« 好きな本:1 | トップページ | 「きみの」最終話更新しました。 »

きみの手を引いて:最終話

  

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 最終話

  

「好きだからしたいって思っただけだよ! なんだよあきらめるって! 脅迫するぐらいオレと寝たいくせに、なんでそんなこと言うんだよ!……オレだって柚月さんに触りたいって思ったから、……イヤじゃないから……っ」

 言われたことがすぐに理解出来ずに、柚月は涙の浮かんだハルの瞳を見つめるばかりだった。
「あきらめて欲しいから寝るってダレが言ったんだよ! オレは、ただ、柚月さんと、……柚月さんが、……」
 ハルの頬が見る間に赤くなっていく。瞬きと共に伝う涙を、Tシャツの袖で拭った。
 
「─── 柚月さんが好きだからしたいって思ったら、ダメなのかよ……っ」
「……は」
 ハル、と呼ぶ柚月の声が喉に絡む。

 血が逆流するのではないかと思うほど、心臓が脈打つ。

 ハルが気を使っているのだ、と以前は思っていた。自分の気持ちを知っているハルが、仕方なしに身体を差し出している、と。

 今度は、「諦める」と図らずも口に出してしまったその言葉尻を捉えたハルが、─── 一度だけ我慢すれば二度と身体を差し出さずに済む、と考えたのだ、と思った。

 ─── 違う、とハルの仕草が、声が、全身が、柚月に訴えかける。

 ハルが涙混じりで精一杯告げた言葉は、頑なに凍っていた柚月の心の壁を突き崩した。

 ─── 本当に?

 あれほど欲しかったハルの気持ちが、目の前に差し出された状況に柚月はうろたえる。

 ハルが、俺を。

「……だって……俺とだけは、金もらっても嫌だって……それに、俺……ひどいこと、して」
「……好きなひとと金で寝れるわけないだろっ……!」
 首筋も耳たぶも真っ赤に染めて、ハルは柚月と目を合わせようとはしない。

「どうでもいいヤツからは平気でふんだくれっけど、好きなひとから、……柚月さんから金取れるわけねーだろっ……柚月さんが欲しがってくれんなら、オレ、……ひどいこと、されたなんて思わねーのに……っ」
 
「……ハル」
 無意識に柚月はハルの腕を掴んだ。
 ハルは頭を振って、柚月の手を払いのけた。
「やだ !触んな!……柚月さんなんか大嫌いだっ!」

「ハル」
「こんなの……っどうせみっともないって思ってんだろ! オレばっかり好きで、触られたいって泣き喚いて、柚月さんはカッコよくオレの気持ちとか、心とかそんなの気にして、……」
「─── お前に嫌われてると思ってた。ずっと」

 払いのけられた手を伸ばし、柚月はもう一度ハルの腕を掴んで強引に引き寄せた。
 ハルはいやいやするように頭を横に振る。
「柚月さんなんかキライ、大嫌い!」

「俺は好きだ」
 もがくハルを腕の中に閉じ込めた柚月は、赤らんだその耳に囁く。
「……嫌われててもいい。お前が好きだ。……ミハル」
「……っ」

 ハルは目を閉じて柚月の肩に額を押し付けた。
「ズルいよっ……なんで今、……呼ぶんだよ……っ」
「ずっと呼びたかった。お前のこと、本名で、……成沢さんも呼ばない本名で、……独占欲だ」

 俺のほうがみっともない、と柚月はハルをきつく抱きしめる。
「……呼んだら駄目か? お前の嫌がることはしない」
「ダメじゃない、……」

 ハルの手がおずおずと柚月の背中に回される。
「……オレがイヤがっても、して、いいよ……」
 ミハル、と柚月の声が言う。

 目を瞑ったままハルは、柚月の唇が自分のそれに触れるのを許した。

  

  
  
  
  
  
  
  
 ─── 柚月の腕の中で、ハルはぽろぽろと涙をこぼした。
「も……、や、だ、……」
「……ミハル」

 優しい柚月の声も耳に届かず、頭を横に振る。
「……オレばっか、こんなっ……恥ずかしい、から、ヤだ……っ」

 ……好きだと囁くと、頷きながら小さく「オレも、好き」と応えるハルに柚月はそれだけでは足らず、何度も彼を絶頂に追い込み、身体で心を確かめる行動に出た。

 それはハルにひどい羞恥を覚えさせるほど執拗で、ついに泣かせてしまっていた。
「……オレ、ほんとはこんな、……イったりしないんだよ、……我慢、して……いつも、……なのに」

