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きみの手を引いて:番外編11

  

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

  

  第11話

  

  
「へえ、ほんとだ。すっごい美人」
 オレを見上げながら、少年は感心したように言う。彼の ─── ナオ、というらしい ─── その、シュウたちとは違った敵愾心のないきらきらした目に吸い寄せられた。
 
「……あんたの方が、キレイじゃん」
 あれ、何言ってんだオレ。初対面の知らないヤツ、しかも男に。
 思わず口をついた自分の言葉に驚くが、─── それも仕方ない、と思う。

 だって、目の前にいるオレより少しだけ小さい彼は、本当に綺麗だった。小作りで整った目鼻立ち。長めの明るい茶色の髪。白い頬にはそばかすがあったが、それすらも演出みたいなチャームポイントにしか見えない。
 なによりも、人懐こそうに笑った顔がどうしようもなく可愛かった。

「キレイっていうか、カワイイ、のか」
「えーっ、なに言ってんの」
 自分の考えに納得して呟いたオレに、ナオはまた笑みを見せた。……すげえ、カワイイ。

 うっかりオレが見惚れたその笑顔を消して、ナオは心配そうな表情で首を傾げた。
「シュウたちになんかされた? 殴られたりとか?」
「別になにも。カラまれただけ」
「そっかー、……あのさ、あのコたちを庇うわけじゃないけど、ちょっと嫉妬しただけなんだよ。オーナーが君みたいなキレイな子同伴で来たからさ、新しいお気に入りかって」

「それ、あいつも言ってた。シュウって奴。ケツ振ってお気に入りになった、とかなんとか下んねーこと」
 思い出して顔をしかめる。シュウの神経逆撫でしてやろうと思って肯定したが、オレはお気に入りじゃない。単に契約を交わしただけだ。

「あんたもオレが臣のお気に入りだって思ってんの? それ違うから。オレはあんなエロオヤジたらし込んでねーし、向こうもオレのこと気に入ってねーもん」
 さっきハッタリかますために言えなかった否定の言葉を、ナオにぶつける。
 ナオには、誤解されたくなかった。なんか判んねーけど、お気に入りって思われてナオに敬遠されたら、ヤダ。

 ガキみてーに口を尖らせたオレにナオは困ったような笑顔を向けた。
「……ほんとにお気に入りじゃないの? でも、呼び捨て」
「だってあいつが言ったんだよ。臣でいいって」
「店の中じゃオーナーって呼べって教えてもらわなかったの?」

 もらわなかった。ちきしょう臣のヤツ、オレがああいうのにカラまれるの知ってて放置したな……!
 ヤローふざけんな、と心の中で臣に向かって悪態を吐きながら、ナオをちらっと見た。
「……オーナーって呼んだら、良いわけ?」
「そう。そしたらあんまりカラまれなくなるよ」

 別に親切ごかしでもなく、あっけらかんとナオはオレに教えてくれた。こんな奴、初めてだ。
 臣の呼び方なんかいっそエロオヤジでも良かったオレはナオに恐る恐る訊ねた。
 
「あのさ、……ナオって呼んでいい?」
「あっ、僕ー? なんで知ってるの? いいよ、ナオで」
「オレ、ミハル、……ハル」
 
 ナオはこくんと頷くとにっこり笑った。
「判った、ハル、ね」 

   
 

  

  

 フロアに出るとナオは知り合いを見つけたらしく、「アキオー」と軽く手を挙げた。オレも臣のバカに文句のひとつも言ってやらなきゃならない。
 離れようとすると「明日も来る? ハル」と訊かれた。

 ここに来たのは牧田さんに土鍋を返したかったからで、明日も来るなんて思ってなかった。でも、オレは頷いた。
 ナオはまたあの笑顔を見せると、「僕も来るね」と言って知り合いのほうへ歩いていった。

