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2009年5月

 

 昨日は取り乱してしまいましたが、ちょっと落ち着いてきました……。

 まだ動揺が覚めやらないものの、これからも栗本薫さんを心の師匠として尊敬していこうと思います。

 

 ★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

  

 FC2小説からお越しの方、拍手コメントありがとうございます♪

 直接リンク出来ないのに、はるばる来て下さってとても嬉しいです。

 「きみの」はブログからFC2小説に写しているだけなので、書きやすいかどうかはちょっと判りかねますが、読むときの見た目がとても美しくてキレイですよね。゚.+:。(・ω・)b゚.+:。

 ぜひ、書きたいものを書いてみて下さい。(o^-^o)読ませていただけると嬉しいです♪

 

   

 

 栗本薫さんが亡くなった……ウソだ……

 ものすごい動揺しています。呆然としてしまって……。

 栗本さんは八月の心の師匠とも呼ぶべきひとで、BLなんて言葉もなかったくらい昔から、こんなに世間に認知される以前から、そういう小説を世の中に向けて発信してきた偉大な先駆者です。きっと風当たりも想像以上に強かったと思います……。

 けれど、ミステリーやファンタジー、時代小説など、その作品はBLだけに留まらず、滑らかな文体、物語に引き込む力、魅力的なキャラクター、どれを取っても当代一の「小説」で、BLを書く、ということに対する批判をかわしてきた方です。

 まだ信じられない……。本当にあのひとがこの世界からいなくなってしまったんでしょうか。

 東京サーガの続きが読めないなんて……。

 高校生の頃読んだ「翼あるもの」の下巻で、八月の魂を変えたひとなのに……。早過ぎます……。

 とてもすぐに信じることは出来ませんが、お悔やみ申し上げます……。

 

   

 

「きみの」番外編12話更新しました。

 

 「きみの手を引いて」番外編、第12話更新しました。\(^o^)/

 こんな風に、えっちもするしそこそこ信頼もしてるし、けれど友人でもなければ恋人でもない関係を書くのが好きです。その曖昧さが。どっちつかずなカンジが。

 セフレか?しかしハルの居候的な立場の弱さがそのカテゴリーを否定する……。

 

 アクセス数が1万を超えました。ありがとうございます。m(_ _)m

 すごく嬉しいです。キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!゜.+:。(*´v`*)゜.+:。

 1万ヒット記念とかなにか、書かなくちゃ、と思ったのですが、間に合いませんでした。すいません……。(´・ω・`)ショボーン

 1万なんて遠い先の話だと思っていたので、気を抜いてました……。なんか書けたらUPしますね~。(;´д`)トホホ…

 

きみの手を引いて:番外編12

  

 

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 第12話

 

  
「……はっ…は……っはあ……っ」
 上に乗っかったオレの汗ばんだ身体を、臣のものが貫いていた。
 ベッドが軋む音が耳障りで。早く終わって欲しいのに、臣はうっすら笑みを浮かべた余裕の表情を崩さない。

 臣の手がオレの身体を這って、その指が赤く立ち上がった胸の突起をきゅっと摘む。
「んっ……!」
 声を、上げないように我慢する。

 けれど身体が勝手に反応するのは止めようがない。びくびくと背筋を震わせながら臣のものを締め付けてしまう。
「こうされると、イイか?」
「……ダレ、がっ……イイわけあるか……っ」
 うっすらと涙が溜まった目で、霞んで見える臣のいやらしい笑みを睨み付けた。

  
 

 ─── なんでオレが絶対イヤだと思ってたキジョウイなんかで臣にご奉仕させられてるかというと。
『明日も来る? ハル、……僕も来るね』
 ナオと約束したからだ。ヘヴンで会おうって。

 そして明日、ヘヴンでナオと会うときに臣はいらない。臣と同伴なんか二度とごめんだ。
 ひとりで、ヘヴンに行って遊ぶ。
 
 その為には金が必要だった。所持金が全くないわけじゃなかったけど、ヘヴンはアルコールを出す店らしく、料金設定が高い。ソフトドリンクでさえも、だ。
 
 だから臣に「快気祝い寄越せ」とベッドに連れ込まれたとき、金を要求した。─── 騎上位するから金くれ、とそのまま言った。
 オレのスウェットを剥ぎかけてた臣はちょっと驚いたみたいだったけど、すぐに片方だけ口の端を上げるひとの悪い笑みを見せて「満足させてみろ」とのたまった。

  

 ……で、今現在、オレは。
「もうっ……いつまで頑張ってんだよっ……」
 強がりに見せかけた泣き言を漏らしていた。

「……気持ちイイだろ……? さっさとイけよ……っ」
 オレが突っ込んでるみたいだけど、実際は逆だ。突っ込んでる奴はオレの下でさっきから余裕の笑みを浮かべてる。

 口にするのはエロいことばっかりだ。
「ローション使って自分で自分の身体、開いたの初めてか?」
「……言うなっバカヤロー……っ」
 思い出して顔が熱くなる。

 中途半端に身体をイジられて、ローションのチューブ渡された。それで自分で入るようにしてみろ、と……言われて。
 臣の目の前で足を開いた。屹立して先端から滴を垂らしているものが揺れている。その先の双丘の間にローションにまみれた自分の指を伸ばして……。

 死ぬほど恥ずかしかった。くちゅくちゅという音も、思わず上げてしまう声も、どんどん滴を垂らしてしまうそれも。

 あんまり恥ずかしくて閉じた足を臣は無理やりこじ開けて、オレが自分の指でそこを解すのを観賞した挙句、その場所に……舌を這わせた。
 オレが自分の指を埋め込んでるそこを。指を、その境目を、……舐めた。そんなことされるのイヤなのに、気持ちよくてへんな声が出て、涙が滲む。

 それから臣の上に乗せられて。─── オレは自分から臣のものを、自分で開いたそこに押しつけた。
「ああ……っん、ふ…あ、あっ……」
 鼻に抜ける甘い声を止める余裕はなかった。身体を穿つその質量に、なんとか慣れようと力を抜く。

 納めた時には息も絶え絶えで汗に濡れ、それでも臣を満足させようとしてるのに。
「……まだ、かよ……っ……いい加減にしろっ……」
「なんだ、もう降参か?」
 揶揄の混じった言葉に頭を横に振る。金が欲しい。降参するわけにはいかない。
 
 臣と身体をくっつけるのがイヤで、オレはほとんど垂直に上体を起こしていた。ベッドに膝をついた姿勢のせいで太ももの内側が攣りそうだ。少し足の力を抜いて臣に体重をかけたら。
「っあ、あっあっ、や……っ」
 奥まで、侵入してくる。臣はわざと腰を揺らせてオレにヤラしい声を上げさせた。

 じわりと浮かんでくる涙をこぼさないように我慢する。泣くな。みっともない。
 こんなの、なんてことない。……あのひとに触られたりするより、全然マシ。全然ヘーキ。
「何考えてる」

 眇めた臣の目がオレを射抜く。
「……あんたのことしか考えてない」
「うそつけ」

 胸を弄っていた臣の手が逸れて、半勃ち状態のオレのものを包み込む。それを扱かれながら後ろを突き上げられた。
「あああ……っ!」

 なにも考えられない。内側を掻きまわされる感覚に快楽が伴い、さらに前からの刺激を与えられ、身体が耐えられない。
 無意識に臣の上に突っ伏し、すがり付いていた。
 
「……もお……っや……」
「気持ちいいか?」
「………」
 判ってるくせに、臣は意地悪だ。
 涙目で、それでも睨みつけたオレの濡れた前髪を、臣の指がかき上げた。
 
「真っ最中に何考えてんだ、ああ? いい度胸じゃねーか」
「ちが……なにも考えてな……」
 横に振った頭を捉えられて、キスされる。乱暴なそれにも身体は反応して臣のものを締め付けながら勝手に腰が揺れた。

