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2009年9月

 

 サイト「小説家になろう」様のリニューアルメンテナンスで作者ページに入れないのです

 なんのバックアップも取ってなかったんですが、もし執筆中小説が消えてしまったら「月見」の続編がパー。……あは、あははは……なぜ、なぜバックアップしとかなかったんだ、私……。

 PCに疎いせいか、データをバックアップするという習慣が皆無なのです。PCに保存するわけにはいかないし(家族全員共有PCなので旦那さんに見られる恐れが!(lll゚Д゚))USB?ってナニ?外部メモリ?とかって……きっとそういうのに保存するんですよね。

 今度買ってこないと……。もう一年以上も文章書いて掲載してるのに、バックアップなしなんて……。

   

 

 「月見」をちょこちょこ加筆修正しています。ちょこちょこ、ちょこちょこ……。

 一発でびしっと決めれるといいんですが、大概がもう、下手なので仕方がない。毎日のように読み返しては、ここがダメ、ここもダメ、あっちもそっちも書き直し……。┐(´-`)┌

 掲載する前に修正しろ、私……ε-( ̄ヘ ̄)┌ ダミダコリャ…

 

月が見ている。最終話掲載\(^o^)/

 
 やあ、最終話まで来ましたね……十五話で完結。このくらいの話って何話で終わるのかな~と思いながら書いてたんですが、キリよく十五話で終わらせることが出来ました。

 無事、完結を見ることが出来て感無量です。(≧∇≦)拍手やコメントを下さったり、ランキングサイトに投票して応援して下さった皆様のおかげです。ありがとうございます。m(_ _)m

 あと、続編を二、三話書く予定です。大和がかずさを春霞楼に連れて行ったり、翠が出て来たり、カナエがあたふたしたりする話になるはずです。(?)

 ところで……。あ、長くなります。

 

続きを読む "月が見ている。最終話掲載\(^o^)/" »

月が見ている。最終話

 

 最終話

 

 頬を腫らし、だらしなく斜めに椅子に腰掛けていたカナエは耳を疑って、思わず聞き返す。
「─── なんやて?」
 たった今、大和から信じられないようなことを聞かされた。

「やから、かずさを連れて見世に行く。旦那様と女将さんに紹介するんや。かずさの事情も話す」
 何の迷いもない大和の言葉に、カナエはぽかんと口を開けた。
 

 朝だった。大和に殴られて完全に酔いが回ったカナエはそのまま食堂で倒れた椅子と共に寝てしまい、起きてきたかずさにちょっとした悲鳴を上げられた。その悲鳴で飛び起きると「だっ、大丈夫、カナエさんっ」とかずさは泣きそうな声を上げて心配し、騒ぎを聞きつけた大和も寝巻きの浴衣のまま階下に降りてくる。
 
 カナエの腫れた頬と青黒く切れた唇の端の傷は大和によって拵えられたもので、その原因が自分だと判るとかずさは顔を真っ赤にして「洗濯、してくるね」と食堂から出て行ってしまった。
 
 いつもより大分早起きになってしまったが、二度寝する気にもなれず、浴衣の大和と昨日の服のままのカナエは差し向かいで茶を飲んでいた。
 熱い茶が切れた頬の内側に沁みる。軽く舌打ちしてふて腐れるカナエに向けてへの、藪から棒な大和の決意表明である。

 まじまじとカナエは大和を見つめた。大和も真っ向からカナエの視線を受け止め、逸らさない。
「─── 春霞楼をクビにしてもらう。余所の見世の商品、かっさらってもうたんやから当たり前やな」

 落ち着いた大和の物言いに、カナエは冷静さを失った。
「き、き、きっ、気でも違たんか大和っ?」
「俺はこれ以上なく正気や」
「お前がおらなんだら見世どないすんねん!?」 
「継ぐのは最初からお前や、俺やない」

 あっさりと大和は言い、茶を飲んだ。
「言うてるやろ、跡取りはお前やて。俺はただの使用人。俺がおらんようになっても春霞楼の屋台骨は小揺るぎもせんわ」
「そんなわけあるかい! 見世はお前が頼りやねんで!?……そ、そ、そうや、クビんなってどないするつもりやねん、ここには住めへんで、かずさと二人で佐野屋から逃げ回って」

「それなんやけどな、かずさを身請けしよ思とる」
「みうっ……!?」
 おかしな声を上げて、カナエは目を剥く。

 対照的に大和は穏やかな表情を浮かべた。
「外、自由に歩かせてやりたいんや。ずっと家ん中閉じ込めて可哀想なことした、……旦那様から毎月頂いとる給金、ほとんど使わんで取ったあるし。足りんかったら佐野屋さんに雇ってもろて身体で返そ、思て。あ、俺ん身体やけど。……春霞楼に迷惑かけんように、クビ切ってもろてからな」

 春霞楼の使用人のままやったら、佐野屋の商品攫って一ヶ月も囲った挙句に落籍せたい言うてきた、言われるやろけど、クビんなればただの客やからな。
 色街の噂話にどれだけ尾ひれがつくか、熟知している大和は少し気恥ずかしそうに「春霞楼の大和」のままだったら飛び交うであろう流言を推測してみせる。
 
 あながちデマとも言えんのが辛いところやな、と照れ笑いしながら大和がカナエに目を向けると、呆然としていた。
「……あかん」
 ぽつん、とカナエが呟く。腫れた頬を引きつらせたかと思うと、いきなり、立ち上がった。
 
