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きみの手を引いて:番外編8

  

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 第8話

 

    
 次の日、オレは見事に熱を出した。
「── 8度6分」
「ええ……? マジで?……」
 
 口の中が熱くてろれつが回らない。臣は体温計をケースにしまいながらベッドに横たわってるオレを見下ろした。
「全く、とんだ拾い物だな。一発ヤっただけでこの有り様か、……ヤるたび熱出されちゃたまんねーな」

「……あんたは一発かもしんないけど、オレは三発なんだよっ……その上、ずっとあんま食ってなかったし……ろくに寝てなかったし……体力使い果たした……」
 はあはあと苦しい息の下から、やっと言葉を押し出す。

「病院行くか? 連れてってやってもいい」
「……や……だ……。保険証で家出、バレるかもしんね……。帰りたく、ねー……」
 臣の眉間にしわが寄る。厄介もんだ、とでも思ってんのかな。否定出来ないけど。

「……寝てりゃ、治る……から……。ほっといて、いいよ……あんた、仕事あんだろ……遅刻、じゃねーの……」
 ベッドの脇にある小さいテーブルの上の時計は十時を過ぎていた。真っ当な勤め人ならとっくに遅刻だろう。
 
「── 生憎、ちょっと顔を出すぐらいが俺の仕事でね。行かなきゃ行かないでいいぐらいだ」
「それ、……仕事じゃねーじゃん……」
「そう。……それだけぜーぜー言っててよくひとのこと気に出来るな」
「へん……かな……」

 臣はバカにしたように、ふんと鼻を鳴らす。くそ、むかつく~。
 ムカついたところで噛みつく元気もない。視界がぐるぐる回る。
「……みず……飲みて……」
 
 黙ったまま臣がいなくなる。少ししてグラスを持って現れると、臣はオレの頭を支えた。
 キスされるのと同時に水が喉に流れ込んでくる。美味い。
 水ってこんな甘いんだ、と思いながら臣の口を吸って、その唇を舐める。

 二回目、臣の唇はオレの唇に乗せられたまま開こうとしない。焦れたオレは自分から臣の唇を舌で割って水を吸う。もっと。もっと、欲しい。臣の舌に自分のそれを絡ませて、水をねだる。

 臣は目を細めてオレを見ながらグラスに口をつける。水をたっぷり含んだ唇をオレに近づけ、これ見よがしに「ん」と突き出す。
 オレは力の入らない手で臣のシャツを掴んで引き寄せ、その唇を貪った。舌でこじ開け、流れ込んでくる水を喉を鳴らして飲む。まだ足りない。水を求めて臣の口の中をオレの舌がうろうろと這い回る。

「……っん、ぅ」
 それを臣の舌が絡めとり、オレの口の中に侵入してきた。抵抗なんか、出来ない。
「……熱いな」
 さんざん蹂躙されてぼうっとなったところへ囁かれる。……かなり下半身がキててとても、ヤバい。知られたら何言われるか判んない。また、……エロい、とか言われたらヤダ。

「……熱あんだから、当たり前だろ……水、くれ……べろチュウしてもいいから……」
 触られなきゃ判んないだろ、とかなり譲歩する。
 臣はまた姿を消してすぐに戻ってきた。今度は水の入ったグラスに、 ── ストローが刺さっている。

「はっ……初めからそうすりゃいいだろっ……」
 差し出されたストローを寝たまま咥えながら毒づいた。水が喉を潤す。それはありがたかったが、臣に弄ばれて面白くない。

「さっきはストロー見つからなかった」
 うそつけッ。
 しゃあしゃあと言う臣を睨みつけたかったけど、体力も気力もない。それでも精一杯臣を見上げる。

「誘ってんのか?」
 ガンくれてんだよっ!

 オレは布団を頭から被って臣に背を向けた。

  

  

   

   

「……はい、じゃあお大事に」
 二時間後、医者が来た。往診、てやつだ。

 診たてでは疲労とストレスが溜まって熱が出たらしい。二日も大人しく寝てれば治る、と栄養注射を打たれた。オレの代わりに臣がなんか、薬を受け取って説明を聞いてる。
 いや、そんなことよりも。

「……医者、やだって言ったじゃん……」
 医者を見送って寝室に戻ってきた臣を詰る。

「どうせ保険証、勝手に見せたんだろ……連れ戻されたらどうしてくれんだよ、……」
「そんなもんなくても医者には掛かれる。全額自費でな」
「……アンタが払ったの?」
「他に誰が?」

