませんでしたっ、」
 ナオのこと泣かすなよ、と目で訴える。そんなハルを和臣は、ふん、と鼻でせせら笑った。

「─── 成沢さん」
 スタッフルームのドアを開けた時の衝撃が強くて、成り行きを見守っているばかりだった柚月が口を開いた。
「ハルは、そのう」

 和臣の気持ちもナオの気持ちも、もうはっきりしていた。そこにハルが入り込む余地などないことも。
 しかし、それではハルはどうしたらいい?

「─── ハルにはもう言ってある。柚月くんのところにさっさと帰れって」
 少しの沈黙の後、和臣はナオを背中から抱きしめて言った。人目も憚らないその行為を腕の中のナオは当然嫌がり、「やめて下さい、離して」と小さな声で抗議したが、和臣は聞き入れず、柔らかい髪の毛に頬を寄せた。

「きみは?……柚月くんは、そいつが迷惑?」
「……そんなわけないです。俺は、ハルに、いて欲しいと思って、……でも」
 ふたりの間に起こったことを話せずに口ごもる柚月を察して、和臣はハルに視線を移した。
 
「俺の家、来るか?」
「ゼッタイ行かねー」
 俯くナオの耳の後ろに口付け、真っ赤にさせながら問う和臣にハルは唇を尖らせた。

「なんであんたとナオがいちゃついてるとこ観賞しに行かなきゃなんないんだよ。柚月さんちの方が百倍マシ」
「だとさ。そいつ連れて帰って、柚月くん。……それとお前らがヤったとかヤってないとか興味ねえから」

 ドアノブに手をかけようとしたハルは頬に血を昇らせて振り返った。
 和臣は口の端を上げてハルに笑みを見せる。

「いちいちノロケに来るなよ、ハル」
「二度と来ねーよっバカ臣!」

 勢いよくドアを開けて出て行くハルの後ろで、柚月は和臣とその腕の中にいるナオに頭を下げる。
 慌ててハルを追う柚月の背中がドアの向こうに消えると、和臣は後ろから抱いたナオの首筋に口付けた。

「……わざとでしょうっ」
 ナオは頭を振って和臣の唇から逃れると、身体の向きを変える。和臣を正面から見上げた。
「なにが?」
 
 にやにやと笑みを浮かべる和臣にナオはうっすらと涙を滲ませた。
「こんな風に……僕に触っ……触って見せて……っハルを、あのひとのとこ行かせようと」
「あいつが俺ん家来たら邪魔だ」
 言いながらナオの目尻に唇を落とす。

 ナオは顔を俯けて小さく囁いた。
「すっごい、は……恥ずかしかったんだからっ……。いくらハルの為だからって、こんな」
「あいつの為じゃない。お前が俺を好きだって言うから我慢出来なくなった。……触りたい」
「……」

 俯いたままのナオの首筋が赤く染まっていくのを見逃さず、和臣は言葉を重ねた。
「俺のこと、好きだって言ったろう?……触っていいか?」
 甘い和臣の声にうっかり頷きかけたナオは、慌てて頭を横に思い切り振る。

「かっ、帰ってからじゃなきゃダメ!」
「……おあずけか」
 軽く舌打ちをした和臣はそれでも身体を離し、ナオの頭を撫でて微笑んだ。 

 

   

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