「遅かったな」
 カウンターに戻ると臣がグラスに口を付けながらにやっと笑った。ナオのカワイイ笑顔とは雲泥の差。

 オレの声は自然と低くなった。
「……あんたと一緒にここに来たってだけでカラまれた。臣、って呼んだらすげー妬まれた。どうゆうコト?」

「あ?」
 臣は器用にも眉を片方だけ上げてみせた。思いも寄らないことを言われたようなその表情にカッとなる。
「すっとぼけてんじゃねーよっ、あのシュウって奴なんなんだよ! カラダでたらしこんだとか言われたんだぞ!?」

「シュウ……? ああ」
 まるでたった今思い出したみたいな顔が憎々しい。
「なにが、ああ、だっ!? 知ってて教えなかったろ、オーナーって呼べとか、カラまれないように気をつけろとか!」

 怒りをまき散らしながらオレは臣の隣にどかっと腰を下ろした。
 そんなオレに臣は珍しいものでも見るかのような視線を向けた。
「シュウに絡まれたのか」
「ええそうですよ!? 知ってたくせに、オレが一人になったら絡まれること」
 
「知らなかった」
「フカシこいてんじゃねー!」
 シラを切る臣に思わず怒りを爆発させると、絶妙のタイミングで牧田さんがコーラの入ったグラスをオレの前に置いた。

「まあまあ、ハルくん。……オーナー、自分が手え付けた子ろくに覚えてないんだよ。だから、そういう子がハルくんに嫉妬するって全く判ってない」
「はあ? ヤッた奴覚えてねーの?……てゆーかあんたシュウと寝たの!?」

「一回だけな。……多分」
「覚えてねーじゃん……」
 アレとサオ兄弟かよ、サイアク、と思わず心の中で嘆きながらコーラを飲む。

「どうやって切り抜けた?」
 気を取り直した臣は面白がって事の顛末を知りたがる。なんか、下々の心情なんて全然判んない王様に高みから見下ろされて好奇心から質問されてるようなカンジ。

 それ自体は全く面白くなかったけど、その質問で彼の顔が思い浮かんだ。
「……ナオに助けてもらった」
 ナオが仲裁に入ってくれた。オレとあのバカガキが睨みあってる現場に入ってきて、一触即発の雰囲気をぶち壊した。─── わざと、空気を読まない、場違いな明るい声と人懐こい笑顔を振りまいて。

 そんな風に助けてもらったのは初めてだった。オレより年下みたいなのに、簡単にケンカ腰のシュウをあしらって丸く治めた。すごく、なんか、世渡りが上手い、っていうか ───。

「へえ、ナオに」
 意外そうな声音で言いながら、臣はちょっと後ろを振り返った。ナオを捜してるのかもしれない。
 オレはナオのことが気になって訊いた。

「─── あんた、ナオのことも食っちゃったの?」
「いや、食ってない」
「え!?あんなカワイイのに手え出さねーの!? シュウなんかよりずっとイイのにっ」

「あんな小さくて細っこい奴、抱き潰しそうで怖い」
 知らなかった。臣でも怖いって言うことあるんだ。
 少し驚いたオレを臣は妙な目で見た。

「なんだ。ナオが気に入ったのか?」
「んん、まあ……助けてもらったし……それにまだ義務教育中じゃねーの、ナオって。こんなとこ出入りしてたらオレよりヤバくね?」

 言った途端、臣はくっと笑った。
「あいつ、十八だって聞いたぞ。お前よりオニーサンだよ」
「……ウソ、マジで?」
 
 ぽかんと口を開けた、間の抜けた顔を晒してしまった。だって、どう見ても中学生ぐらいにしか見えなかったのに。
 でも、それであの仲裁ぶりに納得がいった。ほとんどナオの性格に因るものだろうけど、堂に入ったあしらい方だった。

 事を荒立てずに上手く治める、世慣れた処世術だった。
 
 思わず振り返ってナオの姿を捜したが、臣が連れてきたオレに対する好奇心に満ちた眼差しと出会うばかりで、とても年上には見えない彼を見つけることは出来なかった。 

  

  

     

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