「あかんあかんあかんそんなんゼッタイあかん! お前アホちゃうか、うちの見世継ぐのやめて身代半分しかあらへんような佐野屋の下男なる!? お前アホやろ!!」
「アホでかめへん。俺はかずさと一緒にお天道さんの下、歩くんや」
「お天道さんに顔向けでけへんようなこと昨日の夜かずさにさんざんしといて何しれっとぬかしとんじゃボケッ!」
 
「……なんで知っとるん?」
「あの状況でふたりっきりになってなんもないわけないやろ!! かずさはめちゃめちゃイロっぽくなっとるしお前はお前で可愛くてたまらん目付きでかずさ見とるしッ! アホか!」

「……けど、まだ、最後まではしてへんで」
 なんや可哀想になって、と大和はごにょごにょと語尾を濁す。春霞楼の跡を放り出して佐野屋で働く、と聞かされたカナエは喉元に刃物を突きつけられたような心持ちがして、それどころではない。
 
「そんなんどうだってええわ! ヤろうとヤってなかろうと知ったこっちゃ……」
 そんなカナエの金切り声を聞きつけて、かずさが食堂に顔を見せた。
「ど……どうしたの? 大和?」
 
 ケンカ、しないで、と不安気に大和に寄り添う。いつもの通り、お下がりの白いカッターシャツとズボンだったが、言われてみればひどく色っぽくなったような気がする。昨日の夜さんざんそういうとこ見してもろたせいかな、と大和は目を細めた。
 
「心配しなや。ただの話し合い、……ちゃんとお前のええようにしたるさかいな」
 優しく言ってかずさに笑いかける大和。かずさはほっとしたように頷く。
 
 椅子を蹴り倒すような勢いで、カナエはそんな二人に詰め寄った。
「かずさっ、かずさ、オマエ大和止めろや! こいつアタマどうかしてもうた、春霞楼クビにしてもろて佐野屋に見世替えする言うて、……お前かてちっさい見世の下男より大店の旦那の方がええやろ!?」

「え……俺、は」
 かずさは大和をちらりと見た。恥ずかしそうに俯く。
「やま……大和が、そばにいてくれたら、それでいい、から」

「そ、……」
 かずさの様子に当てられ、絶句するカナエに、大和は鼻を鳴らして見せた。
「かずさには昨日の夜、話した。俺を止めさせようとしてもムダやで。諦め」

 もじもじとしているかずさの手を取って、大和はそっと両手で包み込んだ。
「自由にしたるから。お前の好きにしてええねんで。俺、一文無しンなるし、きっと」
「じゃ、じゃあ俺が働くね。お金、全部大和にあげる、……ずっと、そばにいてもいい……?」

 大和はかずさを引き寄せた。椅子に座ったまま、細い身体を抱きしめる。
「そんなん言われたら、自由に出来へんくなるやないか」
「大和、……」

「こら。こらこらこらこらこらッ、なにイチャついてんねん! オレがおるの忘れてませんかー!?」
「忘れてへんで、若旦那」
「わ……」
 
 若旦那。その言葉はカナエに耳鳴りを招いた。
「わかっ……若旦那やて? ダレがやねん!? 俺まだ十七やねんで!」
「それがどないしてん。見世継ぐんは最初からお前しかおらんねんで、カナエ。若旦那やないか」

 ─── ありえへん。
 
 思考が一時的に止まったカナエの目の前で、大和は膝の上に座らせたかずさのズボンの腰に手をまわす。小さなその耳朶に目を細めて囁いた。
「そうや、……薔薇の菓子、潰してもうてすまんかったな。新しいの買うたるから」
「んん……いいんだ、もう、いっこしかなかったし、……」

 それにあれは大和の身代わりだった。ほんものがこうして近くにいてくれるのだから、身代わりは必要ない。そんな気持ちを上手く言葉に出来ずに、かずさは大和の硬い髪の毛に頬をすり寄せた。

 そんなかずさを見逃さず、大和はその耳の下に口付ける。
「や……ダメだよ、大和、……は、恥ずかしいから、下ろして」
 カナエの目を気にしてかずさは大和の膝から下りた。大和は余裕に満ちた笑みを浮かべて立ち上がる。
 
「まだ洗濯終わってへんやろ? 手伝うたる、」
「え、……でも、……へ、へんなこと、しない……?」
 大和の声がやけに甘く、優しく聞こえ、かずさは警戒するように上目遣いを向ける。昨夜一晩で大和がどんなに助平か、思い知らされていた。

 そんなかずさに大和はにやりと笑って見せる。
「それ、昨日の夜みたいにヤラしいことしててフリ?」
 たちまち顔を真っ赤にしたかずさは頭を横に勢いよく振った。
 
 まるで周りのことなど目に入っていない二人を前に、カナエは立ち尽くすしかない。
 
 跡取りと目されていた大和の暇乞いに春霞楼は上を下への大騒ぎになるだろう。
 自分の勘当は早々に解かれ、下働きの仕事から主である父の仕事、大店を切り回す手腕を、一から覚えさせられる。
 それは何年もかかり、その間も、本当の若旦那に納まっても、遊ぶ暇などありはしない。

 ─── 大和を本気で怒らせた、バチが当たった。

「なんもせえへんて」
 言葉とは裏腹の、大和の不穏な目の色に気付かず、かずさは素直に頷く。

 昨日手に入れたばかりの恋人と、その肩を抱いて食堂から出て行く大和の背中を、カナエは殴られた頬の痛みも忘れて為す術なく見送った。

 

                         end.

 

 ここまでお付き合い下さいましてありがとうございました。m(_ _)m
 大和とかずさ、そしてカナエの話はひとまずこれで終わりです。
 続編か、もしくはまた違う話でお目にかかれたら嬉しいです。

                       八月 金魚 拝

  

   

     目次続・月が見ている。  

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月見第十四話更新しました♪

 

 月が見ている。第十四話、更新しました~\(^o^)/

 まあそんなこんなでアレですが、なんでしょうね、(十四話がらぶらぶなんでそれをグダグダ言うのは気恥ずかしいのでモジモジ(。_。*))))何書きましょう?