 ハルはうわごとのように呟きながら柚月にしがみついた。顔を見られたくない。
「……柚月さんだから、ダメなんだ……柚月さんが、オレの、中にいるって思っただけで、……ダメ、なんだよ……」
 ひっく、としゃくり上げる。 

「我慢したいのに……っ、は、恥ずかしいから、……オレだけ、いっぱいイって、みっともないから、……ヤラしいって柚月さんに思われたらイヤだから、……だから、」
「いやらしいなんて思ってない、……かわいい」
 ハルはイヤイヤと真っ赤になっている顔を横に振った。

「ウソだっ……へんな声出して、自分だけイって、ヤラしいって思ってる、ぜったいっ……もうやだ……」
 泣きじゃくるハルの唇を強引に奪う。汗に濡れ、桜色に染まっている身体を撫でさすって感情の発作を宥めた。

 そうしている内に落ち着いてきたハルはため息と共に、柚月に懇願した。
「……オレのこと構わなくてイイから、柚月さんもイって……?痛くしてもいいから……」
「ミハル、……」
 柚月は、自分の身体の下で震えながら何度も達するハルが愛しくてたまらなかった。その上、痛くしてもいい、などと囁かれ、彼の中に埋め込んだままだった自身を突き上げたい欲求に駆られる。

「……お前のイくとこ、もっと見たい……」
 熱っぽく言いながら柚月は、再びハルの抜き身に手を添え、自身の抽挿を始める。
 ハルは堪えきれずに涙に濡れた声を洩らした。強すぎる快楽を与える柚月から逃れようともがく。

「ああ……っあ、やっ……あ……っ」
「……気持ち、いいか……?」
 抗うハルの中のその場所に擦りつけ、指先で彼のものを弄ぶ。
 快楽に泣き、喘ぐ彼が見たくて行為に夢中になっていた柚月も限界を迎えようとしていた。
「ミハル……っ」

 抱きしめて、何度も深く身体を繋げる。
 ハルが達して意識を失ったのと同時に、柚月も彼の身体の上に吐精していた。

  

  
  
  

 ハルはふっと目を覚ました。薄暗い中、柚月のベッドの上だと気付き、彼を捜す。

 柚月はすぐそばにいた。
 ジャージを身に付けた彼は、毛布でくるんだハルの身体を緩く抱きしめ、その髪の毛を指で梳いていた。

「……ゆ、づき、さ」
 声が掠れる。喉がからからだった。
 気付いた柚月は起き上がり、「待ってろ」とハルの頭を撫でて部屋を出て行く。

「……ほら、水」
「ん……」

 すぐに戻ってきた柚月から手渡されたグラスにうつ伏せの姿勢で口を付ける。
「ちゃんと起き上がって飲め。こぼれる」
「……だって、ダルいから起きたくねーんだもん、……」

 口を尖らせて、注意されたことに不満そうな顔を見せるハルに、柚月は咳払いをした。
 ─── 確かにそれは自分が悪かった、かもしれない。

 本当にハルが自分を好いてくれているのか知りたかった。気持ちを確かめたくて、嫌がってもやめなくていい、とハルに言われたので、忠実にそうした。
 ハルが自分の行為に応えてくれればくれるほど、好いてくれているような気がした。

「……そんなに、だるくなるほどじゃなかったろう」
「ダルくなるほどだよ! 自覚ねえの!?」
 ハルは噛み付きながらも少し顔を赤らめて、柚月が自分にした行為を思い返した。─── 一度目の、あの時とは何もかも違っていた。

 柚月は、優しかった。ほとんど絶え間なくハルの名を、本当の名を呼び、好きだと繰り返した。緊張から強張るハルの身体にゆっくり手の平を這わせ、至るところを指と舌で解す。相手が柚月だ、と言うだけで何度もはしたなく絶頂を迎えてしまうのが恥ずかしくて「もうやだ」と泣き出したハルを、宥め、口付けて、柚月はまたその中に身を沈めた。

「……嫌がってもしていいって言ったろう?」
「……言ったよっ。言ったけどさー」
 
 口の中でもごもごと呟くハルの傍らに柚月は腰掛けた。目を細めてハルの頭を覆う毛布を見つめる。
 ハルは手を伸ばして、グラスをサイドテーブルに置いた。

「─── あのさ、柚月さん」
「なんだ?」
 
「……もう、してくれねーの?」
 柚月は虚を突かれた。─── だるいだのなんだの文句を言うくせに、もう一回?と一瞬思う。
 そういう意味ではないとすぐに気付いた。