「思い出してんじゃねーよバーカ。忘れろ。今、俺を愉しませることだけ考えろ」
 臣は、オレがあのひとのこと考えたのを判ってた。その上で、無理やり快楽を与えてなにも考えらんなくした。
 ヤってる最中に他の奴のこと考えてんのが気に食わなかったのか、……オレのひどい記憶を忘れさせようとしたのか、判んねーけど、……。

「……やっぱオレ、あんたのこと大っ嫌いだ……」
 優しくなんてしなくていい。あの時のこと思い出して辛くてたまんないオレを強姦したらいい。
 「忘れろ」なんて心の中に踏み込まれるほうがもっとずっと嫌だ。誰の手も借りない、忘れるかどうかはオレが決めるんだ。

 精一杯力を込めたオレの目を覗き込んで、臣は喉の奥で笑った。
「そうでなきゃ面白くない。契約した甲斐があるってもんだ」
「……うっせ、必ずイかせてや……!?」
 言いも果てず、身体の位置を入れ替えられた。つまり、オレが下になった。

「イかせてもらおうじゃねーか」
 覆い被さってくる臣の手に、唇に、貪られる。何度も内側のあの場所を臣のものが掠めた。

「ああっあ……っ、んっ……やあっ……やだ……っあ、ん……っ」
「エロい声」
 臣の背中に手を回し、その身体にしがみ付いたオレは、自分の声を認めたくなくて分厚い肩に額を押し付けたまま首を横に振る。

 ぐい、と突き上げられた。
「!! あああっ!」
 涙が溢れる。─── 突然の刺激に射精してしまった。
 
 顔が真っ赤になるのが判った。臣をイかせるはずだったのに、こんな……。
 悔しくて、恥ずかしくてたまらない。
「……あんっ……あんたが悪いんだからなっ……ひっく、き、キジョウイするって言ったのに、……お、オレだって、ひっく、……ガマンしたかったのに……っ」

 しゃくり上げながら臣を詰る。こないだの時と一緒だ。臣はいつでもオレをいいように蹂躙して、辱める。……それを嫌がってない自分が、何より嫌だ。

「……臣のバカヤロー……大嫌いだ……っ」
「そりゃ結構」
 臣はしれっと言って後始末をしてくれる。ちきしょう、怒れよ。

 最初んときもそうだったけど、臣はオレがどんなに理不尽なことを言っても、怒らない。全然揺れない。オレに好かれようと嫌われようと、そんなことどうだっていいって態度。
 
 臣が怒ることってあるんだろうか。例えば、本気になって我を忘れてなりふり構わず、とか。
 ……ありえない、とその想像を却下する。

「……イかせてくれんだろ。最後まで付き合えよ」
 言葉と共に口付けた臣は動きを再開する。
 それから数十分、オレは臣のことだけ考えるように……させられた。

  

  

     

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「きみの」番外編11話更新しました。

  

 「きみの手を引いて」番外編11話更新しました。\(^o^)/

 10話でちらっと出たナオが和臣とニアミス。……ですが、「ヘヴン」以前はあんまり話したこともないという設定上、本当に目も合わないような関係です。

 ハルを介してギリギリまで近づけるのが書いてて面白いです。なんか……どこまで近づけるか、しゃべるのかしゃべんないのか、しゃべったらどんなカンジ、とか。

  

 昨日、少し飲み過ぎてカルい二日酔いです……。朝、子供たちを送り出してから二度寝してしまいました。いかん、こんな堕落した生活、良くない、と思って起き出し、更新。

 でもまだ眠い……。子供が出来てからというもの滅多にお酒を飲まなくなったので、めっきり弱くなりました。少量で酔えるので安上がり~。

  

 はっ、もう彼らが帰ってくる時間です。とりあえずお昼ご飯を食べとこう……。

  

   

 

きみの手を引いて:番外編11

  

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

  

  第11話

  

  
「へえ、ほんとだ。すっごい美人」
 オレを見上げながら、少年は感心したように言う。彼の ─── ナオ、というらしい ─── その、シュウたちとは違った敵愾心のないきらきらした目に吸い寄せられた。
 
「……あんたの方が、キレイじゃん」
 あれ、何言ってんだオレ。初対面の知らないヤツ、しかも男に。
 思わず口をついた自分の言葉に驚くが、─── それも仕方ない、と思う。

 だって、目の前にいるオレより少しだけ小さい彼は、本当に綺麗だった。小作りで整った目鼻立ち。長めの明るい茶色の髪。白い頬にはそばかすがあったが、それすらも演出みたいなチャームポイントにしか見えない。
 なによりも、人懐こそうに笑った顔がどうしようもなく可愛かった。

「キレイっていうか、カワイイ、のか」
「えーっ、なに言ってんの」
 自分の考えに納得して呟いたオレに、ナオはまた笑みを見せた。……すげえ、カワイイ。

 うっかりオレが見惚れたその笑顔を消して、ナオは心配そうな表情で首を傾げた。
「シュウたちになんかされた? 殴られたりとか?」
「別になにも。カラまれただけ」
「そっかー、……あのさ、あのコたちを庇うわけじゃないけど、ちょっと嫉妬しただけなんだよ。オーナーが君みたいなキレイな子同伴で来たからさ、新しいお気に入りかって」

「それ、あいつも言ってた。シュウって奴。ケツ振ってお気に入りになった、とかなんとか下んねーこと」
 思い出して顔をしかめる。シュウの神経逆撫でしてやろうと思って肯定したが、オレはお気に入りじゃない。単に契約を交わしただけだ。

「あんたもオレが臣のお気に入りだって思ってんの? それ違うから。オレはあんなエロオヤジたらし込んでねーし、向こうもオレのこと気に入ってねーもん」
 さっきハッタリかますために言えなかった否定の言葉を、ナオにぶつける。
 ナオには、誤解されたくなかった。なんか判んねーけど、お気に入りって思われてナオに敬遠されたら、ヤダ。

 ガキみてーに口を尖らせたオレにナオは困ったような笑顔を向けた。
「……ほんとにお気に入りじゃないの? でも、呼び捨て」
「だってあいつが言ったんだよ。臣でいいって」
「店の中じゃオーナーって呼べって教えてもらわなかったの?」

 もらわなかった。ちきしょう臣のヤツ、オレがああいうのにカラまれるの知ってて放置したな……!
 ヤローふざけんな、と心の中で臣に向かって悪態を吐きながら、ナオをちらっと見た。
「……オーナーって呼んだら、良いわけ?」
「そう。そしたらあんまりカラまれなくなるよ」

 別に親切ごかしでもなく、あっけらかんとナオはオレに教えてくれた。こんな奴、初めてだ。
 臣の呼び方なんかいっそエロオヤジでも良かったオレはナオに恐る恐る訊ねた。
 
「あのさ、……ナオって呼んでいい?」
「あっ、僕ー? なんで知ってるの? いいよ、ナオで」
「オレ、ミハル、……ハル」
 
 ナオはこくんと頷くとにっこり笑った。
「判った、ハル、ね」 

   
 

  

  

 フロアに出るとナオは知り合いを見つけたらしく、「アキオー」と軽く手を挙げた。オレも臣のバカに文句のひとつも言ってやらなきゃならない。
 離れようとすると「明日も来る? ハル」と訊かれた。

 ここに来たのは牧田さんに土鍋を返したかったからで、明日も来るなんて思ってなかった。でも、オレは頷いた。
 ナオはまたあの笑顔を見せると、「僕も来るね」と言って知り合いのほうへ歩いていった。

「遅かったな」
 カウンターに戻ると臣がグラスに口を付けながらにやっと笑った。ナオのカワイイ笑顔とは雲泥の差。

 オレの声は自然と低くなった。
「……あんたと一緒にここに来たってだけでカラまれた。臣、って呼んだらすげー妬まれた。どうゆうコト?」

「あ?」
 臣は器用にも眉を片方だけ上げてみせた。思いも寄らないことを言われたようなその表情にカッとなる。
「すっとぼけてんじゃねーよっ、あのシュウって奴なんなんだよ! カラダでたらしこんだとか言われたんだぞ!?」

