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2009年7月

月見第七話更新。

 

 「月が見ている。」第七話更新しました~\(^o^)/

 

 ぐずってても仕方がないので、病院に行きました。久しぶりに口をすぽっと覆って薬を吸入。「喘息のひとは風邪こじらすと死んじゃうかもしんないよ~」と脅かされ(二度目)叱られて、風邪薬とシールの気管支拡張剤といつもの慢性喘息の吸入剤をもらって帰宅。

 あッ、拍手コメントで心配して下さった方や、メールで心配して下さった雪さん、ありがとうございます!(´;ω;`)ウウ・・・けっこう元気です!

 ヤク(喘息の)さえ切れなければこんなことには……(;´д`)トホホ…すいません……。

 

 あと、週末、旦那さんの実家に帰省します。一週間ほど滞在する予定なので、来週の更新はありません。m(_ _)m

 次話の更新は……月末までにはなんとかしたいと思います。(^-^;

  

 

月が見ている。7

 

 第七話

 

 
 ─── 大和が、翠を好き?
 
 それを聞いて一瞬だけ奇妙な表情をしたカナエは、繊細そうな顔にいつもの倣岸不遜な笑みを浮かべる。
 大和が嘘を吐いた、と判ったからだ。─── かずさを安心させる為に。

 翠は、十三で春霞楼に売られてきた。大和よりも更に二つ年上の彼女は、当時七つかそこらだったカナエにとって到底太刀打ちできない「お姐さん」だった。

 面倒見の良い翠は、お勤めをしている姐さん方の身の回りの世話をする仕事をこなしながら、カナエとよく遊んでくれた。大和に対しても同様で、二つの歳の差は大きいのか全くの弟扱い、彼女には今でも頭が上がらないようだった。
 
 片想いの相手というよりは、ただの幼馴染みのはずで、大和との間に色っぽい話は聞いたことがない。 
 
「か……カナエさん、……はなし、て」
 カナエの腕の中で、かずさがか細い声を上げて身動ぎする。抜け出そうとするかずさの華奢な身体を腕に閉じ込めたまま、カナエは小さな耳に囁いた。

「翠がどんな女か、知りたないか?」
 かずさはカナエを見上げた。もがいていたかずさの身体から力が抜けていくのが判り、カナエは心の中でほくそえむ。
 
「……おとなしゅうしとったら教えたってもええで。大和が惚れた女、気になるやろ?」
「……」
 カナエを見つめるかずさの瞳が、わずかに揺れる。掠れるほど小さな声がかずさの唇から漏れた。

「……おとなしくしてたら、……教えて」
 目を細めたカナエは、笑みを浮かべる。
「どつかれたらかなんからな。佐野屋の二の舞はごめんやで」

 言いながらかずさの耳の下に口付けた。びくん、とその身体が震えるのが判る。首筋に沿ってゆっくりと唇を這わせ、シャツの裾から手を侵入させた。
「……っ、や」
 
「おとなしゅうしとれて言うたはずやで」
 抗おうとしたかずさの二の腕を掴んで、阻む。もう一度、強引に唇を重ねた。
「……ふ……っう、……」
 当然のように舌が入り込んできて、蹂躙される。かずさはろくに息が出来なくなり、思わず顔を背けた。
 
 それをしおにカナエはかずさを突き放した。
「イヤやったら、ええねんで。無理せんでも」
「カナエさ……」
「─── 翠んこと、知りたかったらいつでもきいや。……もちろん、タダっちゅうわけにはいかんけど」

 ハラくくったら、おいで、とカナエはにやりと笑う。
「……」
 放心したかずさは、カナエが食堂から出て行くのをぼんやりと見送る。俯き、赤く濡れた口元を手の甲で拭った。……

 

 

 
 
 
  
 
 暗闇の中、かずさは目を開けた。ベッドで横たわる自分のその目の前に、大和が仰向けに眠っている。
 規則正しい寝息と共に浴衣に覆われた厚い胸板が上下する。かずさはこっそりと彼の横顔を眺めた。

 ─── 時々こうして大和の寝顔を見ていることを、彼が知ったらどう思うだろうか。
 
 気味悪がられるだけだと判っていた。大和は自分を子供としか、せいぜい弟としか思っていない。
『今日のみやげは水饅頭やで。美味そうやろ、……また翠にもろてん』

 子供の自分のために大和は翠からもらった菓子を、あの日から毎日のように携えてくる。その心遣いが嬉しく、……辛くて、哀しかった。
 
(……翠さんと、どんなこと話すんだろう。俺のこと、話したりするのかな……。それから、誰にも見つからないように、キ……キスしたり、とか)
「……」

 かずさは自分の唇を指先でそっと撫でる。─── 今日も、カナエにくちづけをされた。
 
 大和が見世の手伝いに行ってしまえば、家の中でカナエと二人きりになってしまう。それでも遊び歩くことの多いカナエが出かけてくれればいいが、たまに家に居ようものなら、かずさは大和の部屋からほとんど外に出られなくなる。
 
 もしもカナエに捕まれば……。
 今日のことが脳裏に浮かび、かずさは大和に背を向けた。

『……翠のこと、気にならへんの? ぜんぜん来えへんやん。……なんでも教えたるのに』
 カナエの指が器用にかずさのカッターシャツのボタンを外していく。
『あー動いたらあかんで。破けたん、大和に見せられへんやろ。……オレのお下がりなん着して、シブチンやな、あいつ、……オレが囲ったったらさらっぴんのええ服、着したるし』

 甘い声でかずさの抵抗を封じて、露わになった胸に手の平を這わせる。伏せた目に涙の浮かんだかずさの顔を上げさせ、唇を重ねた。
 後ろを廊下の壁に阻まれてかずさは逃げることも出来ない。─── それだけではなく、下手に抗えばカナエの機嫌を損ね、大和に何もかも暴露されてしまうだろう。

『……や……大和に言わないで、お願い……』
 涙声で懇願するかずさをカナエは目を細めて見下ろした。
『ええよ。オレのものンなったら、黙っといたる』

 カナエの言う、「オレのもの」がかずさにはどういうことか具体的には判らなかった。ただ、何か嫌なことだ、と思った。─── カナエの目は、佐野屋の主と同じだった。
 
 答えられずにうな垂れるかずさの鎖骨の下に、カナエはくちづけの跡を残した。
『手付けや。オレがツバつけたてしるし』
 
 内風呂の洗い場の鏡でその刻印を見て、かずさは泣きそうになった。消えないものか、と何度も指でも手ぬぐいでも擦ってみた。消えなかった。
(……大和に見られたら)

 これがくちづけの跡だと気付くだろうか。佐野屋の姐さんたちの白い首筋や胸元に付いていたものときっと一緒だ。二、三日しか娼家にいなかった自分でさえ何回か見ているのに、廓育ちの大和に判らないはずがない。
 
 かずさは浴衣の袷を掻き合わせた。─── 絶対に大和に見られたくなかった。
 
 何も知らない大和は、背を向けたかずさの隣で健やかな寝息を立てている。
 
(……大和だったらいいのに)
 三日とあげずにくちづけをされることも、シャツの上から触れていた手がボタンを外して、あるいは裾をたくし上げて入り込んでくることも、身体にくちづけの跡を残されることも。……全部、大和だったら、いいのに。

 実際は違うと判っていた。大和が好きなのは、「翠」。美人で色っぽくて、見も知らない子供にさえ高価な珍しい菓子をくれる、優しい女の人。子供の自分を心配して、気にかけて、……大和が好きになって当然の女性。

 大和が自分に触れてくれることなど、この先一生ないのだと。
 
 自分がカナエにされていることを、大和は翠にしているのだと。

 そして、大和はそれがとても幸せで、自分の気持ちなど迷惑な、いらないものなのだと。

(……判ってる)
 身動ぎもせずにかずさは、大和の体温をいつまでも背中に感じていた。

  

  

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月見第六話更新。

 

 慢性喘息で毎日吸入しなければならない薬が一週間以上も前に切れていて、その上風邪が長引いてるので絶対病院に行かなくてはならないのに、行きづらい……先生に怒られるから。そんなここ最近の八月です。息苦しいです。精神的な話ではなく、呼吸が現実、苦しい。

 「月が見ている。」第六話更新しました。\(^o^)/

 よっし、この勢いで病院に行くぞ!怒られてもいい!でもやっぱヤダ。いやヤダじゃない……。

 ┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~←フゥゥ~なんて息が吐けるか、もったいない(?)!