 そうだ、先月誕生日だったので、二十冊ばかり本を買ってもらいました。(←誕生日プレゼント)

 

 世界の「神獣・モンスター」がよくわかる本 (PHP文庫) 、樹霊の塔 伊集院大介の聖域(栗本薫著) 、最後の一球 (講談社ノベルス)(島田荘司著) 、リベルタスの寓話(同左) 、咲くや、この花 左近の桜(長野まゆみ著) 、幽談 (幽BOOKS)(京極夏彦著)……などなど。

 本を買う前に本棚を買え(`Д´)、と旦那さんにいつも怒られますヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ←懲りてないだろ……。

 あッ、マンガ買うの忘れた!ちきしょう、私としたことが~゚゚(´O`)°゚痛恨のミス!(@Д@;

 仕方がないので地道に本屋に行って、家計に響かないようにちょっとずつ買おう……( ´・ω・`)

月が見ている。14

 

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 第十四話

 

  
 ぐったりとしたかずさの身体を横向きにし、手首の戒めを解く。そこにわだかまっていた浴衣がするりと脱げた。
 月明かりに鬱血の痕を目にした大和をひどい後悔が襲った。

「……すまんかった」
「……俺、……やまと……」
「判っとる。……言わんでええ」

 声を掠れさせながら必死に弁解しようとするかずさを大和は遮る。身体を触らせたり、口付けを許したりはしたかもしれないが、一線を越えることをかずさは拒んだ。
 それを思い知り、大和は嫉妬に駆られた自分の行動を悔やんだ。

「……さっき、……や…やらせろって……カナエさんが……でも、俺、嫌で……怖くて……他のこと、なんでもするから、い……言わないでって……大和に嫌われたくなかっ……」
 乱暴されかけた衝撃からか、かずさの取り留めのない言葉と涙は止まらず、横向きのまま顔を手で覆った。
 
「……判った。判ったて……俺が悪かった。泣きなや」
 かずさの背中から手を伸ばす。細い手を取り、手首の痕に唇で触れた。
「……大和」
 
「……頭に血ィ昇って見境いのうなってもうた。……あきれたやろ。ほんまは、ものすごい嫉妬深いねん、……ほんまにヤっとったらカナエのヤツ、半殺しや」
 
 最後を低く囁きながら、大和はかずさの身体を夏掛けでくるむ。その上からそっと抱きしめた。

「……」
 大和の体温が薄い生地を通して伝わってくる。かずさはすぐそばで自分を見つめる大和をぼんやりと見上げた。

 かずさの視線を受け止めて、大和は困ったように眉尻を下げた。 
「─── 好きや、て言うたつもりやねんけど、俺」
「え……?」
「お前が好きや。……他の男に触らしたて聞いただけで嫉妬で気ィ狂うくらい」

 大和の告白を聞いたかずさの目は、信じられないとばかりに何度も瞬く。
「でも……翠さんが、好きって……」
「翠は幼馴染みやねん。……昔、ちょっと惚れとったかな。でもあっさり振られた。……お前と一緒に暮らし始めてから、全然ちゃうな、と思った」

「み……翠さんと……? 俺、翠さんに似てたら、良かった……?」
「ちゃう。お前と翠が、やのうて、……俺の気持ちが、や」
 大和はかずさの額にそっと唇を押し付けた。

「……お前のこと、大事でたまらん。アホみたいにお前のことばっかり考えとって、……女将さんもぎゅうの繁次さんもな、俺が変わった言わはるんやで。顔つき優しなったて、なんや大事なもんでもこさえたんか、て。姐さん方も、ええ子によろしゅう、なんて冷やかすしな、……翠に惚れとったときとは全然違うて、自分で判るんや」

 大和は愛しくてたまらないと言うかのようにかずさの瞼に唇で触れ、涙を吸い取った。
 
「あいつに惚れとった時はな、悲しいて、辛うてな、……客、たらすんが商売やろ。一緒に逃げへんか、て子供考えで言うたこともあったけど、ここ出てどないするん、野垂れ死ぬだけやで、言われてな……翠の方がずっと大人やった。ハラ括っとった」

 夏掛けからそっと出されたかずさの片手が、大和の片頬を包み込む。華奢な柔らかい手の平に古い心の傷を撫でられ、癒されているような気がして大和は微笑んだ。
 
「それで諦めた。見世裏切れへんし、惚れとっても辛いだけやし……」
「……苦し、かった……? 大和……」
「─── ああ。そん時はなあ」
 
 ずっと一緒に育ってきたカナエでさえ、禁じられているが故に隠していたこの恋は知らないだろう。決して誰にも言うはずのなかった昔の想いを、痛手を負ったもののすっかり塞がっていた傷口を、大和は労るように反芻する。
 翠に対する気持ちは、多分 ───。

 困ったように見上げ、頬に片手を添えたままのかずさのその手に大和は自分の手を重ね合わせる。
「……同情、やったかもしれん、て今は思う」
「同情……?」

 「身体売るしかない幼馴染みに、同情しとったのかもしれん。翠の方が大人やったから、多分気ィ付いとった……。そんで、逃げへん、言うたと思う。……ほんまに心底惚れとったら後先考えずで無理やりあいつと逃げとったわ、……惚れたヤツ、ほかの男に触られるん我慢できんて今、思い知った」
 