「シュウ……? ああ」
 まるでたった今思い出したみたいな顔が憎々しい。
「なにが、ああ、だっ!? 知ってて教えなかったろ、オーナーって呼べとか、カラまれないように気をつけろとか!」

 怒りをまき散らしながらオレは臣の隣にどかっと腰を下ろした。
 そんなオレに臣は珍しいものでも見るかのような視線を向けた。
「シュウに絡まれたのか」
「ええそうですよ!? 知ってたくせに、オレが一人になったら絡まれること」
 
「知らなかった」
「フカシこいてんじゃねー!」
 シラを切る臣に思わず怒りを爆発させると、絶妙のタイミングで牧田さんがコーラの入ったグラスをオレの前に置いた。

「まあまあ、ハルくん。……オーナー、自分が手え付けた子ろくに覚えてないんだよ。だから、そういう子がハルくんに嫉妬するって全く判ってない」
「はあ? ヤッた奴覚えてねーの?……てゆーかあんたシュウと寝たの!?」

「一回だけな。……多分」
「覚えてねーじゃん……」
 アレとサオ兄弟かよ、サイアク、と思わず心の中で嘆きながらコーラを飲む。

「どうやって切り抜けた?」
 気を取り直した臣は面白がって事の顛末を知りたがる。なんか、下々の心情なんて全然判んない王様に高みから見下ろされて好奇心から質問されてるようなカンジ。

 それ自体は全く面白くなかったけど、その質問で彼の顔が思い浮かんだ。
「……ナオに助けてもらった」
 ナオが仲裁に入ってくれた。オレとあのバカガキが睨みあってる現場に入ってきて、一触即発の雰囲気をぶち壊した。─── わざと、空気を読まない、場違いな明るい声と人懐こい笑顔を振りまいて。

 そんな風に助けてもらったのは初めてだった。オレより年下みたいなのに、簡単にケンカ腰のシュウをあしらって丸く治めた。すごく、なんか、世渡りが上手い、っていうか ───。

「へえ、ナオに」
 意外そうな声音で言いながら、臣はちょっと後ろを振り返った。ナオを捜してるのかもしれない。
 オレはナオのことが気になって訊いた。

「─── あんた、ナオのことも食っちゃったの?」
「いや、食ってない」
「え!?あんなカワイイのに手え出さねーの!? シュウなんかよりずっとイイのにっ」

「あんな小さくて細っこい奴、抱き潰しそうで怖い」
 知らなかった。臣でも怖いって言うことあるんだ。
 少し驚いたオレを臣は妙な目で見た。

「なんだ。ナオが気に入ったのか?」
「んん、まあ……助けてもらったし……それにまだ義務教育中じゃねーの、ナオって。こんなとこ出入りしてたらオレよりヤバくね?」

 言った途端、臣はくっと笑った。
「あいつ、十八だって聞いたぞ。お前よりオニーサンだよ」
「……ウソ、マジで?」
 
 ぽかんと口を開けた、間の抜けた顔を晒してしまった。だって、どう見ても中学生ぐらいにしか見えなかったのに。
 でも、それであの仲裁ぶりに納得がいった。ほとんどナオの性格に因るものだろうけど、堂に入ったあしらい方だった。

 事を荒立てずに上手く治める、世慣れた処世術だった。
 
 思わず振り返ってナオの姿を捜したが、臣が連れてきたオレに対する好奇心に満ちた眼差しと出会うばかりで、とても年上には見えない彼を見つけることは出来なかった。 

  

  

     

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好きな本:2

 

  ネタバレ注意!

 

マルドロオルの歌―現代日本の翻訳 (講談社文芸文庫)

著者 ロオトレアモン
販売元 講談社
定価(税込) ¥ 897

 青柳瑞穂訳のやつです。昔、アタマがどうかしてると自分で思ってた頃、すごい好きでした。「少年の血」とか。

 アングラ劇団「天井桟敷」の主宰・寺山修司(言葉の錬金術師、という異名があるそうです)も心惹かれた「三人のマルグリート」が「尿瓶の王冠」に改題されて収録されてます。

 ロオトレアモンで一番有名な「ミシンと洋傘」が収録されてないのが残念です。

  

 

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 前出の「天井桟敷」で音楽を手掛けていたJ.A.シーザーが結成した「演劇実験室◎万有引力」がこのアニメの楽曲を担当。

 そのアンダーグラウンドな世界観はこの作品の幻想的な部分を強調してます。

 話の内容は、主人公・ウテナが決闘(デュエル)してエンゲージに縛られている友人(?)アンシーを救い出す……っていうカンジでしょうか。うーん、端的だなあ……。

 劇場版よりもマンガよりも、TV版が好きです。

 

 

瓶詰の地獄 (角川文庫) 瓶詰の地獄 (角川文庫)

著者:夢野 久作
販売元:角川グループパブリッシング
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 昔、読んだ頃は「瓶詰地獄」だったと思うんですが……。

 「ドグラマグラ」とかに比べたら超短編ですが、夢野久作作品では一番好きです。

 海岸に流れ着いたビンを回収した警察官が中に入っていた手紙を検めるのですが、その手紙の内容が……地獄。

 その地獄の見せ方が、非常に秀逸で、こういう手法もアリか~と心に残ってます。

  

 

先週までは

 

 先週までは本編の更新にテンパッていた金曜日ですが、今週からは平穏です。ふう……やっぱり、何曜日更新とかって自分を戒めるのは良くないです。

 週一とかならまだしも、番外編の更新は月曜と決めた為、週二更新。コレはキツい。

 ヘヴンと本編もダブって書いてたのですが、基本どっちかを週一更新だったので(それにその頃はそんなに読んで下さる方もいらっしゃらなかったので)わりと気楽。

 週一回なら書けるなあ、と思いながらBLウェブ小説や楽しみに取っといた本を読みあさったりしてます。(書いてないじゃん……┐(´д`)┌ヤレヤレ)

    

 ついさっき、アクセスカウンターが消えてることに気付いてビックリ。w(゚o゚)w

 ブログのレイアウトを変えたときに消えたようです。なんだそりゃー。(・_・)エッ....?

 で、設置しました。

 でもケータイからのアクセスは含まれない(ココログフリーだから)ので、あんまり当てになりません。

 なろうサイト様で読んで下さる方はケータイ端末の方が多いので、もうちょっとアクセス数が多いかな……?  

 葉っぱ(っぽい)カウンターがカワイイのでアクセサリーってことで。

   

     

番外編10更新しました。

 

 「きみの」番外編10を更新しました。\(^o^)/

 本編が終わって気が抜けたせいか肩肘張らず書き進んでます、番外編。

 思うんですが、小説家になろう様みたいな投稿サイトに投稿するのってスゴイ労力がいります……八月にとっては。

 なろうサイト様のフォームで書いているのでどうしてもそれがオリジナルになるし、なんか失敗出来ない感がすごくて……。

 それなのになんでブログ開設より先にいきなり投稿サイトを利用したかというと、ブログを作るのは大変だと思っていたからです。今でも大変なんですけど。(´;ω;`)ウウ・・・

 まずPCに疎いし(コピペもろくに判んなかった……)プロバイダーってナニ?とかそういうレベル。┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~

 ただ、小説のネタだけはあった。他になんにもなくてもネタだけはあったんですよ……ええ、これがまた、奇跡的に……。

 そんなわけで投稿サイトに掲載して評価がどうのこうの、読者数がどうのこうのとかそういう問題ではなくて、そこしか小説を書くところがなかったのです。PCに疎いばっかりにこんなことに……。

 最初からブログだったら投稿しなかったでしょう、多分、恐らく、きっと……。ネタはあっても文章下手だから……。

 しかし、結果、八月の書く文章が好きだとおっしゃって下さる方がいらしたり、一生ついていきますとおっしゃって下さる方がいらしたり(八月なんかについてきたら親御さんが嘆かれますよ~)、そういうコメントを頂けるようになったのは本当に僥倖でした。