  

月が見ている。6

 

 第六話

 

  
 いつものように夜半も過ぎた頃、大和はカナエとかずさ三人で暮らす屋敷に帰ってきた。三和土で靴を脱いでいると階段から軽い足音がする。寝巻きにしているカナエの子どもの頃の浴衣を身に着けたかずさが降りてきて、ほっとしたように大和に微笑んだ。
 
「なんや、まだ起きとったんか。寝とってええて言うたやろ」
 框に上がりしな、大和はかずさの頭を撫でる。
「子供は早よ寝なあかんで」
 
「……」
 切なく大和を見上げたかずさは、その目をすっと伏せる。
「ね、……眠れなくて」
「? 腹でも痛いんか?」
 かずさは黙って頭を横に振った。
 
 その様子を訝しく思いながらも大和は食堂に入り、片手に提げていた風呂敷を解いて重箱を取り出す。中には春霞楼が仕出しから取り寄せた惣菜がぎっしりと詰まっていた。
 それは女将が厚意で持たせてくれるもので、大和はこのおかげでほとんど料理をしなくて済んでいる。飯を炊くのと、やはり見世から持ち出しの卵や魚の干物をたまに焼いたりする程度だった。
 
「─── ほら、これ。やるわ」
 重箱を電気冷蔵庫に仕舞った大和は、風呂敷から転がり出たおひねりにしてある水色の和紙をかずさの手の平に載せた。
「なに?」
 
 くるくるとおひねりを解くと、薔薇の花を象った小さな砂糖菓子が幾つも現れた。かずさは目を輝かせる。
「すごい、きれい、……食べられるの?」
 
「ああ。珈琲とかに入れてもええらしいけど、飴みたいにそのまま食うてもええんやて」
「大和が買ってくれたの……?」
 
 嬉しさを隠し切れない表情でかずさは大和を見上げた。
 大和はそんなかずさに相好を崩しそうになり、慌てて引き締める。下心があると勘付かれたくない。

「いや、翠にもろた。馴染みの客からもろたんやて、……今、うちでワケありの子ォ預かっとるて話したら、ぎょうさんあるから持ってって、て」
 大和の口から出た翠の名に、かずさの笑顔がしぼんでいく。

「あ……翠さんが」
「そうやねん。あいつ、子供やったら菓子のひとつも買うたらな、言うて。なに買うたらええか判らん、言うたらコレくれてん。……」

 半分嘘だった。確かに、翠にはかずさが家にいることを話した。彼女が菓子のひとつも、と言ったのも本当で、それを聞いた大和は見世を抜け出し、近くの洋菓子店で薔薇の砂糖菓子を買い求めたのだ。

「あ、翠は口堅いから心配せんでええで。お前がここにおるて誰にも言わんから、……あいつな、お前と同じ歳で見世に来てん。一本立ちしたんは十六んなってからやけど、……お前が、心配やて。そんな子供にお勤めなんか出来へん、て」
 
「俺のこと心配して、……翠さんが」
「ああ。……ジブンこそそんな境遇やのに。ええ女やろ?」
 かずさは笑顔を見せて、頷いた。その笑顔に大和は目を細める。

「……ひとつ、食うてみ」
 促されるままにかずさは砂糖菓子を口に含んだ。薔薇の花弁がほろほろと崩れて甘い味が広がる。
「おいしい。甘い……」
 
「そおか。良かった、……翠に言うとくな」
 嬉しそうに笑う大和にかずさはちくりと胸の痛みを覚えた。それを隠し、自然な笑みを浮かべる。

「翠さんと話せて嬉しい?」
「子供は色恋に口出さんでええの。からかいな」
 かずさはえへへ、と笑い、目を伏せた。─── 本当は、大和に聞いて欲しいことがあった。

(……大和、……俺、か……カナエさんに……)
 ─── とても言えない。せいぜい弟としか思っていない子供が、口止め料代わりに無理やり口付けを強要され、しかもその『口止め』の内容は大和への恋心だなどと。
(……知られたら、……大和に、嫌われ……)

「どないした?」
 俯くかずさの様子を訝しく思い、大和は顔を覗き込んだ。かずさは慌てて顔を上げる。

「な、……なんでもない。もう、寝るね」
「ああ、おやすみ。寝る前に口ゆすぐんやで」
「うん」

 大和に言われるがままにうがいをしたかずさは、水色の和紙に包まれた砂糖菓子を大事そうに両手で捧げ持ち、二階へ上がっていく。ふわふわとした兵児帯の結び目が揺れるその背中が不思議に淋しそうに見え、大和は首を傾げた。
  

  

 
 
 
 
 
 明くる日の午後。かずさは食堂でひとり、掃除をしていた。
 続きの台所の洗い場やコンロはほとんど使わないので余りいじらず、床をきれいに掃き、雑巾で磨く。

 ……仕事に出かけた大和が帰って来て、これを見たらなんと言うだろう。褒めてくれるだろうか。少しでも、自分のことを気にかけて、……子供じゃない、と、……。
「……」

 かずさの手が止まる。─── 大和が、自分を子供としか見ていないことは判っていた。そしてだからこそ、大和のそばにいられるのだということも。
 もしも自分の恋心を知られ、……「子供ではない」ことを大和が認識したら、たちまち遠ざけられてしまうだろう。

 ─── 気持ちが悪い、近寄るな、と言われて。
 そばには置いて置けない、と佐野屋に連れて行かれてしまう。
「───」

 かずさは腕まくりしたカッターシャツの肩口で顔を拭った。雑巾をすすぎ、台所の窓から天日に干す。
 ちょうど、カナエがぶらぶらと屋敷の敷地内に入ってくるのが見えた。

『─── 口止め料、寄越せや』
 それをされたとき、驚いて声も出なかった。感触などよく覚えていないくらい動揺してしまった。
 けれど、カナエに口づけをされたことは事実で。

 それが大和だったらいい、と思ったことも本当だった。

「─── 何しとんの、お前」
 背後から声をかけられ、びくんと身体が竦む。いつの間にかカナエが食堂の入り口に立っていた。
「お、……お帰りなさい、……」
 
「うん」
 挨拶を返さなくて普通、といったところに甘やかされて育った坊々気質を覗かせながら、カナエは食堂に入ってくる。くすみなく磨かれたこげ茶色の床板に目を落とした。

「あ、……今、拭き掃除、して」
「掃除ィ? 大和に言いつけられたんか」
 かずさは黙って首を横に振り、小さく言った。
「……俺が、勝手に……」
 
 以前からかずさはカナエが苦手だった。カナエは遠慮なくかずさを値踏みする視線を投げかけ、あまつさえ平気で性的なことを仄めかす。立場が上だと熟知している者特有の傲慢な態度と仕草の圧力も相まって、かずさはろくに口も利けなくなってしまう。
 
 その上に、昨日のことがあった。
 
 とてもカナエの顔をまともに見ることが出来ない。

 俯いたかずさは食堂を出ようと扉に向かった。
「……大和に気に入られとうて床磨いたん?」

 カナエに腕を掴まれ、引き寄せられる。
「ケナゲやな。ジブンこと好かん奴に媚売ったかてしゃあないのに、……大和、他に好いたらしい女いてるねんやろ」
 
「……は、なして、下さ……」 
 怖い。カナエの喉仏が目の前にある。カナエの匂い。力強い腕がかずさを取り巻いた。

「つれへんやんか。─── 大和に言わないで、言うてすがりついてきたくせに」
 かずさは腕を突っ張り、カナエの胸を押した。その二の腕を掴んで、カナエはかずさの顔を覗き込む。
「チュウさしてくれたやろ、昨日」

 たちまち顔を真っ赤にするかずさをカナエは目を細めて眺めた。
「……今度はもっと、ちゃんとさして?」
 カナエの言葉にかずさは思い切り頭を横に振る。

「─── 大和に言うで。お前の気持ちも、オレにチュウさしたんも」
 突然冷ややかになったカナエの口調に、かずさは顔を上げた。
「大和、どう思うやろな、お前んこと。……気持ち悪いてもう口利いてくれへんかもな。部屋追い出されて、行くとこのうて、……そしたら、面倒みたってもええで。オレの妾んなる……?」

 甘い声でかずさを絶望させる言葉をカナエは口にする。
「いや……大和に言わないで、お願い、……おねがい……」
 泣きそうに瞳に涙を滲ませながら、かずさはカナエの胸に顔を埋めた。