 大和はかずさの身体をきつく抱きしめた。
「お前が好きや、かずさ。惚れとる。どうしたらいいか、判れへん」
「大和、……」
 
 俺も、好き、と小さく囁いたかずさの唇は、大和の唇に塞がれた。

 

 

 
 

「んっ……」
 胸の突起を摘んで優しく弄るとすうっとかずさの身体が桜色に染まる。手を滑らせ、滴の滲んだものを包みこむ。身を捩らせる仕草に大和は喉を鳴らした。
「……カナエに、触らしたんか? ココ」

「やあ……っ、やまと……」
「言うたやろ。俺は嫉妬深いんや、……教え」
 大和の手がかずさのものを執拗に弄る。昂り、欲情を示すそれが恥ずかしくて、かずさは顔を真っ赤にした。

「……大和、大和……っもうやめて、……」
 拒む言葉とは裏腹の甘く掠れる声に、大和はうっすらと笑みを浮かべた。

 ─── 夏掛けをそっと取り払うと、かずさはうつ伏せて身体を隠そうとした。細いその身体を大和は背中から抱きしめ、手の平を、指を這わせる。
 敏感な反応を見せるかずさが愛しくてならない。大和は先ほどの乱暴を取り繕うとするかのように精一杯の思いやりを込めて、かずさの身体を愛撫した。

 かずさは頭をいやいやするように横に振る。大和に抱きしめられていると思うだけでどうかしてしまいそうなのに、その大きな手は優しく、気遣うように触れてくる。反応してしまうはしたない身体が恥ずかしくて、止めてくれるように頼んでも大和は自分を離してはくれない。

 それどころか、より一層熱心にその手が動き出した。
 声を我慢しようとするかずさを許さぬように、大和は肉の薄い華奢な背中に唇を這わせる。
「……っあ、んっ……んっ……」

 堪えきれず、甘ったれた声を漏らしてしまう。ぼんやりとした頭に、大和にどう思われているのかだけが気掛かりで目が潤んでくる。
「……カナエにされたこと教えたら、気持ち良うしたる。言いや」
 
「……」
 もう今だって充分すぎるほど気持ちいい。それでも大和の甘く囁く声に抗えなかった。
「……さわ……カ、ナエさんに……触られ……」
「─── 気持ち良うしてもろたんか」

 穏やかな大和の声の奥に氷のような冷たさがある。かずさは首を横に振った。
「ちが……気持ち、良く、なかった……俺……イヤで……やめてって……」
「イったんか」
「……」
 
 カナエに無理やり教えられるまでかずさはその言葉の意味を知らず、けれど、もう知っていて ─── アレのことだ、と判ったかずさは仕方なく頷いた。本当のことだった。

 大和は強くかずさを抱きしめた。
 心の中に燻る嫉妬が抑えきれない。かずさを仰向けにし、圧し掛かりながら口付ける。
 
 首筋から徐々に下に降りていった大和の唇が、割り開かれたかずさの細い足の間に辿り着き、上を向いたそれを包み込んだ。

「……やっ……やだあ……っ大和……」
 生温かい口内に引き込まれた感覚は凄まじく、かずさは自分がどうなってしまうか判らない不安に襲われた。力の入らない手で大和の髪の毛を弄り、抗う。
「やめて、大和っ……こわ……怖いよ……」
 
「……カナエにもさしたったんやろ、コレ」
 かずさは勢い良く頭を横に振った。
「……されてないっ……手……手、だけ……本当……カナエさん、笑って……俺のこと、ヤラしい、って……大和もきっと、わら……笑うから……俺……ヤラしい、から……」

 その瞳に涙を滲ませながら大和から逃れようとする。
「……お願いっ……くちでするの、やめて……」
「─── 笑ったりせえへん。お前が気持ちええとこ、見たい」
 
 閉じようとするかずさの脚を押し開いて再び口に含んだ。かずさの唇から微かに漏れる堪えきれない声や、震える華奢な膝頭を手の平に感じて、大和は愉悦に浸る。
「可愛え、……」

 口から離して、目に涙を溜めたかずさの顔を近々と覗き込んだ。
 真っ黒な癖のない髪の毛に指を差し入れて梳きながら、ちゅ、ちゅ、と唇を合わせ、時折、気紛れのように舌を奥深くに侵入させる。 
 
「……あっ、ん……っん、や……」 
 小さな唇から洩れる意味の取れない言葉を、大和はことごとく吸い取っていく。かずさの薄い舌を絡めとって蹂躙し、頬の裏側や歯列をなぞった。
 
 そうしながら、滴を溢れさせているかずさのものを手の平で包み込む。
 涙で霞み、ぼんやりとしていたかずさの焦点の合わない目が見開かれる。
「あ……っ、や、だめ、大和……っ」

 恥ずかしかった。唇と舌で追い詰められたそこはもう限界で、触れられただけで達してしまいそうで ───。
 柔らかく揉み解しながら、大和はかずさに囁く。

「……カナエに触られるんと、どっちがええ?」
 耳朶まで赤く染めて、かずさは目を潤ませた。……絶対に、大和は、判ってる。

「なあ、教え」
 判ってるくせに、甘い声で答えを促す。
 観念してかずさは目を閉じた。

「……大和、……大和がいいっ……」
 大和の首にしがみ付く。大和じゃなきゃやだ、と切ない声を耳に甘く聞いた大和は満足げな笑みを浮かべて、かずさのこめかみに唇を落とした。

 
 
 
 
 *ぎゅう・・・妓夫太郎(ぎゆうたろう)=牛太郎でぎゅう。見世の用心棒のことです。
 
 
 
        
   

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 いつも拍手、コメントありがとうございますm(_ _)m

