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月が見ている。13

 

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 第十三話

 

  
 ……大和の部屋に飛び込んだかずさは、後ろ手にドアを閉めた。
 大きな窓からの月明かりに、少し開いた箪笥の小引き出しが照らされている。
 
 かずさはゆっくりと近づき、中を覗いた。皺になった写真の中の翠の笑みがぼやける。
 
 部屋に射し込む月光が、写真を手の平に載せたかずさを柔らかく包んだ。

「……」
 立ち竦んだままのかずさの瞳から幾粒も涙が落ちた。止める術を持たないかずさは、声を殺すことしか出来ない。
 大和に、知られた、という事実が頭の中を廻っていた。

(嫌われた。もう、駄目だ、……)
 黙っていてくれるって言ったのに。言わないでくれるって約束したのに。
 
 ……しかし心のどこかでカナエがそんな約束など守るはずない、と判っていたような気がした。カナエが口止め料と称する行為はいずれ自分には払い切れなくなる。現にさっき、いやだ、とカナエに抵抗してしまった。

 翠という好きなひとがいるひとを、自分など眼中にないひとを好きになった自分が悪い、とかずさは思った。もっと早く諦めればよかったのだ。
 判っていても、思うのは大和のことばかりだった。

 自分をちゃんと扱い、優しくしてくれた大和。頭を撫でてくれた大きな手。褒めてくれた笑顔。─── 自分の気持ちを知り、驚いていたその気配。
 
「やまと、……」
『子供で、男やんか。そんな気なるか、気色悪い』
 カナエに、されていたことも知られてしまった。……大和はもう、口を利いてもくれまい。
 気持ち悪い、と冷たい目で見られて。二度と笑いかけてくれることもなくて。

(大和、……大和……)
 どんなに呼びかけても返事もしてもらえない。

 ─── 泣きながら大和のことを想うかずさは、ドアの外に立つ気配に気付かなかった。
 
 前触れもなくドアが開き、かずさはびくんと身体を竦ませる。
 ……大和が静かに部屋に入ってきた。

 箪笥の前で涙をこぼすかずさに大和はゆっくり近づいていく。
「……かずさ」
「……ごめんなさいっ」

 不意にかずさは膝を付き、よれている翠の写真を大和のほうに向けてカーペットの上に置いた。
 頭を下げる。
  
「ごめんなさい、ずっと、黙っていて、騙してて、ごめんなさいっ……」
 他に何と言えばいいか、判らない。大和をずっと、騙していた。……弟のような顔をして、大和を信用させて。本当は、カナエが大和だったらいい、と思っていた……。

 言葉が出て来ず、涙がぽつぽつとカーペットに染みを作る。

 何か言わなくてはいけない。せめて、この写真が歪んでしまったことの言い訳をしたい。
「……み……翠さんの写真、わざとじゃないんだ、……なお、直そうと、したけど、直んなくて、……やまとのすきなひと、見た……見たくて、ごめ……ごめんなさい……!」
   
 額をカーペットに擦り付けんばかりに小さくなって泣きながら謝るかずさを、大和は見下ろした。─── 翠の写真。
『翠の、お前の好きな女の写真見とうて、オレん部屋に押しかけてきて』
 真実味を帯びたカナエの言葉が頭の中で反響する。
 
「……カナエの部屋行ったて、ほんまか……?」
 掠れた声が、大和の口から押し出された。
 
「……」
 かずさは顔を上げることさえ出来ない。─── あの時、何をされたか、どうしても大和に知られたくない。

「答えろや」
「……」
「答えろッ!」

 びくッと浴衣の肩を震わせ、かずさは頭を上げた。それでも大和と視線を合わせることが出来ずにうな垂れる。
 
「………あいつに口止め料払たん」
 怒りを孕んだ大和の声。僅かな沈黙の後、うな垂れたかずさの頭が微かに頷いた。

「……カナエさん……言わないでくれるって、……だから……」
 
 震えるかずさの声に大和の中で何かが切れた。─── 片手に持っていた水色の和紙がぐしゃり、と無残に潰れる。無意識に、それを床に投げつけた。
 
 身体を竦ませるかずさの細い腕を掴んで立ち上がらせ、ベッドに突き飛ばした。
 体勢を崩して倒れこむかずさの上に、大和は馬乗りになる。
 
 あっという間の出来事だった。かずさは恐怖から顔と頭を交差させた腕で庇う。殴られる、と思った。

 大和はいきなり浴衣の袷を掴んで、開いた。─── 月明かりに、赤いくちづけの跡がいくつも晒される。……それは、かずさがカナエのものになった、という事実を、そしてそれはかずさの合意の上だということを示していて。
 血が逆流するような気がした。
  
「……知らんかったんは、俺だけ、ゆうわけやな?」
「やま……」
「お前がカナエに触らせとる間、何も知らんとのほほんとしとったんは俺だけゆうわけや」

 なぜ気がつかなかったのだろう。かずさはカナエを見ると目を伏せていたのに。話すとき、おどおどとしていたのに。俺が仕事に行く間、カナエとかずさはふたりきりになってしまうのに ──。