  

 そう、コメント。小レスです。

 しゅこさん、三人のお子様がいらっしゃるんですね~、先輩ママさんですね

 たびたび温かいお言葉を下さって本当にありがとうございます。これを励みに頑張ります。゜.+:。(*´v`*)゜.+:。

 べるさん、最後を惜しんで下さってありがとうございます。八月も柚月とハルを幸せにしてやれて良かったです。

 あと、お名前のない方、最終話、ブログのほうが良かったですか?八月はエロ書くのが苦手なのでそう言って頂くと大変嬉しいです。o(*^▽^*)o

 

 ……気がつけば長々と書いてしまいました。

 次回作も頑張ります。

 

 

きみの手を引いて:番外編10

  

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

  

 第10話

  

 ─── 三日後。復活を遂げたオレは臣に連れられてヘヴンズブルーのドアを潜った。
 右手の紙袋の中身は空っぽの小ぶりの土鍋。ヘヴンのフロアマネージャーだという牧田さんがコレで雑炊を作って、熱出して寝込んだオレに持って来てくれたのだ。

 雑炊は、美味かった。それに、臣に聞いただけなのにオレのこと気に掛けてくれたこともちょっと嬉しかった。
 だから臣に「それ、自分で返して礼ぐらい言えよ」と言われた時、素直に頷いた。

 そういうわけで、オレは今、牧田さんのいるカウンターに向かって歩いている。……いるんだけど、……なんか、じろじろ見られてるような気がするのは気のせい……?
 先に立って歩く臣に置いてかれないように、早足になる。
   
 カウンターの中の牧田さんが気付いて、眼鏡の奥の目が瞠られた。
「おや、……オーナーのとこにいる、こね」
「ハル。ハルだよ。へんな呼び方やめて」

 仔猫ちゃんと呼ばれそうで慌てて遮る。……全くもう、このオーナーにしてこのスタッフありだよ。いい加減にしろっての。
「ああ、ハルくんね。……わざわざ返しに来てくれたの?」
 カウンター越しに紙袋ごと渡す。中を確かめた牧田さんは苦笑いした。
 
「雑炊、美味かったです。ありがとうございました」 
「オーナーに頼めばよかったのに」
「お礼、言いたかったから。……それと、このひとに頼むと超高くつくから、ヤダ」

 そう、復活したとはいえ病み上がりのオレが空の土鍋下げてのこのこ臣にくっついてきたのは、そのせいもある。
 水持ってきてもらうだけでべろチュウだぞ。土鍋持ってってくれ、なんて言ったら何されるか。
「本人の目の前で陰口か?」
 カウンターの端っこの席に座った臣が口を挟んだ。

「陰口じゃねーよっ、ジジツをありのままに述べただけ」
「へえ、ひとのベッド占領して献身的な介護を受けた事実も述べてくれたのか?」
 なにがケンシンテキだよ、ほったらかしだったくせに、……。でもオレがベッドを占領してしまい、臣が別の部屋で寝ることになったのは本当だったのでぐッと言葉に詰まる。

 臣はにやにやと笑ってオレの腕を引いた。無理に隣のスツールに座らせる。
「快気祝い寄越せよ」
「……金ねーよ。知ってんだろ」
「身体でお礼しろ」

 ……超ヤな言い方。オレを性的対象として見てるそのイヤらしい言い方に、イラっとすると同時に恥ずかしくなる。触るな。変な目で見るな。
 今、この場で辱められてるような気がする。

「……判ってるよ。契約したんだから、ちゃんとやらせるって」
 それでもオレは臣の口調も目付きも咎めず、大人しくうな垂れた。実際、臣のマンションを追い出されたら困る。
  
 臣は対等に「契約」と言ったが、臣にとって契約するのはオレじゃなくてもいいのだ。無理に契約する必要も、ない。それに比べてオレは身体でも差し出さない限り、眠る場所さえ確保出来ない。
 明らかに、オレの方が分が悪かった。

「今度は騎上位な」
「! なっ……」
「自分で動かなきゃ終わんねーぞ。サービスしてもらう」
 こんなとこで何言ってんだ、とか、そんなこと出来るか、とか文句がありすぎてどれから突っ込んだらいいのか判らない。

 その上、ひとにキジョウイだのなんだの聞かれて注目を集めるの嫌さに、結局オレは熱くなった顔を俯けるしかなかった。
「……オーナー。可哀想じゃないですか、ほら、口も利けなくなって」
 牧田さんが小さい声で庇ってくれる。なのに、それもこのエロオヤジは一蹴した。

「まだフェラチオ強制しなかっただけマシな方だぞ?」
「強制したかったんですか? 最低ですよ」
「そうか? どっちがいい、騎上位とフェラ……」
「……トイレ!」
 
 宣言したオレはスツールを下りて、逃げた。自分を肴にした猥談に付き合ってられるか。
 くっそ、覚えてろよ、と口の中でぶつぶつ言いながらフロアを見渡す。
 
 入ってまっすぐカウンターに来たので気付かなかったけど、結構広い店だった。立ち飲み用の小さいテーブルがいくつかとボックス席。そのどれにも身を寄せずに壁に寄りかかったり、座り込んでいる客もいる。盛況と言ってもいいぐらい混んでいた。

 ……実は、こういう、酒を提供する店に来たのは初めてだ。薄暗い照明と大人の雰囲気が物珍しくて、きょろきょろしてしまう。
 自分のそんな仕草が子供っぽいことに気付いて咳払いしてごまかす。別に行きたくもなかったけどトイレを見つけて、目隠しになっている壁をまわりこんだ。

 手を洗っただけで出ようとした時、オレの前に三、四人の少年たちが立ち塞がった。
 ─── え?

 なんか……剣呑な目付き。好奇心も混じってるのが見て取れる。
 なに、オレなんかした?
 目の前の、髪の毛ふわふわでちょっと上を向いた鼻に愛嬌がある少年が口を開いた。

「……オマエ、オーナーのなに?」
 はあ? なにって、……ナニ?
 ていうか、何でオレ知らないヒトたちにそんなこと訊かれなきゃなんねーの?

 少年たちが口々に友好的とは言いがたい声で言う。
「答えろよ」
「恋人? 愛人?」
「すっげキレーなカオ、触らしてよ」
 
「バッカお前ホンモノのコッチになったのかよ、こづかい稼ぎだろー」
「ちげーよ、バカ、女みてーなきッれーなツラしてっからさ……」
 ふわふわ髪の隣にいる目の細い奴が手を伸ばしてくる。

 その手を身体を引いてかわしたオレは眉間にしわを寄せた。……なんだこいつら。女みたい? フツウ、思ってても言わないんだぞ。
 
「うるせーぞ、遊びてーんなら後にしろよ」
 言いながら、オレに触ろうとした無遠慮な手を払ったのは、最初に声をかけて来たふわふわ髪のガキ。
「こっちはガチで訊いてんだ。……オーナーが連れてきたすげー美人てオマエだろ。どーゆー関係?」

「……怖っえー、シュウ」
「オーナーにお熱だもんねー」
「ちがーよ、オーナーのオカネにお熱なんだろ」

 シュウと呼ばれたふわふわ髪の後ろで、オレに触ろうとした奴とツレらしい奴がくすくすと笑う。
 シュウは眼光一発でそれを黙らせた。

「口きけねーの、オマエ。なんとか言えよ」
「あんたこそ臣のなに? オレがあのエロオヤジのなんかだとマズいわけ?」
 その瞬間、場がシーンとなった。

「……呼び捨てだ」
「臣、だって」
「呼び捨てなんかいけないんだぞ、オーナーとか、外だと臣さん、とか」
「えッおまえ外で会ったことあんの、オーナーと」
「……ないけどさー」