 かずさのさらさらとした後ろ髪に指を差し入れて顔を上げさせたカナエは、そっとその唇に口付ける。大人しく目を瞑ったかずさの身体が硬く強張っているのが判った。─── 大和以外には触れられたくないのだろう。
  
 カナエはかずさの唇を舌で割り、ぬるりと侵入させた。一瞬びくついたかずさの腕がカナエの胸を押す。

 それだけだった。
 かずさの腕に力は込められず、カナエは好き勝手にその口唇を犯した。

「……は……」
 やっと唇を解放されたかずさは目の縁を赤く染めて、息を吐く。
「─── 甘ったるいなあ。飴でも舐めとった?」

 掃除の前に昨夜の砂糖菓子を口にしていたことを思い出したかずさは、カナエに問われるがままに、たどたどしく答える。
「……薔薇の、砂糖菓子を……大和が、翠さんからもらって」
「ミドリぃ? なんで翠が出てくんねん」

「……大和は、……翠さんのことが好きだから……俺を預かってるって、翠さんに話して……」
 
 かずさの言葉にカナエは奇妙なことを聞いたような表情を浮かべた。
 
 
 
   

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 昨日、家族でポケモンの映画を観に行きました。

 毎年観に行くので、前売り券を購入しての準備万端ぶり。話がちょっと入り組んでたせいか、一番下の子は最後の方、少し飽きてきてしまいましたが、全体的に面白かったです。(o^-^o)

 

 ……なのに、風邪を引いてしまいました。どうも映画館が寒かったようです。冷房は控え目だったのですが、二時間座りっぱなしだと寒くて……。_ノフ○ グッタリ

 ビール飲んでた旦那さんは三回もトイレに行きました。「寒かったよな~」とは暑がりの彼の談。後ろの方の人は、うちのひとが行ったり来たりして迷惑ではなかったろうか……ヾ(_ _*)ハンセイ・・・すいません……。

 

 うーん、ノドが痛い……悪化する前に安静にします……。(´;ω;`)ウウ・・・

月が見ている。第五話更新♪

 

 やあ、更新できました、「月見」第五話。

 拍手コメントありがとうございます(*^-^)関西弁、気にならなくて良かったです。

 八月はほとんど標準語なんですが、子供たちはネイティブ関西弁をしゃべるので書いてても違和感ないです。大和とカナエは会話のキャッチボールがしやすい

 続きも頑張ります!\(^o^)/

 

 さて、明日からうちの子供たちは夏休みです……。ほんとは火曜日からですが、土曜も日曜も海の日も、休みは休みなのです(´-д-`)

 今から言うのもなんですが、八月は「八月」のくせに8月いっぱいは開店休業状態になります。去年は小説家になろう様に投稿していたのですが、連載してるのに、一ヶ月の更新が二回だけ。……二週間に一度って、余りにも……┐(´-`)┌

 連載じゃなかったらいいんですけど……(;´д`)トホホ…

 今年は、いえ今年も、八月「休み」金魚になりそうです

 でも、ヒマを見つけて書きたいな……( ´・ω・`)

 

 

月が見ている。5

 

 第五話

 

  
 大和とかずさが共有している部屋は二階に三部屋ある内のひとつ、南西向きの部屋だった。階段を上がってすぐの南東向きの部屋はカナエが使い、もう一つの北向きの部屋は納戸として使用している。
    
 二人の使う部屋の内部は至って簡素で、ベッドと小さな本棚、箪笥が一棹あるだけだった。床に敷かれたカーペットと大きな窓が部屋を明るく見せているが、それがなければ殺風景な部屋である。

 それでも、田舎で両親と暮らしていた頃の隙間風の通る古い木造家屋や、更に親戚の家での貧しく倹しい生活を思えば、かずさには夢のような贅沢さだった。明るい草色のカーペットなど初めて見たし、大きな窓を開けると続くバルコニーを家の内側から見ることなど一生ないと思っていた。

 中でも驚いたのは、やはり初めて見たベッドだった。真鍮の金具のついたヘッドボードがぴかぴかと光っている。とても大きくて、「英国から入ってきたやつなんやて。ほら、あちらさんガタイええやろ」と言う大和の声をかずさは呆然と聞いた。なにしろ、寝床は畳むものだと思っていたのだから仕方がない。

「……一緒に寝れんくはないけど、それでええか?」
 最初の夜、自分の意向を尋ねた大和にかずさは慌てて頭を横に振った。
 こんな真っ白いふわふわの布団の上には上がれない。そう訴え、カーペットの上で、かい巻きか毛布があればいい、と控え目に主張するかずさに、優しく笑った大和はその小さな頭を撫でた。

「子供、床で寝かして大人がベッドで寝るゆうわけにいかんやろ。一緒が嫌やったら俺が床で寝るわ」
 違う、嫌じゃないけど俺が床で寝る、と譲らないかずさに、せやったら俺も床で寝るわ、と応戦する大和。

 結局、最初の大和の提案どおりに二人でベッドに眠ることになった。
 眠れない、と言っていたかずさも今では大和の隣ですやすやと安心しきった寝息を立てている。
(……安心しきられても困るんやけど)

 寝巻きにしているカナエのお下がりの浴衣が乱れていて、大和には目の毒だった。緩んだ袷から白い肌が覗き、すんなりした膝下が何の警戒もなく晒されている。蹴飛ばした夏掛けをそっと掛けてやり、自分の目から隠した。
『お前、このガキかわええと思わへんの。俺やったら最初の夜に』

(……うっさいわ、アホ。子供にへんなこと出来るかい、……俺がどんだけ我慢しとると思て)
 思いかけて大和は頭を振った。自分を諫める。我慢などしていない。かずさを、─── 子供を欲情の対象とするなどあってはならないことだ。

(あかんあかん。気ィしっかり持たんと)
 そんな大和の気配に気付いたのか、かずさが身動ぎした。
「ん、……」

 ふ、と長い睫毛が上がる。ぼんやりとした黒目がちの瞳が大和を捉えた。
「………」
「お、起こしてもうたか。悪かったな」
 少し声が上擦るのは見逃して欲しい。大和はぎこちない笑みを浮かべた。

「大和……」
「ん? どないした、」
「……大和の好きなひと、美人……?」

 半分寝ぼけているようなかずさの言葉に大和は瞬きした。─── かずさを安心させようと、好きな女がいると嘘を吐いたのは昼間のことだ。自分が見世に出て、夜半過ぎにこうして戻って来るまでずっと気にしていたのだろうか。
 
(確かにあの後、様子おかしかったけど)
 いつも大人しく、控えめなかずさが更に輪をかけて静かだった。元来が騒がしい性質ではないので、気にしていなかったが ───。
「ああ。べっぴんやで」

 かずさを不安がらせたくない一心で大和は嘘を重ねた。
「……翠、いうねん。春霞楼におる。女郎やから手ェ出せへんけど」
 思うだけやったら誰にも迷惑掛からんしな、と大和は続ける。

 かずさは捉えどころのない目付きを大和に向けた。
「……みどり、さん。美人なんだ……」
「ああ。べっぴんやし、色っぽいし、胸もデカいし、ええ女やで」
「……のろけてる、大和」

 少し微笑んで、かずさは大和に背を向ける。大和はその細い肩に口元を綻ばせた。
「……そうか?すまんかったな。……」
 これでかずさは安心したはず。幼馴染みで春霞楼一の美女と名高い翠に心の中で感謝の手を合わせた大和は、かずさの胸の内には気付かなかった。

 
 

  

 
 
 
「お前、大和のこと好きやろ」
 かずさが胸の内を言い当てられたのは、次の日の夕方だった。

 早めの夕餉を大和と済ませ、洗い物を終えて振り向いたかずさの先にいつの間に帰ってきたのか、カナエの姿がある。
 かずさは少し驚きながらも大和が春霞楼に出かけたことを伝える。食事を新たに用意するか訊ねるとカナエは頭を横に振って、断った。

 その代わりに、かずさの気持ちを暴き立てた。
「大和のこと、好きなんやろ」
「───」
 かずさは頭の中が真っ白になった。次いで、どうして、という思いが駆け巡り、頬を熱くさせる。

「ははあ、やっぱり。……正直やな」
 真っ赤になったかずさを面白そうに眺め、カナエはその頬に手を伸ばした。触れられ、びくついたかずさは後ずさる。

 カナエは、にやにやと笑みを浮かべた。
「オレには触られたないけど大和やったらええんやろ。誘ったったらええやん、おんなじベッドで寝とんねやから」

 直截的なカナエの物言いにかずさはますます頬を赤らめる。意を決してやっと言葉を口にした。
「や……大和は……好きなひと、いるから……」
 おどおどとしたかずさの様子にカナエは意地悪を言わずにいられない。