 ……こんなに頭に血ィ昇ったんは生まれて初めてや。
 
 噛み締めた奥歯が、ぎりり、と鳴る。大和は、怯えて口も利けなくなっているかずさを押さえつけた。

 くちづけの跡の残る白い肌を手の平で撫で回し、唇を這わせる。カナエの痕跡を消したかった。
 かずさは声を殺し、愛撫とは程遠い乱暴な大和の仕草に耐えていた。大和がなぜ怒っているのか判らない。考える余裕はなかった。

 大和の手がかずさの浴衣を結んでいた兵児帯に伸びる。
「……や……やまと……」
 怯えるかずさの微かな声。身を捩り、嫌がる僅かな抵抗に大和はかっとなった。

 かずさの身体を強引にうつ伏せにし、その背中に両腕を押さえつけた。解いた兵児帯で両方の手首一緒に縛り付ける。かずさの抵抗を封じた大和はまた彼の身体を仰向けにすると、下着を引き下ろした。

 もう抵抗する術はない。羞恥から赤く染まるかずさの身体の全てに大和は視線を這わせた。
 背中で手を戒められ、そこに浴衣が縺れているせいで、くちづけの跡の残る薄い胸から腹までなだらかな曲線を描いている。頑なに閉じた足の間に大和は無理やり身体をこじ入れた。

「……っ」
 大和の大きな手が折れそうに細い足を撫で、舌で色の薄い胸の突起を執拗に舐る。

 びくり、とかずさの身体が硬直する。─── 足を撫でていた大和の手が、反応を見せていないかずさの中心を包み込んだ。
「─── あいつにもこうやって触らしたんやろ」
 膝を折って隠そうとするかずさを許さず、押さえつけ、大和は露悪的に囁いた。
 
「可愛らしい声聞かしたったんやろ、あいつに。俺にも聞かせろや」
 かずさの知る大和なら決して言うはずのない言葉だった。嫉妬と怒りが大和の中で渦巻き、我を失わせていた。

 大和の手の中でかずさのものが次第に反応を見せ始めた。
「……はっ……は、う、…ひっく……は、あ……っ……」
 目の縁を赤くし、しゃくり上げながら、あえかな息を吐くかずさに大和は目を眇めた。

「イロっぽいやんか。……そんな声上げて、俺んこと笑っとったんやろ。何にも知らん俺はさぞかしアホみたいやったろうな?」
 かずさは精一杯頭を横に振った。本当に大和を笑ったことなどなかった。ただ、大和に嫌われたくなくて。
 
 かずさの体液で濡れた指を大和は双丘の間に進ませた。その場所をなぞられ、反射的にかずさの身体は逃げを打つ。
 それを許さず、大和はベッドとかずさの背中の間に片腕を差し入れて、噛み付くように小さな唇を塞いだ。

 無理やり舌を挿し込み、口腔内を犯す。そうしながら ──。
 硬く閉じられたすぼみに指先を埋めた。
「……んん……っ……!」
 
 カナエにこの場所を触らせ、征服させたのかと思うと大和の心にぐらぐらと煮えるような嫉妬が湧き上がってくる。もっと奥に進めて自分の跡を残してやりたい。カナエの痕跡など、消してやる。
 そう思いながら、大和はかずさの様子に違和感を覚えていた。

 まるで誰にも触れられたことなどないような感触が指を通して伝わってくる。冷たい汗がかずさの全身を包み、緊張しきっていることが知れた。霞んだような目がほんの一寸先の自分の顔を見つめ、その縁から、つっと涙がこぼれる。

 もう少しだけ指を潜り込ませた。
「っああ!」
 はっきりと ─── 悲鳴だった。怯んだ大和はその場所から指を退いた。

 急速に頭が冷えてくる。─── かずさはカナエを受け入れていない。恐らく、指でさえも。
「かずさ、……お前」
 真実に戸惑い、大和は泣きじゃくるかずさを見つめた。

 

   
   

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コメント

どうもです~♪
毎度の事ながらお邪魔させて頂いてます(@^▽^@)

つ、ついに大和が~!!キャハ━━━━(#゚ロ゚#)━━━━ッ!!
やっぱり、そんなに嫉妬に狂うくらいかずさのことが好きだったんですね♪♪いつかこいう日が来るかもと覚悟していましたが、二人の気持ちのすれ違いが切なくて、胸キュンです。・゚・(ノД`)・゚・。
兵児帯良いです♪♪金魚の尾ひれみたいで可愛いですよね~!

テンプレート秋仕様に変えられたのですね!?びっくりしちゃいましたオォォー!!w(゚ロ゚)w
上のうさこも可愛いです。金魚さんの小説の雰囲気にぴったりですね~♪

またお邪魔させて頂きます♪(。´Д`。)ノシ
 
 ≫コメントありがとうございます^^*
 テンプレート変えてみました~ヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ
 今連載してるのが「月見」なので十五夜の月。……この安直さ……。でもでも、気に入ってるので触れて頂けて嬉しいです^^*
 
 兵児帯、いいですよね~(≧∇≦)兵児帯萌え?←バカ┐( ̄ヘ ̄)┌
 ただ、カナエのお下がりなんで、ソレを子供カナエが締めてたと思うと妙な気持ちになること請け合いです。(lll゚Д゚)
 
 またブログにお邪魔させて頂きますね~^^*

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