 大変嬉しく拍手チェックしたり、コメントを読んだりするのですが、毎日読み返してます、とおっしゃって頂いたりして、舞い上がるような気持ちでいっぱいです。\(^o^)/

 「きみの」と「月見」両方に触れるコメントだったのですが、読み返して頂いてるのは「きみの」でしょうか……?もうとっくの昔にハラは括ったつもりでしたが、やはりあの拙さは恥ずかしく、……恥ずかしいです……。゜゜(´□`。)°゜。_| ̄|○
 すごく、すごく嬉しいのに、恥ずかしい。この気持ちをなんと表現したものか……はにかむ?含羞?いやそんな可愛らしいもんじゃなく、言うなれば、遠くの電柱の陰から覗き見して「嬉しいですー!」と叫んで遁走する、そんなカンジ……。

 自分で書いて晒しといて何言ってんだ、私……。でもほんとに嬉しいんですよ~(≧∇≦)恥ずかしいけど。(´Д⊂グスン←往生際が悪い。

 

月が見ている。第十三話更新。

 

 月見第十三話、更新しました~(。・w・。 )

 いつもギリっギリまで書き直すのですが、やっぱり今回もそうでした……。
 細かい言い回しが気に入らなかったり、視点の切り替えがスムーズかな、とか……(普通、あんまり悩まないと思う……この悩み(´Д⊂グスン)

 

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月が見ている。13

 

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 第十三話

 

  
 ……大和の部屋に飛び込んだかずさは、後ろ手にドアを閉めた。
 大きな窓からの月明かりに、少し開いた箪笥の小引き出しが照らされている。
 
 かずさはゆっくりと近づき、中を覗いた。皺になった写真の中の翠の笑みがぼやける。
 
 部屋に射し込む月光が、写真を手の平に載せたかずさを柔らかく包んだ。

「……」
 立ち竦んだままのかずさの瞳から幾粒も涙が落ちた。止める術を持たないかずさは、声を殺すことしか出来ない。
 大和に、知られた、という事実が頭の中を廻っていた。

(嫌われた。もう、駄目だ、……)
 黙っていてくれるって言ったのに。言わないでくれるって約束したのに。
 
 ……しかし心のどこかでカナエがそんな約束など守るはずない、と判っていたような気がした。カナエが口止め料と称する行為はいずれ自分には払い切れなくなる。現にさっき、いやだ、とカナエに抵抗してしまった。

 翠という好きなひとがいるひとを、自分など眼中にないひとを好きになった自分が悪い、とかずさは思った。もっと早く諦めればよかったのだ。
 判っていても、思うのは大和のことばかりだった。

 自分をちゃんと扱い、優しくしてくれた大和。頭を撫でてくれた大きな手。褒めてくれた笑顔。─── 自分の気持ちを知り、驚いていたその気配。
 
「やまと、……」
『子供で、男やんか。そんな気なるか、気色悪い』
 カナエに、されていたことも知られてしまった。……大和はもう、口を利いてもくれまい。
 気持ち悪い、と冷たい目で見られて。二度と笑いかけてくれることもなくて。

(大和、……大和……)
 どんなに呼びかけても返事もしてもらえない。

 ─── 泣きながら大和のことを想うかずさは、ドアの外に立つ気配に気付かなかった。
 
 前触れもなくドアが開き、かずさはびくんと身体を竦ませる。
 ……大和が静かに部屋に入ってきた。

 箪笥の前で涙をこぼすかずさに大和はゆっくり近づいていく。
「……かずさ」
「……ごめんなさいっ」

 不意にかずさは膝を付き、よれている翠の写真を大和のほうに向けてカーペットの上に置いた。
 頭を下げる。
  
「ごめんなさい、ずっと、黙っていて、騙してて、ごめんなさいっ……」
 他に何と言えばいいか、判らない。大和をずっと、騙していた。……弟のような顔をして、大和を信用させて。本当は、カナエが大和だったらいい、と思っていた……。

 言葉が出て来ず、涙がぽつぽつとカーペットに染みを作る。

 何か言わなくてはいけない。せめて、この写真が歪んでしまったことの言い訳をしたい。
「……み……翠さんの写真、わざとじゃないんだ、……なお、直そうと、したけど、直んなくて、……やまとのすきなひと、見た……見たくて、ごめ……ごめんなさい……!」
   
 額をカーペットに擦り付けんばかりに小さくなって泣きながら謝るかずさを、大和は見下ろした。─── 翠の写真。
『翠の、お前の好きな女の写真見とうて、オレん部屋に押しかけてきて』
 真実味を帯びたカナエの言葉が頭の中で反響する。
 
「……カナエの部屋行ったて、ほんまか……?」
 掠れた声が、大和の口から押し出された。
 
「……」
 かずさは顔を上げることさえ出来ない。─── あの時、何をされたか、どうしても大和に知られたくない。

「答えろや」
「……」
「答えろッ!」

 びくッと浴衣の肩を震わせ、かずさは頭を上げた。それでも大和と視線を合わせることが出来ずにうな垂れる。
 
「………あいつに口止め料払たん」
 怒りを孕んだ大和の声。僅かな沈黙の後、うな垂れたかずさの頭が微かに頷いた。

「……カナエさん……言わないでくれるって、……だから……」
 
 震えるかずさの声に大和の中で何かが切れた。─── 片手に持っていた水色の和紙がぐしゃり、と無残に潰れる。無意識に、それを床に投げつけた。
 
 身体を竦ませるかずさの細い腕を掴んで立ち上がらせ、ベッドに突き飛ばした。
 体勢を崩して倒れこむかずさの上に、大和は馬乗りになる。
 
 あっという間の出来事だった。かずさは恐怖から顔と頭を交差させた腕で庇う。殴られる、と思った。

 大和はいきなり浴衣の袷を掴んで、開いた。─── 月明かりに、赤いくちづけの跡がいくつも晒される。……それは、かずさがカナエのものになった、という事実を、そしてそれはかずさの合意の上だということを示していて。
 血が逆流するような気がした。
  