「ああ、せやったな。大和はお前みたいなガキ、好かん言うとったもんなあ?」
 みるみるうちに俯き、しょんぼりと肩を落とすかずさ。カナエはその真っ黒で癖のない髪の毛を見下ろして、「判りやすっ」とにやにや笑う。
 
「オレが大和に言うたろか? お前が大事に匿っとるかずさちゃんはお前のこと大好きなんやで、て。あいつどないな顔するか見ものやな」
 大和がかずさを不安がらせない為に「興味ない、好きな女がいる」とでまかせを言った事は判っていた。伊達に兄弟同然に育ってはいない。少なからず、かずさを気に入っていることは明白だった。

 ただ。
(……あいつはこんなガキに手ェ出せへんやろな)
 例えかずさの方から言い寄られても、自分もかずさを好ましく思っていても、ただ子供だというその一点で大和が弱りきると想像がついた。

 そしてその想像はカナエを喜ばせた。
 いつもちゃんとしている大和。しっかり者で頼りになって大店である見世の跡を継ぐのに相応しいと周囲に思われている大和。─── 年上で、いつだって偉そうに自分に命令してくる大和。

 そんな大和が、ずっと年下のガキに好かれてうろたえ、慌てふためいたら。
(おもろいやんか)
 カナエは唇を片側だけ上げた意地の悪い笑みを浮かべる。
「─── 協力したるわ。大和帰ってくるん何時やて? オレに任しとき」
 
「だ、……だめっ……」
 思いも寄らないかずさの制止の声だった。上機嫌で食堂を出ようとしたカナエの腕に手を掛けて引き止める。

「大和には言わないで……お願い、カナエさん」
 かずさの方から自分に近づき、あまつさえ腕を掴んだりするとは思っていなかったカナエはあっけに取られた。必死に見上げてくる視線を受け止める。

「─── なんで。大和のこと、好きやろ」
「やま……大和、好きな女のひと、いるから……俺みたいなの、全然、好きじゃないから……」

 自分の言葉に傷つき、かずさは目を伏せた。
「……知られたら、……気持ち悪いって……」

『子供で、男やんか。そんな気なるか、気色悪い』
 
 眉をしかめた大和の言葉がかずさの胸に突き刺さる。─── 自分の気持ちを知ったら、大和は。
「お……お願い、お願いカナエさん、大和に言わないで、黙ってて……」

 縋りつくように自分を見上げるかずさをカナエはじっと見つめた。
「……黙ってて、欲しいんか」
 かずさは何度も、何度も頷く。どうしても大和に嫌われたくなかった。かずさ、と自分を呼ぶ大和の声。カナエから庇ってくれる大きな背中。頭を撫でてくれる優しい、温かい手 ───。

 自分の気持ちを知った大和が、冷たい目つきで顔を背ける様子を思い浮かべただけで涙が滲みそうになる。
「……おねが……お願い、言わないで、……大和に言わないで……」
「─── 口止め料」
「え……」
「口止め料、寄越せや。黙ってて欲しいねやろ」
 
 かずさの顔に身体に、舐めるような視線を這わせながらカナエは要求した。戸惑い、俯くかずさに詰め寄る。
「俺……お金持ってない……」
「判っとるわ、そんなん。ゼニには不自由してへん」

 カナエはかずさの腕をいきなり掴んで引き寄せた。抗う間もなく、唇を塞ぐ。
 舌を割り込ませようとするカナエを、かずさは思い切り突き飛ばした。
 驚きと混乱で声も出ない。

「─── 毎度」
 立ち尽くし、赤く濡れた唇を片手で押さえるかずさに、カナエはにやりと笑って顔を近づける。かずさは二、三歩後ずさった。
「そんな警戒すんなや。口止め料、言うたやろ。ごちそーさん、……大和には黙っといたるから」

 言いも果てず、かずさは身を翻して食堂を出て行ってしまう。階段を慌てたように駆け上る足音が聞こえた。
 泣かしてもうたか、とカナエは少し気が咎めたが、肩を竦めただけだった。

 
 
 
  

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月が見ている。第四話、更新。

 

 さくさくと更新。このへんまでは……。でも、ちょっと後のところで停滞中。( ´・ω・`)

 これは……書き溜めた分、全部出してギリギリな状態にしないと書けないかも。

                                      il||li _| ̄|○ il||li

 ヘヴンとか「きみの」でさんざんギリ状態を味わったので、心の余裕が欲しくて少し(ほんの少しですよ!)書き溜めたんですが、余裕が出来たら出来たで「きみの」の続編に手を付けたり、攻め視点一人称な話に手を出したりして、結局、連載中の「月見」が進まなく……。

 なんだこりゃ、本末転倒だよ……。掲載する予定のない話を書くのが楽しいって

                                           ┐(´-`)┌

 なんとか書いて、「月見」の完結、目指します。(A;´・ω・)アセアセ

  

 

月が見ている。4

 

 第四話

 

「……何しに行ってん」
 うっすらと笑みを浮かべてかずさを見下ろすカナエの視線を遮ろうと、大和はその間に立ちはだかる。

 少しだけ上背の高い大和をちらりと見上げたカナエは、ふん、と鼻で笑った。その息に酒が臭う。 
「遊んできただけや。ベツに足抜けしたヤツがここにおるなんて言うてへんで。……ただ、ちょっとおもろい話聞いた」
「……なんや。おもろい話て」

「五日前の夜」
 カナエは大和の肩に手をかけると、ぐいと押し退けた。現れたかずさが、おどおどと身を竦ませる様子を目を細めて眺める。

「下働きのガキが逃げたそうなんや。そのガキ、エライ見目麗しいからてイロ付けて買うて、その内お得意さんに出すはずやったんやて。……ところが、旦那様が、─── 佐野屋の旦那やで、あの六十近い ─── そいつをエラくお気に召して」
 
「もうええ、聞きたない。かずさ、行くで」
 そこまで聞けば話の筋は大体お定まりで想像がつく。胸の中に生まれたもやもやとした嫌な予感に従って背中を向ける大和に構わず、カナエは話し続けた。
  
「見世には出さん、妾にする、言わはったそうや。見世のもんも驚いたらしいけど、もう隠居も近いし、女将は何年か前に他界しとるし、そのガキひとりで大人しゅうしとってくれるんやったら、て目ェ瞑ることにしたんやて。……そんで、そいつ、旦那様の寝間に呼ばれたんやけど」

「カナエ! もうええわっ」
「もうちょっと聞けや、ここからが肝心なとこやねんで。……布団に突き転ばされたそのガキ、枕元にあった灰皿で、覆い被さってくる旦那様のアタマどついて逃げたんやて。どや、結構な武勇伝やろ?」

 なあ、かずさ、とカナエはわざとらしく身体を屈めて、俯くその顔を覗き込む。
「大したもんやわ。女郎屋の旦那たぶらかして、妾にする、とまで言わせたんやからな。どんな手練手管使たんか知りたいなあ?」
 「そんな言い方止めえ。こんな子供がたぶらかしたり出来るかい。大方、佐野屋の旦那が勝手に逆上せ上がったんやろ」

 下らん、とそっぽを向く大和を横目に、カナエはかずさの顎に手をかけて上げさせる。
「きッれーなカオしとるわ、ほんま。佐野屋が骨抜きンなったんもしゃアないわなあ?」
「おい、触んなや!」

 目を剥いた大和はカナエの手を掴んで振り払う。かずさに無遠慮に触れられることが、許せなかった。
 カナエは目を眇めて腕を組んだ。
「すっかりたぶらかされてもうてるやんか、大和。よう灰皿で殴られんかったな。ヤったんやろ?」

「ヤっ……」
 絶句した大和は口をぱくぱくさせることしか出来ない。
「あ、それとも、かずさちゃんが許したんかな? 大和やったらええ、て」

 カナエの揶揄にかずさは真っ赤になった。その顔を伏せる仕草にカナエは片眉を上げる。
「なんや、図星……」
「アホウ! 子供相手にそんなんするかっ!」

 やっと否定の言葉を発することに成功した大和を、カナエはしれっと流す。
「隠さんかてええやろ。一緒のベッド使てて何にもないわけあらへん。……殴らへんねやったら試させろや。俺でもええやろ?」