「うるさい」
 急に騒ぎ出したまわりの奴らを黙らせたのは、やっぱりシュウだった。一歩前に出て、オレにきつい視線を向ける。
「……オマエが今度のお気に入りってわけか。呼び捨てさせるってことは相当イカレてんな、オーナー。キレーな顔でケツ振ってカラダでたらしこんだのかよ?」
 
 ……なんだコイツ。言ってることがくだらな過ぎ。臣はオレにイカレてねーし、オレもたらしてねー。あくまで契約、シゴトと一緒だ。
 オレは背中を目隠しの壁に預け、腕を組んだ。

「だからなんだよ。アンタもたらしこんでみれば? 臣がイカレてくれるかどうか、判んねーけど」
 ふん、と鼻でせせら笑う。

 オレのいた施設は大きさの関係でわりと少人数だったけど、それでもイジメなんかはあった。元々わけありで親と暮らせない奴らばっかりだから、どうしてもそういうのは起きやすい。

 オレは、自分より小さいから、とか、立場が弱いから、とか、気に入らないから、とか、そういう理由にもならないようなことで他人を集団で攻撃する奴が、キライだ。その陰湿さに虫唾が走る。
 
 施設に入ったとき十一で、けっこう大きい方だったせいもあって、オレは小さい子を、─── 時には自分より年が上の奴も ─── 庇ったりした。庇えば、無論、次の標的はオレ。

 でもむざむざ標的にされるほどバカじゃない。廊下やらどこやらでボコられそうになる度に、返り討ちにしてやった。背中を取られなきゃたいがい切り抜けられる、と経験上知ってる。

「あのひと、趣味イイからアンタじゃ無理かもね」
「……だと、このやろうっ!」
 
 挑発するのもひとつの手。先に手を出した方が、負ける。ちゃんと管理する大人がいれば、の話だけど。
 胸倉を掴まれたオレはアタマに血が昇ったシュウに目を眇めた。

「……オレに傷つけたら、臣、超怒んじゃねーかな……?」
 管理する大人 ─── 臣はそう思ってないだろうけど ─── の影をちらつかせて、ハッタリをかます。

「~~~っ!!」
 シュウの怒りが伝わってくる。その背後では、少年たちがざわついていた。

「や……やめなよう、シュウ」 
「ヤベーよ、マジで……やばいって」
「オーナーにチクられたらどうすんだよ」
「出入り禁止になるよ、やめなよ……」
 
 口々に言うが、オレとシュウの間に入ろうとはしない。チッ、止めんならちゃんと止めろよな。まあ挑発したのオレの方だけどさ、……と思ったとき。

「─── あれ、なにしてんの、シュウ」
 場違いに明るい声。
 一人の少年が周りの連中をすり抜けてオレとシュウの側にやってきた。

「あっ、オーナーが連れてきた子?」
 オレを見て、微笑む少年の余りの邪気の無さに一瞬あっけに取られる。シュウに胸ぐら掴まれて今にもボコられそうなんだけど、オレ。
 

「……ナオ。来てたのかよ」
 その様子に毒気を抜かれたのかシュウはゆるゆるとオレを離す。ぼそぼそと言い訳がましい言葉を並べた。
 
「……こいつ、生意気なんだよ。だからさ」
「判ってるよ、オーナーには言わない。ここ固まってたら目立つよー?」
「ちッ……」

 シュウは軽く舌打ちしてオレを睨みながらもフロアに出て行く。他のガキたちもそれに追従して散っていった。
  
 あとに残った少年はオレを見て、にこり、と人懐こい笑みを浮かべた。 
   

  

   

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「きみの」最終話更新しました。

  

 「きみの手を引いて」最終話、更新しました。

 終わっ……終わりました……。顔文字&絵文字入れてもいいでしょうか。

 ぅぉぉぉーヽ(゚ω゚ )ノヽ( ゚ω゚)ノヽ(゚ω゚ )ノぅぉぉぉーヽ( ゚ω゚)ノヽ(゚ω゚ )ノ ぅぉぉぉー

 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 オワタ┗(^o^ )┓三

 

 ……でも、なんか終わった気がしません……。なんでだろう。

 きっと短編とかでいくらでも先が書けるような話だからでしょうか。クリスマスネタとか。ハルの誕生日ネタとか。

  あと、重くなりそうな養父との対決(?)とか。柚月とハルの今後を考えると避けては通れないこのネタはちょっと本気で考えてます……。

 あっ、番外編もあった……。だからか……。

   

 余談ですが、ブログに掲載した最終話は、小説家になろうサイト様に投稿した最終話よりエロ多めになってます。

 書きたかったから書いたんですが(下手なのに……)なけりゃなくてもいいえっちシーンだったので、なろうサイト様では大幅にカット。結果、エロは回想で三行だけという、読み手の皆様の想像力に期待、みたいなことになってます。

 自分のブログだから下手なエロ掲載してもいいよね~、とかそんな気持ちで載せてみたんですが、苦手な方はどうぞスルーして下さい……。ヾ(_ _*)ハンセイ・・・

  

   

 

きみの手を引いて:最終話

  

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 最終話

  

「好きだからしたいって思っただけだよ! なんだよあきらめるって! 脅迫するぐらいオレと寝たいくせに、なんでそんなこと言うんだよ!……オレだって柚月さんに触りたいって思ったから、……イヤじゃないから……っ」

 言われたことがすぐに理解出来ずに、柚月は涙の浮かんだハルの瞳を見つめるばかりだった。
「あきらめて欲しいから寝るってダレが言ったんだよ! オレは、ただ、柚月さんと、……柚月さんが、……」
 ハルの頬が見る間に赤くなっていく。瞬きと共に伝う涙を、Tシャツの袖で拭った。
 
「─── 柚月さんが好きだからしたいって思ったら、ダメなのかよ……っ」
「……は」
 ハル、と呼ぶ柚月の声が喉に絡む。

 血が逆流するのではないかと思うほど、心臓が脈打つ。

 ハルが気を使っているのだ、と以前は思っていた。自分の気持ちを知っているハルが、仕方なしに身体を差し出している、と。

 今度は、「諦める」と図らずも口に出してしまったその言葉尻を捉えたハルが、─── 一度だけ我慢すれば二度と身体を差し出さずに済む、と考えたのだ、と思った。

 ─── 違う、とハルの仕草が、声が、全身が、柚月に訴えかける。

 ハルが涙混じりで精一杯告げた言葉は、頑なに凍っていた柚月の心の壁を突き崩した。

 ─── 本当に?

 あれほど欲しかったハルの気持ちが、目の前に差し出された状況に柚月はうろたえる。

 ハルが、俺を。

「……だって……俺とだけは、金もらっても嫌だって……それに、俺……ひどいこと、して」
「……好きなひとと金で寝れるわけないだろっ……!」
 首筋も耳たぶも真っ赤に染めて、ハルは柚月と目を合わせようとはしない。

「どうでもいいヤツからは平気でふんだくれっけど、好きなひとから、……柚月さんから金取れるわけねーだろっ……柚月さんが欲しがってくれんなら、オレ、……ひどいこと、されたなんて思わねーのに……っ」
 
「……ハル」
 無意識に柚月はハルの腕を掴んだ。
 ハルは頭を振って、柚月の手を払いのけた。
「やだ !触んな!……柚月さんなんか大嫌いだっ!」

「ハル」
「こんなの……っどうせみっともないって思ってんだろ! オレばっかり好きで、触られたいって泣き喚いて、柚月さんはカッコよくオレの気持ちとか、心とかそんなの気にして、……」
「─── お前に嫌われてると思ってた。ずっと」

 払いのけられた手を伸ばし、柚月はもう一度ハルの腕を掴んで強引に引き寄せた。
 ハルはいやいやするように頭を横に振る。
「柚月さんなんかキライ、大嫌い!」

「俺は好きだ」
 もがくハルを腕の中に閉じ込めた柚月は、赤らんだその耳に囁く。
「……嫌われててもいい。お前が好きだ。……ミハル」
「……っ」

 ハルは目を閉じて柚月の肩に額を押し付けた。
「ズルいよっ……なんで今、……呼ぶんだよ……っ」
「ずっと呼びたかった。お前のこと、本名で、……成沢さんも呼ばない本名で、……独占欲だ」