「……知らんかったんは、俺だけ、ゆうわけやな?」
「やま……」
「お前がカナエに触らせとる間、何も知らんとのほほんとしとったんは俺だけゆうわけや」

 なぜ気がつかなかったのだろう。かずさはカナエを見ると目を伏せていたのに。話すとき、おどおどとしていたのに。俺が仕事に行く間、カナエとかずさはふたりきりになってしまうのに ──。

 ……こんなに頭に血ィ昇ったんは生まれて初めてや。
 
 噛み締めた奥歯が、ぎりり、と鳴る。大和は、怯えて口も利けなくなっているかずさを押さえつけた。

 くちづけの跡の残る白い肌を手の平で撫で回し、唇を這わせる。カナエの痕跡を消したかった。
 かずさは声を殺し、愛撫とは程遠い乱暴な大和の仕草に耐えていた。大和がなぜ怒っているのか判らない。考える余裕はなかった。

 大和の手がかずさの浴衣を結んでいた兵児帯に伸びる。
「……や……やまと……」
 怯えるかずさの微かな声。身を捩り、嫌がる僅かな抵抗に大和はかっとなった。

 かずさの身体を強引にうつ伏せにし、その背中に両腕を押さえつけた。解いた兵児帯で両方の手首一緒に縛り付ける。かずさの抵抗を封じた大和はまた彼の身体を仰向けにすると、下着を引き下ろした。

 もう抵抗する術はない。羞恥から赤く染まるかずさの身体の全てに大和は視線を這わせた。
 背中で手を戒められ、そこに浴衣が縺れているせいで、くちづけの跡の残る薄い胸から腹までなだらかな曲線を描いている。頑なに閉じた足の間に大和は無理やり身体をこじ入れた。

「……っ」
 大和の大きな手が折れそうに細い足を撫で、舌で色の薄い胸の突起を執拗に舐る。

 びくり、とかずさの身体が硬直する。─── 足を撫でていた大和の手が、反応を見せていないかずさの中心を包み込んだ。
「─── あいつにもこうやって触らしたんやろ」
 膝を折って隠そうとするかずさを許さず、押さえつけ、大和は露悪的に囁いた。
 
「可愛らしい声聞かしたったんやろ、あいつに。俺にも聞かせろや」
 かずさの知る大和なら決して言うはずのない言葉だった。嫉妬と怒りが大和の中で渦巻き、我を失わせていた。

 大和の手の中でかずさのものが次第に反応を見せ始めた。
「……はっ……は、う、…ひっく……は、あ……っ……」
 目の縁を赤くし、しゃくり上げながら、あえかな息を吐くかずさに大和は目を眇めた。

「イロっぽいやんか。……そんな声上げて、俺んこと笑っとったんやろ。何にも知らん俺はさぞかしアホみたいやったろうな?」
 かずさは精一杯頭を横に振った。本当に大和を笑ったことなどなかった。ただ、大和に嫌われたくなくて。
 
 かずさの体液で濡れた指を大和は双丘の間に進ませた。その場所をなぞられ、反射的にかずさの身体は逃げを打つ。
 それを許さず、大和はベッドとかずさの背中の間に片腕を差し入れて、噛み付くように小さな唇を塞いだ。

 無理やり舌を挿し込み、口腔内を犯す。そうしながら ──。
 硬く閉じられたすぼみに指先を埋めた。
「……んん……っ……!」
 
 カナエにこの場所を触らせ、征服させたのかと思うと大和の心にぐらぐらと煮えるような嫉妬が湧き上がってくる。もっと奥に進めて自分の跡を残してやりたい。カナエの痕跡など、消してやる。
 そう思いながら、大和はかずさの様子に違和感を覚えていた。

 まるで誰にも触れられたことなどないような感触が指を通して伝わってくる。冷たい汗がかずさの全身を包み、緊張しきっていることが知れた。霞んだような目がほんの一寸先の自分の顔を見つめ、その縁から、つっと涙がこぼれる。

 もう少しだけ指を潜り込ませた。
「っああ!」
 はっきりと ─── 悲鳴だった。怯んだ大和はその場所から指を退いた。

 急速に頭が冷えてくる。─── かずさはカナエを受け入れていない。恐らく、指でさえも。
「かずさ、……お前」
 真実に戸惑い、大和は泣きじゃくるかずさを見つめた。

 

   
   

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十五夜

 

 テンプレートを秋仕様で十五夜にしてみました~゜.+:。(*´v`*)゜.+:。

 読みづらくなってないかちょっと心配……小説ブログなのに本末転倒Σ( ̄ロ ̄lll)

 上に乗ってるウサギちゃんが可愛らしくて気に入ってます((w´ω`w))

 

月見第十二話更新。

 

 「月が見ている。」第十二話まで更新しました~\(^o^)/

 長かったなあ……ここまで来るのに。十一、十二話が最初に書いたとこで、後からカナエの心情入れたのでめちゃくちゃ長くなってしまい、二話に分ける始末。

 ついでに八話、十話もカナエさんのおかげで突貫工事……。なんでしょうか、カナエって第三者なのに、そのひねくれた気持ちを書かずにいられません。バカな子ほど可愛いってやつでしょうか……(;´д`)トホホ…

 

 

 

続きを読む "月見第十二話更新。" »