 かずさに向かって言いながら、細い二の腕を掴んだ。引き寄せられそうになったかずさは頭を振って抗う。
「……っ」
 
 助けを乞う瞳を目にする前に大和はカナエの手をもぎ離し、かずさを背後に隠した。背中にしがみ付いてくる体温に胸をざわつかせながらカナエを睨む。
「ええ加減にせえっカナエ! お前酒抜けてへんやろ!?」
「悪いか? 朝方まで飲んでてんもん、……そいつのこと聞き出すんエラかってんでー」

 へらり、と笑うカナエに大和は眉間にしわを寄せた。
「わざわざ佐野屋出向いていって聞き出すことない、かずさから聞いたらええ」

「女郎屋の旦那に手込めにされて妾にされそうになった、なんて言うかいな。ただの女郎の足抜けとちゃうねんで。俺やったら、連れ戻されるんやないか思てよう言わんわ。─── 佐野屋の旦那な、アレ、しばらく諦めへんで。みず穂が言うてたもん、まいんち男衆に捜させとるて。ご執心」
 
 思わず大和は言葉に詰まった。娼家の主の妾ということになれば、確かにただの女郎や陰間の足抜けとは訳が違う。カナエの言うことが本当ならば、面目を潰された形になる佐野屋が簡単にかずさを諦めるはずがない。─── かずさがここにいることを知られ、揉め事に発展する不利益を思えば、今すぐ佐野屋に連れて行くのが妥当だ。

 しかし。
『ここに置いて。余所へやらないで……』
 かずさの言葉が耳の奥に蘇る。シャツの背中を掴む手に熱が篭もるのを感じた。

「─── ここにおればその内ほとぼり冷める。佐野屋の旦那かていつまでも子供一人にかかずらってへんやろ」
「暢気なこと言うやんか、大和。ほとぼり冷ましとる間にこのガキ、ジブンの妾にしよ思てるんか? よっぽど気に入ったんやな」

 言いながらカナエは大和の背中を覗き込んだ。大和のシャツを握りしめているかずさに、にやりと笑う。
「佐野屋みたいなジジイより大和のほうがええわなあ? 若いし、いずれ春霞楼の主になるし、大和たらして当たりやで」

「……」
 かずさは顔を赤らめて大和の背中からぱっと離れた。
「春霞楼の主にはならんし、こんな子供も妾にせえへんわっ」
 
 吐き捨てるようにカナエに言った大和はかずさに向き直る。打って変わった優しい声音でかずさを安心させようと試みた。
「心配せんでええねんで。め…妾、とか、手ェ出したりせえへんから。俺、男にも子供にもキョーミないし、ほんま、……こいつの言うこと、気にしなや」
 
 カナエは目を丸くした。
「なんやホンマに手ェつけてなかったん?……まさかその歳で勃たんくなったとか」
「お前にシモの心配してもらいたないわっ、大きなお世話や、……俺な、好きな女、いてるし、……お前に手ェ出したりせえへんから、安心しいや」

「……」
 じっと大和が弁解がましい言葉を並べ立てるのを見つめていたかずさは、わずかに表情を変え、瞳を瞬かせた。こくり、と頷く。
 
 そのかずさの表情にカナエは違和感を覚える。
 ─── 驚いたような、悲しいような、その表情。

『かずさちゃんが許したんかな? 大和やったらええ、て』
 そうからかったとき、かずさは真っ赤になって俯いた ───。

 カナエは鼻を鳴らして腕を組んだ。
「お前、そのガキ、可愛えと思わへんの。オレやったら最初の夜に」
「あっアホかっ。……子供で、男やんか。そんな気なるか、気色悪い」
「へえ……」

 切なく大和を見上げていたかずさの視線が伏せられる。カナエは確信した。
 ─── かずさは、大和に思いを寄せている。

 気付いていないらしい大和に、カナエはにんまりと笑った。
「せやったらオレがこのガキ引きとろか?お前んとこじゃ用なしやろ、オレが手取り足取り色々教え」
「教えていらんわボケッ。酔っぱらいに付き合うてられるか、行くで、かずさ」
 
「シンセツで言うてんでー」
 軽薄な笑みを浮かべたカナエは、二人が二階へ上がっていく様子をじっと見送った。

 
 

 

  

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「月見」第三話更新

 

 「月が見ている。」第三話更新しました。\(^o^)/

 なんでしょう、攻め視点好きなのでつい大和が主になってしまいます。自分でもなんで攻め視点が好きなのか、さっぱり判りません。┐(´-`)┌

  

 ずっと読みたくて、でもハードカバーで高価かった摩天楼の怪人 (創元推理文庫)(島田荘司著)が文庫化して手に入りやすくなったので、買いました。しかし、文庫でも1200円。w(゚o゚)w

 たか……高価くないすか、文庫でその値段は。大作なのでアレですけど……。

 京極堂シリーズ並みの、文庫で1000円超え……でも、怯みません。楽しみに読むんだ~

  

月が見ている。3

 

 第三話

 

 

 かずさが大和の部屋で寝起きするようになって五日が過ぎた。
 初めのうちは佐野屋の目を気にしていた大和も、色街の外なら大丈夫だろうとだいぶ警戒を解いていた。

 それでも、春霞楼へ手伝いに行く道すがら、かずさを捜しているらしい佐野屋の男衆に出くわすことはあった。
「あんまり表へ出たらあかんで。見つかってまう」
 ずっと家ん中いうのもかわいそうやけど、と大和は心の中で呟きながら、手拭いを物干し竿にかける。

 天気の良い昼前、大和とかずさは庭で洗濯物を干していた。カナエは一切家事をしない。この屋敷に移り住んでからというもの、家の中のことを一手に引き受けていた大和をかずさは良く手伝うようになっていた。

「うん。外には出ない」
 洗い立てのカッターシャツを手に取り、緊張した面持ちで素直に応じるかずさに、大和はますます切なさを覚えた。

「……ほんまは、もっと離れたところでまともな働き口、世話してやりたいんやけど、……ごめんな、ツテのうて」
 申し訳なさそうな大和の口調に、かずさは黙ってかぶりを振った。シャツのしわを伸ばしながら大和に渡す。
 
「あの、……あのね、大和」
「なんや?」
「明日から、俺が洗濯する。大丈夫、洗濯機の使い方覚えたし、干すのも一人で出来るから。掃除もやり方覚えたし、家の中の仕事、俺が一人でやるから……大和はゆっくりしてて」

「そんなわけいくかいな。お前一人じゃエライ……」
 言いかけた大和はかずさのすがりつくような目に気付く。かずさはすっとその目を伏せた。
「……俺、ちゃんと出来るから。役に立てるように頑張るから。……離れたところ、に、やらないで……」

「……けど、ここにおったら籠の鳥やで。部屋かて俺と一緒で、窮屈やろ」
「お……俺のこと、邪魔なら、食堂か廊下で寝るから……」
「いや、……俺が、邪魔と思てるんやなくて、お前が、俺と一緒で、……イヤなんちゃうか思て」
  
 かずさは大人しく、素直で賢かった。まだ余り世の中に出回ってない電気洗濯機の使い方を大和が教え、実際に使って見せると、ほぼ一度で覚えてしまった。湯沸かし器の使い方にしろ何にしろ、かずさは黙って話を聞き、観察し、すぐに出来るようになった。

(……素直にひとの話が聞けて、自分で考えられるんも才能やからな)
 
 そんな性質を大和は好ましく思い、いたく感心した。その思いのまま褒める大和に、かずさは嬉しさで花のように顔をほころばせる。
 ─── 目が離せなくなる前に、大和は顔を背け、距離を取った。

(アホか、ガキ相手に)
 
 それでも屈託なく、大和、大和と慕ってくるかずさを、大和は少し持て余す気持ちが出てきていた。無論、かずさが悪いわけではない。
 かずさに見惚れる自分が悪いのであって、そんな自分が、かずさと、いつまでも一緒にいるわけにはいかなかった。

(……かずさの方から俺の部屋、イヤや、言うてくれたら)
 
「いやじゃない。大和の部屋がいい」
 大和の思惑など知らず、かずさはきっぱりと言い、大和の手からシャツを取り上げた。ハンガーに掛け、物干し竿に吊るす。

 出来た、とにっこり笑うかずさに、大和はあいまいな笑みを向けた。
「後は俺がやるね。大和は座って休んでて」
「……そおか。せやったら頼もうかな」

 大きな窓から外へ出る石段に大和は腰掛け、かずさが手際良く洗濯物を干していく様を見つめる。
 かずさには大き過ぎる自分の服を着せるのは止めにしていた。春霞楼の離れの納戸にはカナエの子供の頃の浴衣も、仕立ての良い洋服もたくさんある。女将が捨てられずに取って置いたそれらを、大和は少しずつ持ち出してかずさに与えた。