 俺のほうがみっともない、と柚月はハルをきつく抱きしめる。
「……呼んだら駄目か? お前の嫌がることはしない」
「ダメじゃない、……」

 ハルの手がおずおずと柚月の背中に回される。
「……オレがイヤがっても、して、いいよ……」
 ミハル、と柚月の声が言う。

 目を瞑ったままハルは、柚月の唇が自分のそれに触れるのを許した。

  

  
  
  
  
  
  
  
 ─── 柚月の腕の中で、ハルはぽろぽろと涙をこぼした。
「も……、や、だ、……」
「……ミハル」

 優しい柚月の声も耳に届かず、頭を横に振る。
「……オレばっか、こんなっ……恥ずかしい、から、ヤだ……っ」

 ……好きだと囁くと、頷きながら小さく「オレも、好き」と応えるハルに柚月はそれだけでは足らず、何度も彼を絶頂に追い込み、身体で心を確かめる行動に出た。

 それはハルにひどい羞恥を覚えさせるほど執拗で、ついに泣かせてしまっていた。
「……オレ、ほんとはこんな、……イったりしないんだよ、……我慢、して……いつも、……なのに」

 ハルはうわごとのように呟きながら柚月にしがみついた。顔を見られたくない。
「……柚月さんだから、ダメなんだ……柚月さんが、オレの、中にいるって思っただけで、……ダメ、なんだよ……」
 ひっく、としゃくり上げる。 

「我慢したいのに……っ、は、恥ずかしいから、……オレだけ、いっぱいイって、みっともないから、……ヤラしいって柚月さんに思われたらイヤだから、……だから、」
「いやらしいなんて思ってない、……かわいい」
 ハルはイヤイヤと真っ赤になっている顔を横に振った。

「ウソだっ……へんな声出して、自分だけイって、ヤラしいって思ってる、ぜったいっ……もうやだ……」
 泣きじゃくるハルの唇を強引に奪う。汗に濡れ、桜色に染まっている身体を撫でさすって感情の発作を宥めた。

 そうしている内に落ち着いてきたハルはため息と共に、柚月に懇願した。
「……オレのこと構わなくてイイから、柚月さんもイって……?痛くしてもいいから……」
「ミハル、……」
 柚月は、自分の身体の下で震えながら何度も達するハルが愛しくてたまらなかった。その上、痛くしてもいい、などと囁かれ、彼の中に埋め込んだままだった自身を突き上げたい欲求に駆られる。

「……お前のイくとこ、もっと見たい……」
 熱っぽく言いながら柚月は、再びハルの抜き身に手を添え、自身の抽挿を始める。
 ハルは堪えきれずに涙に濡れた声を洩らした。強すぎる快楽を与える柚月から逃れようともがく。

「ああ……っあ、やっ……あ……っ」
「……気持ち、いいか……?」
 抗うハルの中のその場所に擦りつけ、指先で彼のものを弄ぶ。
 快楽に泣き、喘ぐ彼が見たくて行為に夢中になっていた柚月も限界を迎えようとしていた。
「ミハル……っ」

 抱きしめて、何度も深く身体を繋げる。
 ハルが達して意識を失ったのと同時に、柚月も彼の身体の上に吐精していた。

  

  
  
  

 ハルはふっと目を覚ました。薄暗い中、柚月のベッドの上だと気付き、彼を捜す。

 柚月はすぐそばにいた。
 ジャージを身に付けた彼は、毛布でくるんだハルの身体を緩く抱きしめ、その髪の毛を指で梳いていた。

「……ゆ、づき、さ」
 声が掠れる。喉がからからだった。
 気付いた柚月は起き上がり、「待ってろ」とハルの頭を撫でて部屋を出て行く。

「……ほら、水」
「ん……」

 すぐに戻ってきた柚月から手渡されたグラスにうつ伏せの姿勢で口を付ける。
「ちゃんと起き上がって飲め。こぼれる」
「……だって、ダルいから起きたくねーんだもん、……」

 口を尖らせて、注意されたことに不満そうな顔を見せるハルに、柚月は咳払いをした。
 ─── 確かにそれは自分が悪かった、かもしれない。

 本当にハルが自分を好いてくれているのか知りたかった。気持ちを確かめたくて、嫌がってもやめなくていい、とハルに言われたので、忠実にそうした。
 ハルが自分の行為に応えてくれればくれるほど、好いてくれているような気がした。

「……そんなに、だるくなるほどじゃなかったろう」
「ダルくなるほどだよ! 自覚ねえの!?」
 ハルは噛み付きながらも少し顔を赤らめて、柚月が自分にした行為を思い返した。─── 一度目の、あの時とは何もかも違っていた。

 柚月は、優しかった。ほとんど絶え間なくハルの名を、本当の名を呼び、好きだと繰り返した。緊張から強張るハルの身体にゆっくり手の平を這わせ、至るところを指と舌で解す。相手が柚月だ、と言うだけで何度もはしたなく絶頂を迎えてしまうのが恥ずかしくて「もうやだ」と泣き出したハルを、宥め、口付けて、柚月はまたその中に身を沈めた。

「……嫌がってもしていいって言ったろう?」
「……言ったよっ。言ったけどさー」
 
 口の中でもごもごと呟くハルの傍らに柚月は腰掛けた。目を細めてハルの頭を覆う毛布を見つめる。
 ハルは手を伸ばして、グラスをサイドテーブルに置いた。

「─── あのさ、柚月さん」
「なんだ?」
 
「……もう、してくれねーの?」
 柚月は虚を突かれた。─── だるいだのなんだの文句を言うくせに、もう一回?と一瞬思う。
 そういう意味ではないとすぐに気付いた。

「……いっかい、したらあきらめるって言ってたじゃん。……柚月さんが一回だけでいいって言うんなら、……もうそれで、したくなくなったんなら、しょうがないけどさー、……」
 うつ伏せに横たわるハルの腰のそばに座る柚月からは、その表情は見えない。けれど不安そうな声音は、充分、彼の心情を伝えた。

「……いつか、柚月さんがしたくなった時でいいんだけどさ、……もし、また、オレと、あの……オレのこと、抱いてもイイって思ったらさ、あの……して、くれたらいいなって、オレ、……」
 柚月はハルの頭を覆う毛布を肩の辺りまで引き剥がした。いきなりのその仕草にハルは驚き、柚月を振り仰ぐ。

「あ……っ、ウソ! ウソだってっ、柚月さんがしたくないならしなくていいよ!」
 柚月を怒らせた、とハルは思った。ねだるようなことを言う自分が、癇に障ったのだ、と。
 
 仰向けになり、ベッドに手をついて半分身体を起こしたハルは怯えたように柚月を見上げる。
「ごめん、ごめんって、もうウザいこと言わない、してくれなくていいからさ、あの、……オレ」
 
 おろおろとうろたえながら失言を取り繕うとするハルを、柚月は愛しく見つめた。
 ─── 柚月にとっては失言などではなかった。
「……してくれたらいいって?」

 ハルの上に圧し掛かる。その身体をくるんでいる毛布を取り払った。
 何も身に着けていなかったハルが、毛布を取り返そうと伸ばした手を柚月は捉えた。
 ベッドに押し付けて、動きを封じる。

 泣かせたせいで、赤く腫れた瞼にキスを落とす。頬から首筋まで唇を這わせ、耳たぶを口に含んだ。
「……っ、い、今じゃないよっ……」
「判ってる」
 
 困ったように身を捩るハルに囁いた。
「……俺が言おうと思ってた。……俺の誕生日じゃなくても、明日も、明後日も、その次の日も、ずっと、……お前に触っていいか、って」
 