「……いっかい、したらあきらめるって言ってたじゃん。……柚月さんが一回だけでいいって言うんなら、……もうそれで、したくなくなったんなら、しょうがないけどさー、……」
 うつ伏せに横たわるハルの腰のそばに座る柚月からは、その表情は見えない。けれど不安そうな声音は、充分、彼の心情を伝えた。

「……いつか、柚月さんがしたくなった時でいいんだけどさ、……もし、また、オレと、あの……オレのこと、抱いてもイイって思ったらさ、あの……して、くれたらいいなって、オレ、……」
 柚月はハルの頭を覆う毛布を肩の辺りまで引き剥がした。いきなりのその仕草にハルは驚き、柚月を振り仰ぐ。

「あ……っ、ウソ! ウソだってっ、柚月さんがしたくないならしなくていいよ!」
 柚月を怒らせた、とハルは思った。ねだるようなことを言う自分が、癇に障ったのだ、と。
 
 仰向けになり、ベッドに手をついて半分身体を起こしたハルは怯えたように柚月を見上げる。
「ごめん、ごめんって、もうウザいこと言わない、してくれなくていいからさ、あの、……オレ」
 
 おろおろとうろたえながら失言を取り繕うとするハルを、柚月は愛しく見つめた。
 ─── 柚月にとっては失言などではなかった。
「……してくれたらいいって?」

 ハルの上に圧し掛かる。その身体をくるんでいる毛布を取り払った。
 何も身に着けていなかったハルが、毛布を取り返そうと伸ばした手を柚月は捉えた。
 ベッドに押し付けて、動きを封じる。

 泣かせたせいで、赤く腫れた瞼にキスを落とす。頬から首筋まで唇を這わせ、耳たぶを口に含んだ。
「……っ、い、今じゃないよっ……」
「判ってる」
 
 困ったように身を捩るハルに囁いた。
「……俺が言おうと思ってた。……俺の誕生日じゃなくても、明日も、明後日も、その次の日も、ずっと、……お前に触っていいか、って」
 
 その言葉を聞いたハルは、みるみる内に目を瞠り、潤ませた。─── 柚月がいくらベッドの中で「好きだ」と囁いてくれても、自分のほうが彼を好きで、弱い立場だと思っていた。もう一度、身を任せたら柚月は自分に飽きて二度と触れてくれなくなるような気がしていた。

 柚月も自分と同じように、自分の事を思ってくれていた。
 そのことを知り、涙腺が緩む。嬉しくて泣きそうになることなんて、ないと思っていた。

 瞳が潤んでいるのを悟られないように、ハルは強がる。
「わ……判ってんだったらへんなとこ触んのやめてよっ……」

 柚月は弱々しく抗うハルのこめかみに唇を落とした。ジャージを突き上げる欲望の兆しを彼の裸の足に押し付ける。
 
 直接触れたい、と暗に示唆する柚月にハルはびく、と身体を震わせた。
 あえかな息を吐くその唇を柚月は自分の唇で塞ぐ。

「ん……っ」
 柚月の大きな手がくまなくハルの身体中を這う。敏感なところを撫でられ、思わず声を上げるハルに柚月は目を細めた。

「……さっきの返事、聞かせてくれ。……ずっとそばにいてくれるか?」

「……うん」
「……もっと触りたい」
 耳元で囁く柚月の掠れた声はハルの熱を煽る。

 それでも二度も素直に頷けず、はぐらかすようにうつ伏せになったハルは赤い顔を隠して言った。
「……明日、すごい美味い肉じゃが作ってくれたら、イイよ……」

 照れ隠しで条件を付けるハルに、柚月は笑みを深める。
「……今までで一番美味いやつ作ってやる」

 ……明日は、じゃがいもと牛肉と本みりん買ってこないと、と考えながらハルは、その幸福に身も心も投げ出した。

 

                             end.