 かずさは文句ひとつ言うどころか、お下がりのカナエのカッターシャツやズボンを喜び、今も着ている。この屋敷に移り住む際に自分の着られなくなった衣服を全て処分してしまった大和は、ほんの少し、それを後悔したほどだった。
「……あの、大和」

 あらかた干し終えたかずさはぼんやりとしている大和に控え目に声を掛けた。
「ああ。なんや?」
「大和の、お母さんて、まだ春霞楼に……?」

「─── いや。もう十年も前に関西で死んだ。女将さんもよう手ェ尽くしてくれはったけど、病でな……俺も母親居らんようになったら余所行かなあかんかなて考えたけど、……ちょうど見世、こっちに出すことになって。人手足らんし、カナエ小さかったから面倒見なあかんし、一緒に来てくれへんか、言われて。ほんまは放り出されてもしゃあないのに、旦那様も女将さんもうちの子供も同然や言うてくれてな、……ほんま感謝しとる」
 
「そう……春霞楼の旦那様も女将さんもいいひとなんだね」
「そうや。足向けて寝られへん」
 自分を見捨てずに、居場所を作ってくれた春霞楼の主と女将を思い、大和は目に笑みを浮かべる。そして、一人息子であるカナエの行状を憂えた。─── 自分がいなかったら、カナエはもっとしっかりしていただろうか。

 沈む気持ちをごまかそうと、大和はかずさに問いかけた。
「なんで急に俺のおかん、気にするん?」
「なんか、大和って……お母さんみたいだなあって思って。ほら、俺とカナエさんの面倒見たり、家の中のことしたり、……大和のお母さんもそんな感じかなって」
 
「……お母さん……」
 大和はがくりとうな垂れた。─── かずさにとって自分はその程度の認識しかないのか。
「……せめて、お兄さんぐらいには昇格させて欲しいんやけど」

「ご、ごめん。嫌だった?」
 嫌だった。かずさの母親になどなりたくない。─── なりたいのは。
 大和は軽く頭を振って、その考えを追い払う。
 
「……ええよ、お母さんで。ちゃんと面倒見たる」
 柔らかく言いながら立ち上がる大和を見て、かずさはほっとしたように笑った。

 綺麗に干された洗濯物がたなびく物干し竿を、高い位置に上げようとするかずさに大和が手を貸していると、ふらりとカナエが家の奥から現れた。
「よう、お二人さん。真っ昼間から仲のええこっちゃな」

 抑揚のおかしな口調でからかう。窓際で見下ろすカナエに大和は眉間にしわを寄せた。
「どこ行っててん。─── 朝帰りどころか昼帰りやないかっ」
 
 カナエは昨日の夜、帰って来なかった。大和と二人暮らしになって半年、カナエは自由を満喫とばかりに度々朝帰りを繰り返した。お目付け役を仰せつかっている大和としては穏やかではいられない。

「お前なんで勘当されたか判っとんかっ。反省せなんだらいつまでも見世戻られへんで!」
「ベツにかまへん。見世はお前がおったら安泰やし。ここ居心地ええし」
「ダレが面倒見とると思ってんねんボケッ」
 
 言葉ほどには大和が怒っていない ─── むしろ心配していることを知っているカナエはどこ吹く風とばかりに、無視する。
 洗濯籠を持った大和の後に続いて入ってくるかずさを、舐めるような目つきで見た。

「……なんやねん」
 カナエの視線に気づいた大和は網戸を閉めながら険しい目を向ける。
 それとなくかずさを庇おうとする大和の仕草に、カナエは目を眇めた。

「……佐野屋、行ってきたで」
「なんやて?」
「このガキが逃げてきた、さ・の・や、行ってきたで」

 酒臭い呼気の混じるカナエの言葉に、大和は顔色を変え、かずさは目を伏せた。

 

 

      

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 FC2小説に4月から「きみの」を一話ずつコピーして掲載していたのですが、ついに最終話まで辿り着きました。サボりながらだったので、こんなにかかってしまいました……。

 最終話を掲載するに当たって、その近辺を読み返したのですが、……読まなきゃ良かった……背中にすっごい冷や汗かいてる……(@Д@;もうほんとに、一瞬全文削除しようかと思いましたよ。下手なのが恥ずかしくて。生き恥とはこのことだ、と思いましたが、八月の実力の程が知れてこりゃイイや、と(完全にやけっぱち┐(´-`)┌)泣き笑いで掲載しました。

 もう読み返したくないです、ほんとに……。でも、「きみの」の続編も考えてて、書く前にばーっと一度読み返してからのほうが、細かい間違いが少ないと思うんですよね……。うろ覚えで書くか……。そんないい加減な。\(*`∧´)/

 読み返しても恥ずかしくないものを書けるように頑張ります……無理かもな……

 ┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~

 

 昨日、書き逃げした八月金魚です。すいません本当に……(´;ω;`)ウウ・・・

 「月見」みたいな時代がかったカタい文章を書くのが好きです。あっ、中身は柔くてウェットなんですが。ヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ

 こないだ最終話を思いついたので、連載することにしました。最後まで書けるといいな……頑張ります!

 早速の拍手、ありがとうございます掲載してすぐだと、ろくにリンクも出来てなかったと思うんですが本当に速攻で拍手頂けたのでビックリしました……不手際で、すいませんm(_ _)m

  

 「きみの」に拍手コメント下さった方、小テストは大丈夫でしたでしょうか?長い話なので休み休み読んで頂くのがよろしいかと(*^.^*)ケータイ小説は八月よりずっと上手で面白い書き手さんがたくさんいらっしゃるので、ぜひ色々と読んでみてくださいね。(o^-^o)

 

 アクセスカウンターが2万を超えました。\(^o^)/

 ありがとうございます。゜.+:。(*´v`*)゜.+:。m(_ _)m

 

月が見ている。掲載

 

 久々に新しく小説をブログに掲載しました。……が、目次を作ったり、トップページにリンク貼ったり、そういうことのやり方をすっかり忘れてて、すごい時間かかりました……。( ´・ω・`)

 もうほんとにPC詳しい方にやって欲しいくらい……。htmlの編集なんか、変なことしちゃって全部にアンダーバー入っちゃったし。どうなってんの、コレ、一体……。(´Д⊂グスン

 しかし、晩ご飯を作る時間が迫っているので、もうオチます。

 何か不備があったら教えてください、すいません……m(_ _)m

 

 

 

 

月が見ている。2

 

 第二話

 

  
 遊郭「春霞楼」の一人息子・鼎(カナエ)と春霞楼の娼妓であった雅(みやび)の息子・大和は色街から離れた洋風建築の一軒家に暮らしていた。
 元々は春霞楼敷地内の一角にある離れで暮らしていた二人が、今のこの屋敷に移り住んだのには訳があった。カナエの女癖の悪さである。
 
 カナエは見世の「商品」である娼妓たちに手を付けたのだ。

 大事な商品に手を付けるのは言語道断とばかりにカナエの父である春霞楼の主は一人息子を勘当し、─── 勘当息子を心配した女将は兄弟同然に育った大和に一緒に暮らして様子を見てやって欲しい、と頼み込んだ。

 母親である雅と共に長年、見世に世話になってきた大和は当然のように引き受け、─── 五つ年下で弟同然のカナエを大和なりに心配していたこともある ─── 以前から春霞楼所有のこの屋敷に二人で暮らし始めた。

 それから今まで大和は、春霞楼を手伝う為にここから毎日通っていた。昨日の夜は実に半年振りにカナエを伴って見世に赴き、主人と女将揃っての面会の後、佐野屋を逃げ出したかずさと出会った ───。
「……と、まあ、そんなところやな」
 食堂での朝餉の席で大和はかずさに語って聞かせていた。

 かずさの身の振り方は明日考えようと、大和は自分の部屋に一晩泊めた。大和にとって恩義ある春霞楼と同業の佐野屋はごく近い。昨夜の内に佐野屋に送り届けるのが筋だとも、道理だとも判っていた。

 それでも。
 
(……こんな、子供にお勤めが出来るかい)
 いたいけな子供がひどい目に遭うと判っていて、連れ戻すのは憚られた。十三という年齢と、騙されたことも気がつかず、疑いもしなかったかずさの幼さが、廓育ちの大和をして躊躇わせる。
 