 その言葉を聞いたハルは、みるみる内に目を瞠り、潤ませた。─── 柚月がいくらベッドの中で「好きだ」と囁いてくれても、自分のほうが彼を好きで、弱い立場だと思っていた。もう一度、身を任せたら柚月は自分に飽きて二度と触れてくれなくなるような気がしていた。

 柚月も自分と同じように、自分の事を思ってくれていた。
 そのことを知り、涙腺が緩む。嬉しくて泣きそうになることなんて、ないと思っていた。

 瞳が潤んでいるのを悟られないように、ハルは強がる。
「わ……判ってんだったらへんなとこ触んのやめてよっ……」

 柚月は弱々しく抗うハルのこめかみに唇を落とした。ジャージを突き上げる欲望の兆しを彼の裸の足に押し付ける。
 
 直接触れたい、と暗に示唆する柚月にハルはびく、と身体を震わせた。
 あえかな息を吐くその唇を柚月は自分の唇で塞ぐ。

「ん……っ」
 柚月の大きな手がくまなくハルの身体中を這う。敏感なところを撫でられ、思わず声を上げるハルに柚月は目を細めた。

「……さっきの返事、聞かせてくれ。……ずっとそばにいてくれるか?」

「……うん」
「……もっと触りたい」
 耳元で囁く柚月の掠れた声はハルの熱を煽る。

 それでも二度も素直に頷けず、はぐらかすようにうつ伏せになったハルは赤い顔を隠して言った。
「……明日、すごい美味い肉じゃが作ってくれたら、イイよ……」

 照れ隠しで条件を付けるハルに、柚月は笑みを深める。
「……今までで一番美味いやつ作ってやる」

 ……明日は、じゃがいもと牛肉と本みりん買ってこないと、と考えながらハルは、その幸福に身も心も投げ出した。

 

                             end.

 

 

 ★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

 長く、そしてじれったい話にここまでお付き合いくださいましてありがとうございました。

 拍手、コメント、投票、と読んで下さる方の応援で書き上げることが出来ました。

 感謝の気持ちでいっぱいです。

 本当にありがとうございました。m(_ _)m

           八月金魚 拝

 
 
  

    押して頂けると嬉しいです    

      目次ありふれた、そして特別な。 <続編です> 

  

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好きな本:1

   

       好きな本 一覧ネタバレ注意!

  

彼は花園で夢を見る (Wings comics) 彼は花園で夢を見る (Wings comics)

著者:よしなが ふみ
販売元:新書館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

  

 久々に読み返しました、これ……泣ける。

 収録されてる話はどれも男爵様(領主様)とファルハットがそれぞれ絡んだ話ですが、中でも本のタイトルになっている「彼は花園で夢を見る」は秀逸。

 ラウリーヌが飛び降りるまでの情動、感情の動きをもし小説という媒体で、言葉で表さなければならないとしたら一体どれほどの行数を費やすことか……。

 読むたびに、マンガはすごい、たった1カットの表情だけでその情動を表現する、と感服します。

 

  

さくらん (イブニングKCDX (1829)) さくらん (イブニングKCDX (1829))

著者:安野 モヨコ
販売元:講談社
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 もうこれはずっと前、絶版状態だった(と思う)のをブックオフでたまたま見つけて手に入れました。今はどこの本屋に行ってもありますね。

 映画ではきよ葉(日暮)と清次が手に手を取って逃げちゃったけど、マンガではそこまで触れてない。けれどそれを充分予感させる雰囲気です。

 女女してて、とても迫力があって好きな話です。

   

 

ヘルタースケルター (Feelコミックス) ヘルタースケルター (Feelコミックス)

著者:岡崎 京子
販売元:祥伝社
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 女性、というものの物凄さを痛感します。むき出しの凄惨さというか。

 最初読んだとき、魂を抉られたようになって二日間ほど何度も何度も読み返しました。多分未だに消化しきれてません。なんか……すごい話です。

 to be continuedになってますが、もうこれだけで凄いので続きは……どうなんでしょう。

 あったら読みたいです。

 

  

ファントム〈上〉 (扶桑社ミステリー) ファントム〈上〉 (扶桑社ミステリー)

著者:スーザン ケイ
販売元:扶桑社
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ファントム〈下〉 (扶桑社ミステリー) ファントム〈下〉 (扶桑社ミステリー)

著者:スーザン ケイ
販売元:扶桑社
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 「オペラ座の怪人」です。

 怪人=エリックの生い立ちからオペラ座に住み着くまでが克明に創造されていて、とても読み応えがあります。

 圧巻はやはりクリスティーヌがラウールを助ける為に「あなたと結婚します」とエリックに言うシーン。

 好きな人の為に身を投げ出そうとしているクリスティーヌを目の当たりにしたエリックの心情はいかばかりか……。クリスティーヌやラウールより断然エリックの方に感情移入します。

 またエリックが可哀想な奴なんだ……。

  

              好きな本: 2   

帰ってきました。

 

 昨日夜中に帰ってきました。

 疲れました……いつも車で帰省するのですが、今回は東名高速の渋滞がハンパなかったです(@Д@;。静岡にずいぶん滞在しました……。

 ですが、時間がないのでノートにメモした分を手直ししながら、なろうサイト様のフォームに打ちました。

 どうだろう、コレで……。もういいか……。

 明日疲れが取れてからもう一回考えた方がいいかも……。

  

   

「きみの」四十六話更新しました。

  

 「きみの手を引いて」四十六話更新しました。

 残すところあと1話。大方出来てるとは言え、書き直すかも……。

 なんだろう、なんかアレだな……。(;´д`)トホホ…

 

 明日から連休の間、旦那さんの実家に帰省するので、(勝手に決めてる)月曜の番外編の更新はお休みです。m(_ _)m

 向こうでよく推敲しようと思います、最終話……。大学ノートに手書きで。φ(・ω・ )メモメモ

 

 

 

きみの手を引いて:46

  

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 第四十六話

 

  
 それから数日後。
 二人は何の進展もないまま、柚月の誕生日前夜を迎えていた。
 
「─── ねー、なにが欲しいんだよー」
 ハルもその現状を手をこまねいてただ見ていた訳ではない。自分の気持ちを柚月にアピールするべく、今もこうして彼の欲しいものを割り出そうと必死だった。

「よっし判った! 三万五千まで出す! これ以上はほんと、マジ無理」
「……金額の問題じゃない」

 頬を引きつらせてプレゼントの値段の上限を上げるハルに柚月は苦笑する。
「何もいらないって何度も言ってるだろう」

 風呂上がりでパジャマ姿のハルは柚月にとって目の毒だった。なるべく早く自室へ篭りたかったが、自分に贈り物をしたいと食い下がってくるハルをないがしろにするわけにもいかない。
 仕方なく、目を逸らしながらも相手をしていた。

「お前が働いて手にした金なんだから、お前が好きに使え」
「だから好きに使おうと思って訊いてるんじゃんか。柚月さんが欲しいもの、あげたい」
 ハルは唇を尖らせて柚月に上目遣いを向けた。

 ─── 自分の手を引いて、柚月がこの部屋まで連れ帰ってくれたあの夜。
 柚月のものになるのだ、と思った。いや、すでに一度は関係があるのだから、この目の前にいる、自分に見つめられると困ったように目を伏せてしまう大きい図体のひとのものだ、と言ってもいいと思う。

 なのに、柚月は。
 あれから一度も自分に触れようとはしない。あの夜、帰って来てからだってすぐに手を離してしまい、風呂に入ってなかった自分を洗面所に押し込み、「俺は寝る」と宣言して自室に引き上げてしまった。

 柚月の気持ちが判らなかった。自分のものだ、と思ってくれているのか、それとも。
 それとも?