月が見ている。12

 
  

 第十二話

 

「─── かずさ……?」
 不意に ─── 。
 
 背後から大和の訝しげな声が聞こえた。
 かずさは、びくんと背筋を硬直させる。

 大和が帰ってきたのだ。カナエと揉めていて気付かなかった。
 
 ─── 振り返ることが出来ない。
 
「おう、大和ー、ええとこ帰って来たなあ」
 へらへらと明るい口調でカナエはかずさを押しのけた。

「……カナエ。お前、酔うて」
 大和はいつものように片手に提げていた風呂敷包みをテーブルに置く。そのまま苦言を呈しようとした大和をカナエはにやりと笑って遮った。
「お前にええこと教えたるわ、大和」

 かずさは大和とカナエに背を向けて俯いたまま、─── 一歩も動けない。

「お前が大事に、大事にしとるこのガキな」
 意地の悪いカナエの声がかずさの背に当たる。止める術はなかった。

「お前のことスキなんやで。ホンマはお前にヤられたがってんやで?」
 
 ─── もう、駄目だ。

 うな垂れたかずさの肩が、揺れた。

「お前、翠のこと好きやて言うたやろ、こいつに。それでも性懲りもなく、お前んこと諦められんと、オレに黙っててくれ、言うんやで。お前に気持ち知られて気味悪がられたらイヤやから、言わんでくれて」
  
 大和が絶句しているのが、かずさには判った。

 ─── ずっと、弟のように思って、親切にしてきた相手が、実は下心一杯で一緒にいた。
 大和は、もう。

「笑てまうやろ? 好きな女いてるて知っとるのに、お前に嫌われたないてこいつ、……オレに口止め料払ててんで」
「くちどめ……?」

「そうや。お前の目ェ盗んでオレにチュウさしたり、いろんなとこ、触らしたり、……お前に黙っててくれて、今も」
 
 ─── ちがう。
 俺、やだって、やめてって何度も頼んで、でも、……大和に嫌われたくなくて。

 黙っていてくれるって、カナエさんが。だから。

「さっきかて、翠の、お前の好きな女の写真見たいて、部屋まで押しかけて来て、……オレの下で」
 
 ぱさり、と軽い音を立てて水色のおひねりがかずさの足元に落ちる。……その瞳から涙が溢れた。
 
 身を翻したかずさはカナエと大和の脇を小走りに通り、二階に駆け上がっていく。
 ばたんとドアの閉まる音を大和は聞いた。

「……カナエ」
「なんやあ?」
 上機嫌でへらへらと笑い続けているカナエに大和は低く訊いた。

「─── 今の話、ホンマか。口止め料払た、て」
 
「ああ? ホンマやでー、オレウソつかへんもん。……あいつ本気でお前に惚れてんねんで。お前が男のガキなんかキョーミないて、気持ち悪いて思われたらイヤやから、ジブンこと黙っといてー、て、……おもろいねんで、いや、やめて言うててもな、大和にバラすで、てちょお言うたらすぐ大人しなってな、カラダいじらすんやで。涙溜めて、可愛え声上げて、……大和に言わないで、お願い、て」

 カナエの、身体が飛んだ。
 飴色の椅子にぶつかり、派手な音を立てて、向こう側に頭からひっくり返る。載せてあった風呂敷包みごとテーブルがずれた。

 何が起こったのか判らなかったカナエが、大和に殴られたのだと自覚したのは一瞬のちのことだった。
 背中と後頭部が痛い。それよりも更にズキズキと痛む頬に手を当てる。

「……いっ……痛った、なにすんねん、……」
 身体を起こそうとしたカナエは大和にカッターシャツの胸倉を掴まれた。
 至近距離の大和は火を噴きそうな目付きで真上からカナエを睨みつける。
 
「─── 今度あいつに触ってみい。殺すぞ」
 カナエは目を瞬かせた。─── 大和らしからぬ、自分を見失った乱暴な言葉。

 大和でも、我を失ってこんなに怒りを露わにすることがあるのか、とあっけに取られた。
 二の句が告げずにいると大和がぱっと手を離した。引き上げられていたカナエはどさっと床に落ちる。

 かずさの落とした水色のおひねりを拾い上げ、大和は二階へ上がっていった。 
「……なんやあ」
 仰向けにひっくり返ったまま痛む頬をさすりながら、カナエは口の中を舌で探った。頬の裏側が切れているらしく、血の味が広がる。ぐらつく奥歯を舌先で突付いて顔をしかめた。

「……歯ァのうなったらどないしてくれんねん」
 大和はかずさを想い、かずさは大和を想っている。
(……ま、知っとったけど)
 
 最初はほんのちょっとした悪戯のつもりだった。かずさが一途に大和に恋心を寄せているのが可愛らしく、意地悪をしたくなった。そのまま大和に、カナエに触られた、とご注進に及べば済む話だったのが、かずさは大和に嫌われるのを怖がる余り、いつまでも黙っている。
 
 カナエはイライラした。もっと苛めたくなる。
(……イラつくのも道理や)

 自分ばかりが悪者になり、気分が悪い。かずさは自分がどれほどちょっかいを出してもなびく様子を見せず、それはカナエにとって大和に負け続けることだったのだから、余計に苛立つ。
 
 それでなくともカナエは、いつも何とはなしに苛ついていた。兄貴風を吹かせる大和や周りの人間が気に食わないからだ、と思っていた。それを解消しようと、見世の娼妓に手を付けたり、遊び歩いたりもしてみた。
 
 ─── 本当のところは。

 何もかもが苛つく対象であるカナエにとって取り分け面白くないのは、周囲の人間全てに頼られ、跡取りと目されている大和の、使用人と言って憚らない言動と分を弁えた態度だった。