(どうしたもんかな、……)
 思案に暮れる大和に、当の本人は控え目な微笑みを向けた。
「大和さん、かんどうって何?」
 
「大和でええよ。親子の縁を切るっちゅうことやな」
「じゃあ、カナエさん、親子の縁切られちゃったの?」
「建前はな。実際のとこは、まあ、この屋敷かて見世のもんやし、生活に必要な金かて女将さんが出しとるし」

「……あんまり勘当じゃないね」
 遠慮がちながらも的を射たかずさの言葉に大和は苦笑する。
「しゃあないわ。跡取り息子やからな、カナエは。大事にしたらな」
 
 跡取り、という言葉にかずさは昨夜の言い争いを思い出した。
(「大和は女郎屋の跡取りやで」)
「でも、カナエさんは大和さんが……大和、が、跡継ぐって言ってた」
 
「ああ、……それはあいつの勘繰りや。女将さんが俺にカナエを頼むてよう言うとるもんやから。うちとこみたいな大店、カンベンやわ」
 使われとるほうが気が楽や、と大和は最後の漬物を食む。

「……やのにあいつ、旦那様と女将さんが俺に継がせたがっとるて誤解しとる。すっかりヒネてもうて手ェ付けられへん」
 大和はここしばらくの悩みのタネを思い、はあ、とため息を吐いた。
 
 カナエが娼妓たちに手を付けたり、遊び歩いて見世を顧みなかったりするのは、多分に自分の存在があるせいに違いなかった。

(「使用人の不始末で俺のクビ切れば済む話や」)
 昨日の夜、そう言ったのは成り行き任せの勢いではない。以前から暇をもらうことを考慮していたからこそ出た言葉だった。
 
(……俺が居らんようになればあいつもちっとはしゃんとするやろ)
 そうは思いながらもなかなか行動に移せずにいた。見世は男手が足りなくて忙しい。今まで育ってきた故の愛着もある。主や女将から受けた恩義に報いようと忠実に働いてきた分、信頼もあり、自分から暇乞いをすることに二の足を踏んだ。
 
(……ま、言うても、この子使こてまでクビ切ってもらおとは思わんけど)
 ご馳走さまでした、と行儀良く手を合わせるかずさをつくづくと眺めた。
 
 目鼻立ちが整った小さな顔は大和の拳ほどしかない。大和が貸したカッターシャツとズボンは大きすぎて痩せぎすなのが目立ち、男装した少女のような艶めかしい感じがある。
 じっと見られて困ったのか、首を傾げる仕草をした。

(……なるほど、かわええわな)
 大和は咳払いして、ごっそーさん、と席を立つ。食器は自分が洗うと言うのでかずさに任せて、茶を淹れた。

 洗い物が済むと、もう一度二人で差し向かいに座り、話を切り出した。
「これからどないする?……佐野屋には帰りたないやろ」
 おずおずと頷いたかずさは申し訳なさそうに大和を見る。うーん、と大和は唸り、腕を組んだ。
 
「帰ったところで折檻やろしな。親……は」
 娼家に子供売り飛ばすぐらいやから当てにならんな、と大和が口ごもると、かずさが後を引き受けた。
「……二人とも、流行り病で亡くなって……親戚の家から、働きに出されて」
「……ああ、そうなんか、……」

 ますますかずさの身内は頼りにならないと判った。どうしたもんか、と食事の間も考えた問題にまたもや頭を悩ませる大和に、かずさは頭を下げた。
「こ、ここに置いてください」
「かずさ」

「俺、何でもします。掃除も洗濯もします。ご飯も作ります。出来ること、何でもしますから、お願いします」
「……」
 大和は今日二回目のため息を吐いた。
 
「……ここに置くのはかまへんねん。正直言うてな。……ただ、ここから色街まで近い。佐野屋に見つかるかもしれへん。俺のクビが飛ぶんはええけど、お前は」
「─── 置いたったらええやん」
 
 寝巻きの浴衣のまま起きてきたカナエは、食堂に入って来しなに話に割り込んだ。
「カナエ」
「今さら佐野屋連れてったかてしゃあないやろ。お前のクビ飛ぶで。ウチの見世かて、よその見世の商品かっさらったていい恥晒しや。そのガキかてひどい折檻くらうで」

「せやから、どこか遠くに逃がそ思て……見つからんところに」
「当て、あるんか?」
 なかった。不安そうな目を向けるかずさに、大和は困って自分の首の後ろに手を当てる。
 
 そんな二人の様子を見て、カナエはにやにやと笑いながら椅子を引いてくる。かずさのそばに陣取った。
「それに、何でもしてくれるんやろ。楽しみやな?」
「……」
 
 かずさを上から下まで眺めるカナエの視線に大和は苛立ちを抑えきれない。
「よう似合とる、それ。男モンの服着た女の子みたい、……ホンマはシャツだけの方がええけど」
「カナエっ!」

「なんやねん、いきなり大声出しな。たまげるやんか」
「お、……お前が変なこと言うから注意しただけや。かずさは、子供やで」
 カナエは面白くなさそうにふん、と鼻を鳴らした。

「いーっつもそうやな、大和。お前は叱る方で、オレは叱られる方。春霞楼の一人息子はしょーもないけど跡取りはしっかりしとるて評判やもんなあ?」
「……くだらん。跡取りはお前や。そんなんに耳貸しとる暇あったら、旦那様に頭下げて見世手伝い」

「嫌や。お前がおったら充分やろ」
 ふい、と顔を背けて、かずさに向けた目を細めた。 
「残念やなあ、お前が佐野屋におったらオレが贔屓にしたったのに」
 
「カナエ!!」
 見世など知ったことではない、と言わんばかりの態度と、 ─── あからさまにかずさを性的対象として捉えている言葉に、大和は思わず声を荒げる。
 そんな大和を無視したカナエは、かずさに蕩けるような笑みを見せた。

「とりあえずメシ、チョーダイ? ハラ減った」
「は、はい」
「かずさっ、残りもんで充分やからな!……干物焼いたりせんでええってッ」
 
「やかましなあ」
 かずさと一緒に台所に立つ大和を横目で見たカナエは、我関せずとばかりにあくびをした。

 
  

 
 

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月が見ている。:目次

 

 ある娼家から逃げ出したかずさは、娼妓の息子・大和と妓楼の跡取りであるカナエに出会い、匿われる。

 次第にかずさと大和は惹かれ合うようになるが、カナエに振り回され、本当の気持ちを告げる事が出来ない……。

 続編完結しました。ありがとうございます。m(_ _)m

 

 ~携帯電話で閲覧される方へ~

 各話の最後にある[画像]はweb拍手です。
 クリックすると別サイトに飛びますが(ココログのブログパーツにweb拍手がない為、お借りしています)さらに、「@niftyモバクシーβで見る」か「直接見る」を押して頂くと「web拍手送信完了」となります。
 面倒ですが、拍手を頂くととても嬉しいので宜しくお願いします。

 

  第一話

  第二話

  第三話 

  第四話 

  第五話 

  第六話

  第七話 

  第八話 

  第九話 

  第十話 

  第十一話 

  第十二話 

  第十三話

  第十四話

  最終話

  続・月が見ている。1 

  続・月が見ている。2 

  続・月が見ている。3 

  続・月が見ている。4 

  続・月が見ている。最終話

 

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月が見ている。1

   

 第一話

 

  
 ひと一人がやっと通れる細い路地を、かずさは駆け抜けた。心臓が、どくんどくんと脈打っている。呼吸も荒い。
 明かりが遠ざかりどんどん暗くなっていく。と、少し広い場所へ出た。

「……早く探せ!」
「こっちだ!」
 追っ手の声がし、とっさにすぐ傍の木箱に掛けられていた筵(むしろ)に身を潜める。
 足音がふたつ、通り過ぎていく。

 人の気配がなくなるとかずさは詰めていた息を吐き出し、しゃがみこんだ。
 土で汚れた自分の裸足の足を見つめる。泥はねが浴衣のすそにいくつも付いていた。

 ─── 二親とも流行り病で亡くしたかずさは預けられた先の親戚から、佐野屋という娼家へ、三日前、働きに出されたばかりだった。今は下働きだけれどこの見世で一生働き、いつかはみんなに認められたい ─── そう思いながら、懸命に勤めていたかずさはつい先刻、主の寝間に呼ばれた。