 ……判らないけど、柚月さんのそばにいられるだけでイイや、とハルは不満に目をつぶって自分に言い聞かせる。
「なんかあるだろー、欲しいものー、教えてよう」
 
「……そうだな、じゃあ」
「えっなになに、教えてくれんの?」
「じゃがいもと牛肉の切り落とし買って来てくれ。明日肉じゃがにする」
「やった、柚月さんの肉じゃがおいしーんだよねー、あんまり甘くなくてさ」
「砂糖入れないでみりんだけだからな。あ、ついでに本みりんも頼む」
「判ったー、……ってそうじゃなーいっ!!」

 肉じゃがに釣られて一瞬にこにこと笑ったハルは、はッと我に返った。
「そうじゃねーだろ!? オレ、買出しに行きたいんじゃないよっ!」
「じゃがいもと牛肉と本みりん。大丈夫、立派なプレゼントだ」
「どう聞いたって子供のおつかいだよ!」

 ハルは情けなくなって俯いた。─── そんなに柚月は自分からものを貰うのが嫌なのだろうか。年下だから? 子供だから?……下心があるから?
(プレゼントあげるからオレと寝て、とか言わないのに)
 ほんとは言いたいけど。いや、みっともないから我慢、我慢……。 

「……なんでもいいんだよ、……時計、とか、靴、とかさ……」
「……」
 萎れた様子のハルに柚月も気が差してくる。……ずっとハルをはぐらかしていた。

 本当は柚月には『欲しいもの』があった。しかし、それを口にしたところでハルを困らせるだけだ、と判っていたので言わずにいた。
 ─── けれど、そんなに知りたいのなら。
 
「─── なんでもいいのか?」
「うんっ」
 柚月の声にハルは顔を上げて、笑みを見せる。

「……一度だけ……」
「え?」
 柚月の声はわざとのように小さくて、聞き取れない。ハルは柚月の口元に耳を寄せた。
 
「……一度だけでいい。俺と、……寝て」
 押し殺した柚月の言葉にハルは驚き、聞き違いか、とまじまじと彼の顔を見る。

 聞き違いではなかった。
「い……一度だけでいいんだ、この前みたいじゃなくて、あの、……嫌がらないで……抵抗、しないで……俺と……」
「────」
 ハルは絶句して、長い睫毛に縁取られた大きな目を瞬かせた。

 呆然とするハルの様子に、馬鹿なことを言った、と柚月は焦った。拒まれるのが怖くて、次から次に思ってもない言葉が口をつく。
「……諦めるから……一度、だけ、嫌がらないでくれたら、……諦めるから、……だから、あの……」

「……」
 自分を見つめるばかりのハルの視線に、柚月の頬が赤らんでくる。
 ついに真っ赤になった柚月は額に手をあて、頭を横に振った。
「……ごめん」

「……」
「すまなかった。……自分でも馬鹿なこと言ってるって判ってる。諦めるからやらせろ、なんて、脅迫と変わらない。最低だ。……本当にどうしようもない、……」
 ひどい自己嫌悪に駆られ、柚月はうな垂れた。

 ずっとハルに触れたかった。抱きしめたかった。その髪に、頬に、唇に触れたかった。
 けれどハルの気持ちは?
 和臣に振られ、彼を諦めるしかないとしても、無理やりに欲望を押し付けて身体を奪った自分がその心に入り込めるとは到底思わない。

 時間が必要だ、と判っていた。せめて、ハルが和臣を忘れるまで。─── 出来ることなら、自分の犯した罪を許してもらえるまで。
 待てると思っていた。ハルの気持ちが少しでも自分に傾いて、触れても嫌がらないでくれるのを、待つつもりだった。

 ─── 間近で何度も『欲しいもの』を訊かれて、つい心の枷が外れた。本音が出た。
 もしかしたらハルが頷いてくれるかもしれない、と期待してしまった。
 
 未だにハルを欲しがっていることを知られた。脅迫紛いのことをしてまで、欲しがっていることを。
「……っ」
 ハルの視線に晒されているのが辛い。柚月は自分の部屋に逃げ込むべく、ハルに背を向けた。

「柚月さんっ」
 ハルの掠れた声が柚月の背中にぶつかる。ドアノブを握った柚月の手に力がこもった。
 そのまま柚月はドアを開けることも、ハルを振り返ることも出来ない。

 まるで動けなくなってしまった柚月にハルは近づき、─── ドアと彼の間に身体を滑り込ませた。
 柚月を抱きしめる。
「は、……」

 唇にハルの乾ききっていない髪の毛が触れる。柚月はハルの身体の感触と体温、湯上がりの香りに一瞬理性を飛ばしかけた。
 その、理性の尻尾にしがみ付いて手繰り寄せる。

「……やめろ」
「……なんで?」
 ハルの肩を掴んで引き離した。

 それでもドアと柚月に挟まれたまま、切ない目付きでハルは見上げる。
「……オレ、いいよ。イヤじゃない。……嫌がったりしない。今度は、大人しくする」
 ハルの声は緊張から上擦っていた。─── 本当は恥ずかしかった。柚月にあられもない姿を見られるのも、甘ったれた声を聞かれるのも。

 それでも、柚月が欲しがってくれるのなら。
 ハルは柚月の唇に自分のそれを近づけた。
「やめろ……っ」

 柚月はハルの腕を掴み、自分とドアの間から引っ張り出した。ハルから目を逸らしたまま自室に逃げ込む。
 柚月の後を追い、ハルは彼の部屋に足を踏み入れた。
「入ってくるな」

 硬い柚月の声にハルの身体は、びくん、と竦む。
「……」
 その拒絶の言葉はハルを不安にさせる。─── 柚月の機嫌を損ねた、と思った。

 優しい声が聞きたくて、ハルは言葉を重ねた。
「……オレ……イヤじゃないから、あの……」

「─── そんなに俺に諦めて欲しいか?」

 柚月の部屋は暗かった。リビングからの唯一の光源がハルの影を作り、柚月の背中を照らす。
 その背中が低く続けた。
「一度だけ我慢して、……一度だけ、俺の好きにさせて、諦めさせたいのか?」
 ハルはかぶりを振り、柚月に見えないことに気付いて声に出した。

「違う、……オレ」
 顔に血が昇ってくる。柚月に触れられたい、と恥ずかしくて言えない。この間よりみっともない、言葉での直接的な誘い方になってしまう。

 柚月がふっと笑う気配がした。
「違う? 何が違うんだ、……俺が諦めるなら、一度だけ寝てやってもいいと思ったんだろう。少しの間だけ我慢すればいいって……、」

「ちがう……っ」
 ハルは頭を横に振って、柚月の背中に近づく。躊躇いながら伸ばされた手は触れる直前、振り返った柚月に払われた。

「─── じゃあ他にどんな理由があるんだ!」
「柚月さ……」
「金もらっても嫌なんだろう……っ! ずっとここにいるなら諦めさせた方が都合がいいからな!! 俺を誘う理由が他にあるか!? あるんなら言ってみろ!」

 怒鳴られたハルは血の気の引いた顔で柚月を見つめる。─── その茶色い透明な瞳に涙が浮かんだ。俯いて、振り払われた手をぎゅっと握る。
「あ……」
 そのハルの仕草に柚月は胸を突かれ、我に返った。
 
「わ……悪かった……」
 泣かせるつもりはなかった。ただ、抱きついてきたハルの身体が強張っていて。
 自分に触れなくてはならない緊張から声を掠れさせるハルが痛々しくて。
 ─── そうさせた自分に腹が立って。

 柚月は伏せた目を片手で覆った。
「……諦めて、欲しいんだろう? よく、判ったから、……無理しなくていい。……諦める。二度とおかしな目で見たりしない、……」
 言いながら、嘘だと判っていた。諦めることなど出来はしない。
 ただ、ハルを安心させたくて、視線を上げた柚月は無理やり笑みを作った。
 
「……プレゼント、頼むな。最高に美味い肉じゃが作ってやるから」
「……だろ」
「え?」

 俯いたままのハルの声が聞き取れない。柚月が覗き込もうとすると、ハルは顔を上げて彼をきっと睨みつける。
「好きだからに決まってんだろ! バカッ!」
 ─── その目の縁に溜まった涙は今にもこぼれそうに揺れた。

 

 

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