 ドアを開けたままそこに凭れて臣は煙草を咥える。火を点けて、吸い込んだ煙を吐き出した。
 ……よく判んねーけど、往診とかって金かかんじゃねーのかな……。わざわざ、来て診てもらうんだし……そんで100%自費ってさあ……。

 一応礼ぐらい言っとくか、と口を開きかけたところに臣がニヤリといやらしく笑った。
「前払いしてもらったからな。さっきのでチャラにしてやる」
 さっきの、アレ。むッとしたオレは口を噤んでへの字に曲げた。

「……やっぱアンタ、サイテーだ。病人になんてことすんだ」
「病人ならぐずってないで寝ろ。ドア開けとくからなんかあったら呼べ、……一回呼ぶごとにチュウ一回な」
「ぜってー呼ばねー」
 
 今度は這いずってでも自力で水飲みに行こう、と心に誓う。いちいちあんなエロいチュウ、イヤだ。
 ドアを半分開けたまま姿を消した臣に向かって、軽く舌を出した。

  

   

  
  

 ……でもそれから結局何回か臣を呼んだ。滅多に熱なんか出したことないせいか、オレはすごく「熱がある状態」に弱い。部屋がやたら広いのも災いした。ベッドから下りても目が回って座り込んでしまい、ホフク前進の途中で仕方なく臣を呼んだ。

 「お漏らしか?」と揶揄されて真っ赤になりながらキスされる。早く、連れてって欲しいのに。決壊しそうなのを知ってる癖に臣はわざと唇を離そうとしない。やっとキスから解放されたオレは涙目で臣に「肩貸して……お願い……」と懇願するハメになった。どSめ。

 食欲はなかったけど喉がやたら乾いて、その度に臣にキスされたりいろいろイジられたりしたけど、抵抗どころか文句ひとつ言えやしない。力も入んないし、ろれつも回らないからだ。それでも悔しいから臣の顔をじーっと見てやった。

 その日はほとんどうつらうつらしてたんだけど、何かの拍子にふっと目が覚めた。── 話し声。リビングからだ。臣の他に誰かいるのか、と思って息を詰める。
 オレが呼んだら判るようにリビングのドアも寝室のドアも開けてある。そのせいで途切れ途切れながらも結構聞こえた。

「ああ。……ちょっと手のかかるノラ猫、拾った。面倒見なきゃならん」
『……』
「まあ、そうだな。……また、毛色が変わっててなかなかなつかないんだ」
『……』

「恋人ヅラなんてしそうにねえな。サド野郎って目付きが言ってるよ。それぐらいの方が面白い」
『……』
「違うよ。……いや、ちょっとは……俺のせいかもしれんが、大半は俺のせいじゃない、と思う。熱出して寝てる」

『……』
「そりゃ助かる。食欲はないらしいが、なんか食わさないとな、……」
 
 どうやら電話らしい。オレはほっとして身体の力を抜いた。
 それにしてもノラ猫ってオレかよ? すげーシツレイ、ムカつく。
 今すぐリビング行って臣を睨みつけてやろうかと思ったけど、足が立たないかも知んないからやめた。

 電話の相手ダレだろう。オレのこと、ベラベラしゃべんな。知らないところでノラ猫扱いされんのも自分のことを話題にされんのも、ごめんだ。 熱引いたら文句言ってやる、と思いながらも重くなってくる瞼には逆らえない。

 オレはまた眠ってしまった。

  

  

     

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コメント

こんばんは!!番外編イッキ読みしましたあーいいわぁハルかーわーいーいー!!つんでれつんでれつんでれやっぱさいこーだわ全身性感帯は重要ですね!!
きみの手を引いて」はタイトルからしてもう最高なんですがななな、内容がっ、!!!もうすれ違いすれ違いすれ違いで切なくてヤバイ!!気持ちが通じ合ったところを想像してにやにやしてます←
臣さん大好きっ!愛人にしてくれっ!(そしてナオにやきもきさせるという。)ありがとうございましたっ!!
あ、レス?は、どちらでもいいっす!!でわ、内容がない文を長々失礼しましたー
この感動、言葉じゃ表しきれないぜ?みたいなねっ!!

≫以下レスです。
コメントありがとうございます♪
また臣がモテてる……。この思わず舌打ちしてしまうような気持ちをどうしたらいいんでしょうか^^;
あんな、どSで良ければもらってやってください。もれなくナオも付いてきます^^*

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