(「かわいいねえ、おまえは。大人しくしておいで、……」)
 ぞっとして体が動かない。声も出ない。
 いやらしく笑って主がのしかかって来る。浴衣の合わせを開こうと手が伸びてきて。
(……怖かった)

 気がついた時には、主の頭を枕元にあった硝子の灰皿で殴っていた。そのまま思い切り押しのける。主の悲鳴を聞きつけ、襖の向こうにひとが集まってきた。どうなさいました旦那さま、という声を聞いたとき、かずさは裸足のまま中庭に飛び降り、通用口から逃げ出していた。

(ここどこだろう?)
 かずさが筵の陰から出ようか迷っていると人が近づいてくる気配がする。
 しゃがみこんだまま、かずさは息を殺した。

「……騒がしいなあ」
 ひとり言らしき声。次いでマッチを擦る音がし、ぽっと筵の向こう側が明るくなる。光は一瞬で消えて、おそらく燃えがらを、ざりざりと踏みつける音が響く。
 煙が辺りに満ちた。

「……けほっ」
 かずさは咳を我慢しきれなかった。煙草の男の視線がこちらへ向くのを感じる。
 出し抜けに筵がめくられた。

「……これはこれは」
 おどけた口調が頭上から降ってくる。
 かずさの顔から血の気が引く。体が動かない。しゃがみこんだままゆっくり見上げると咥え煙草の男がかずさを見下ろしていた。

 ほとんど明かりのない中、かずさがかろうじて判ったのは、男が煙草を指に戻した仕草だけだった。
「おまえ、佐野屋から逃げ出した奴やろ。さっきから男衆が探しとるわ。やかましいてかなわん。もう見つかってもうてんから、見世、帰り」
 かずさは首を横に振って動こうとはしない。

 途端に男に声が不機嫌そうになる。
「売られてきたんやろ。おまえ買うのに佐野屋がなんぼ払たか知らんが、結構な額のはずやで。うちの見世かて同じや。足抜けはあかんの」
 ちがう、ちがう。売られてきた女の子じゃない。ただの下働きで、ずっとあのお店で働こうと思ってて。

 そう口を開こうとしたかずさの腕を掴んで、男は筵の暗がりから引きずり出した。
「なんや。……男やないか」
 呟く男の声もろくに耳に入らなかった。かずさは無我夢中でその手を振り払って駆け出す。
 ─── すぐに誰かにぶつかった。
 
「な、なんや」
 抱き止められ、顔をのぞき込まれる。煙草の男と同じ言葉遣い。
 かずさの膝が、がくがくと震えた。逃げられない。

「おう、大和、ええとこ来たな。そいつ佐野屋から逃げた奴やで。……男のガキやけど。捕まえときや。自分で帰られへんみたいやから、オレが連れてったるわ」
「佐野屋の?……」
 ふいに雲が切れ、月が辺りを照らす。

 自分を捕まえている、大和と呼ばれた男がすぐ目の前にいた。短髪で長身。引き締まった精悍な顔立ちに戸惑いの色が浮かんでいる。
     
 煙草の男は吸殻を地面に捨て、靴でもみ消す。近づいてくると意外に若い男であることが知れた。二十代前半だろう大和よりも五つは年下に見える。髪を肩ほどまで伸ばして、線の細い神経質そうな顔でかずさの腕を無造作に掴んだ。

 かずさは大和にしがみついた。

 煙草の男は片方の眉を上げて皮肉そうな表情を作る。
「アホかお前。大和は女郎屋の跡取りやで。足抜けした奴、助けるわけあるか、……行くで」
「待てやカナエ、跡取りはお前や。一人息子やろが」

 大和は煙草の男 ─── カナエの手をもぎ離して、かずさを背中にかばう。
 カナエは目をすがめた。

「そのガキ、逃がすつもりか? 大和。春霞楼(しゅんかろう)継ぐ奴とは思われへんな」
「継がへん、言うてるやろ。跡取りはお前やねんから、俺がこの子逃がしたかて使用人の不始末で俺のクビ切れば済む話しや。見世には迷惑かからん」

 かずさをシャツの背中にしがみつかせたまま、大和はカナエと睨み合う。
 先に根負けしたのはカナエの方だった。

「……オヤジとおかんの話、なんやってん。オレとお前呼びつけといてオレだけ先に帰すいうことは、お前に正式に見世、まかしたいゆう話ちゃうんか。そーなんやろ?」
「ちゃうわ、アホ。お前の暮らしぶり細(こま)こう聞かれただけや。いつも忙しいて、よう話せんからて、……女将さん、お前んこと心配しとんねんで」

 カナエはふん、と鼻を鳴らした。
「どうだか、……おまえと比べたら話にならんバカ息子やからねえ、オレは」
「またそないなこと、……」
 
 言い争いに発展しそうな大和とカナエの声を遮ったのは、忙しなく近づいてくる人の気配だった。自分を捜しに男衆が戻ってきたのだ、と気付いたかずさはびくんと身体を竦ませる。
 背後のかずさを振り返った大和は真っ青に血の気の引いたその顔を見て、ため息を吐いた。

「─── ウチ、くるか? この、ヒネたカナエと二人暮らしやけど」
 かずさはおどおどしながら、大和とカナエを交互に見つめて頷いた。

  

 

 

 

 佐野屋が少年も扱う娼家だとかずさに教えてくれたのは、カナエだった。
「ま、二、三人しかおらんけどな。そういうの専門とこには行き難いお客もおるやろ。表向き女郎屋やけど裏でそれなりのゼニ出せば、お前みたいな可愛らしい顔したガキ相手にデキるっちゅうわけやな」
 ウチの見世ではやってへんけど、と続けるカナエの視線に目を伏せて、かずさは呟く。

「でも、……ただの下働きって聞いて、……そんなの」
「騙されたんやろ。ようある話や。お前のオヤかて納得ずくやで、きっと。……なんや、いきなりお客に組み敷かれてびっくりして逃げ出したんか?」
「……」

 主の布団に引きずり込まれて、その頭を灰皿で殴って逃げた、とは言えなかった。殴ったのも、相手がお客ではなく主なのも、とても拙いことのような気がした。
 かずさはうな垂れて、自分が腰掛ける飴色の椅子の猫脚を見つめた。

 大和とカナエが暮らしているのは、洋風建築の二階家だった。一階部分には板張りの食堂や応接間、浴室があり、二階にはそれぞれの部屋がある。
 大和に手を引かれてこの屋敷に連れて来られたかずさは、玄関の三和土で足を拭かれ、食堂へ通された。物珍しさにきょろきょろと見回す。

 飴色の木造りの椅子に座るように大和に促され、腰掛けると、大きなテーブルを挟んで目の前に座ったカナエが無遠慮な視線を投げかけてくる。自分は働きに出されただけで、売られてきたわけじゃない、と小さく口にするかずさに、先ほどの佐野屋が少年も扱うという話をカナエはした。

「お前みたいなん、ただの下働きで済むわけないやん。……ちょっと我慢したらええ目見られるで。特別扱いらしいからな」
「やめろや、カナエ」
 湯飲みと急須でカナエの舐めるような視線を遮ったのは大和だった。

 かずさはほっとして大和を見上げる。─── ここに来るまで大和は一貫して、かずさの味方をし、庇っていた。
「嫌に決まっとるやろ、そんなん。年端もいかん子供に変なこと言いな」

「年端もいかん、ねえ……なんぼなん、トシ」
「……じゅう、さん……」
「ほら、子供やんか」
「どこがや。充分そういう役に立てるトシやで」

 カナエの言い様にむっとした大和はガタガタと椅子を引いて、腰を下ろす。湯飲みに順番に茶を注ぎ、それぞれの前に置いた。
「子供は子供や。おかしな目で見んなや」
「おかしな目で見とるの、お前の方ちゃうんか。……やたらこのガキに優しして」

 にやにやと意味有り気に笑うカナエを大和は睨んだ。
「おー怖っ。なあ、お前、……お前、名前は?」
「か、かずさ……」

「かずさ。かずさちゃんな、……このおにィさんには気ィ付けたほうがええで。どんな下心あるか判れへん、……」
「カナエ!」
 
 怒った大和を笑い飛ばしたカナエは席を立った。
「オレ、もう寝るわ。疲れた」
 食堂を出て行くカナエを、大和は苦々しい面持ちで見送る。
 
 どうしたらいいのか判らずに、かずさは湯飲みの水面に視線を落とす。
 そんなかずさの気を引き立たせようとしてか、大和はぎこちなく笑いかけた。

 

  

   

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