 

 

 ★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

 長く、そしてじれったい話にここまでお付き合いくださいましてありがとうございました。

 拍手、コメント、投票、と読んで下さる方の応援で書き上げることが出来ました。

 感謝の気持ちでいっぱいです。

 本当にありがとうございました。m(_ _)m

           八月金魚 拝

 
 
  

    押して頂けると嬉しいです    

      目次ありふれた、そして特別な。 <続編です> 

  

   *投票していただけると励みになります。

     ←ネット小説ランキングの人気投票です。

   にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
   にほんブログ村  ←クリックすると投票になります。

    ←クリックすると投票になります。

« 好きな本:1 | トップページ | 「きみの」最終話更新しました。 »

コメント

こんにちは。
こちらへは初めて来させて頂きました。
『きみの手を引いて』、一昨日より一気に拝読させて頂きました^^
素晴らしいです! よくぞここまで書き上げられました!
私、おじさんですが読み入ってしまいました。いえ、引き込まれてしまいました。
素直になれないもどかしさ、痛いほど伝わってくる優しさ、共に純粋すぎるが故の心の表れのように 私、ELE-KIDは感じました。表現が下手でうまく言えませんが、最後に二人の心が重なった時、この二人に「よかったな」て呼びかけた自分がいました。
素晴らしき、良き作品をありがとうございました!
他の作品も楽しみに拝読させて頂きますねo(*^▽^*)o
 
八月>コメントありがとうございます。IP・広場ではいつもキラリ、ポチっと、ありがとうございます(*^-^) ブログにお越し下さって、まさかコメントを残して頂けるとは思ってもおらず…もしかしたら奥様では? と思ってしまったくらい(^-^;) うちは男子禁制ではありませんが、殿方にはあんまり向かないんじゃないかなという自覚があるのでモジモジ(。_。*)))
そんな八月の忸怩たる気持ちは置いといて、思いもかけずお褒めの言葉、大変嬉しいです。ヽ(´▽`)/
ふたりの心情を、優しさから起こるすれ違いをよく判って下さって感激しました。
いえ…本当に、ELE-KIDさんに読んで頂けるなんてι(´Д`υ)ちょっと謝らせて下さい、本当いろんな意味ですいません…(;ω;)il||li _| ̄|○ il||li
さあ気を取り直して(だからいつも立ち直るのが早過ぎるって(^-^;)これからもIPや広場でもよろしくお願いします。
出来れば他の作品もぜひ、…ぜひ、とお勧めしていいのかどうかも定かではありませんが(^-^;、読んで頂けると嬉しいです。

そうだ、ブログに掲載されていた淡い黄緑色の桜、とても綺麗でした。奥様、茶目っ気があってセンスのいい方ですね。またお邪魔させて下さいね(*^-^)
 

 こんにちは

 時間があるときにゆっくりと読ませていただきました。幸せなひと時をありがとうございます。
 素直になれないハルと優しすぎる柚月さん。相手をとても大切に思っているがゆえに臆病になってしまう二人にジレジレしながら読みました。やっと二人の心が通じたときは良かったね、という気持ちでした。
 まだほかにも作品があるようなので、少しずつ読ませていただきます。楽しみです(*^_^*)
 
八月>るうりいさん、コメント、キラリ、ポチ、ありがとうございます。インターポットからのお客様、とても嬉しいです。
 IPではプロフィールもブログには一切触れてなく、つぶやきも普通に素の八月なので、作品を読んで頂くのはちょっと恥ずかしいです……いや、かなり……(^-^;
 幸せなひと時、なんて……ありがとうございます。拙作をお目にかけてすいません、という気持ちなんですが(。_。*)))モジモジ ふたりのキャラと関係性をよく判って下さっているコメントで本当に嬉しく思っています。(*^-^)
 他の作品も読んで頂けると嬉しいです。
 これからも、IPでも、よろしくお願いします。o(_ _)oペコッ

読み終わりました!!!
最後までハラハラしました(∩∀`*)
ハルと柚月サンの想いが通じ合って良かった♪
柚月さんがミハルと呼ぶところがいいなぁ…
愛だなぁ…
私も美味しい肉じゃが食べたいな☆

本当に面白いお話でした♪
 
 
 ≫最後までお付き合い下さってありがとうございましたm(_ _)m
 本当に駄文ですいません……本当に……オチる~(泣)
 文章書くの上手くなりたいです。納得できる話が書きたいです……精進します。
 またお邪魔させていただきますね~。
 
 

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: きみの手を引いて:最終話:

« 好きな本:1 | トップページ | 「きみの」最終話更新しました。 »

2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト

リンクⅡ

  • 拍手お礼画像等を使わせて頂いています


  • アルファポリス


     
  • 雪ひろとさんと鷹槻れんさんのサイトです。


ブログバナー

  • Bromance

    リンクフリーです。報告は任意でお願いします。
無料ブログはココログ