( しょーもないホンマもんの跡取りなんかほかして、俺が見世継いだる、ぐらいの顔すればエエものを)
 
 申し分のない「いい奴」で、一人息子の自分を立てる大和に歯ぎしりしたくなる程イライラする。この一ヶ月、自分を悪者にし、大和を想い続けるかずさを間近に見て、尚更それは深まっていた。

 苛立つ気持ちは行き場を失くして、カナエの内側に澱む。
 
 ─── 何もかもを暴露して、大和を、本気で、怒らせてやりたい。
 
 そして、そうした。
 
(……怒りよったな。あいつ。思った以上に)
 少し、あっけに取られるほどに。世話になってきた春霞楼の正当な跡取りである自分に、甘やかしてきた自分に、拳を振りあげるほどに。
 
 殺す、とまで言い放った大和の鬼のような形相が頭から離れない。
(……怖っわー、なんやねんアレ、……手ェ出されてそんなアタマくるんやったら、とっとと自分のもんにしたったらええねん。どアホウが)

 そう思いながら、なぜか、気分が良かった。頬は腫れ上がってきていて、口の中に拡がった血の味で吐き気がする。何より顔半分と頭の後ろと背中が痛くて、状態としては最悪だが。
 
(……大和のヤツあんな必死こいて、……ホンマにかずさに惚れてんねやな) 
 胸のつかえが取れたようで、笑いの発作がこみ上げて来る。
「……いっ……つつつッ」
 笑おうとしても笑えない。カナエは大きく息を吐いた。
  
「割りに合えへん……」
 かずさがお前んこと好きて教えたったのオレやで、大和。……思っきりどつくことないやろ……。
 天井がぐるぐると回り出す。カナエは、酔いに任せて目を閉じた。

 

 
    

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月見第十一話更新

 

 夏休みが終わりましたね……。

 
 子供たちが登校してくれたので、ちょっとペースを上げようかと、11話、更新してみました。そして12話も、早めの(2、3日中の)更新を目論んでいるわけですが、……いや目論んでいるだけです!(´Д`;≡;´Д`)アワアワ

 2、3日中に更新出来たらイイな~、なんて、はは……(A;´・ω・)アセアセ頑張ります……

 

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月が見ている。11

 

 第十一話

 

  
「大和っ、おかえ……」
 言いながら、食堂に入ったかずさが目にしたのは流し台の前でコップの水を飲み干すカナエの背中だった。
「……あ……」

 ことん、とコップを流しの脇に置いて、カナエは振り返る。
「……大和やのうてザンネンでした」
 皮肉気なカナエの口調にかずさは俯き、手に持っていた水色のおひねりを後ろに隠した。カナエの顔を、まともに見ることが出来ない。

「毎晩、大和のお出迎えしてんねんな? かずさちゃん。相変わらずケナゲ」
「……」
 俯いたままかずさは顔を赤らめた。すっ、とカナエは近づく。

「大和のことが好きで好きで、諦められへん?」
「……」
「─── オレにあんなヤラしいことされても」
 
 耳まで真っ赤に染めたかずさは、カナエに背を向けて食堂を出ようとする。カナエは自分から離れていこうとする浴衣に包まれたその小さな身体を、背中から抱きしめた。
 酒臭い息で、カナエが酔っているのをかずさは知る。
 
「や、……離し……」
 かぶりを振ってもがくかずさの手に、水色のおひねりがあることにカナエは気付いた。
「なんやねん、コレ」
 あっという間もなく、おひねりはカナエに取り上げられる。かずさは慌てて取り返そうと手を伸ばした。

「かっ、返して下さい、……大事なもの、なんです、」
 中に入っている薔薇の形をした砂糖菓子はあとひとつしかない。それこそ食べないで、大事に取って置こうと決めていた。
 カナエは無遠慮におひねりを解いた。

「なんや、ずっと前、翠にもろた言うてたヤツかいな。いっこしかあらへん、オレにチョーダイ?」
 必死に首を横に振ってかずさは拒んだ。心の拠り所であるこの砂糖菓子をカナエにやることは出来ない。
「なんで? 恋敵にもろたもん、後生大事にとっとくことないやろ」

 かずさは眉尻を下げた、哀しそうな表情を俯けた。
「……翠さんは、優しくて、いいひとです。こんな、見たこともないようなお菓子くれて、……大和は、だから、翠さんを好きで」
「だから恋敵やねんか。なんで大事にしとん、こんなん」

 かずさの目の前でおひねりに戻した和紙を無造作に振ってみせる。
「返してくださいっ、乱暴にしたら壊れて」
「……」
 カナエはかずさにそっと和紙を差し出した。

 ほっと安堵したかずさの手の平に和紙が載せられる。
 ─── その手首を掴まれ、かずさはカナエに抱きすくめられた。

「……っ」
「続き、さして。……さっきの、続き」
 耳元でカナエが囁く。近づいてくる唇から顔を背けて、かずさは腕を突っ張った。

「なんで?……イロたら可愛い声聞かしてくれたやん」
 酒臭いカナエの言葉にかずさは頬を赤く染めて、涙を浮かべる。返す言葉もなかった。
 それでも、カナエの腕の中から抜け出そうともがく。

 抗うかずさに手を焼いたカナエは、酔いも手伝い、宥めるのを諦めた。
 諦めて。
「─── ヤらしてくれへんのやったら、大和に言うで」
「カナエさんっ……」

 どうして、とかずさは頭を横に振る。もうずっと、さっきだって、カナエに触らせているのに、……これ以上。

「お前の気持ちも、オレにヤラしいことされたんも、……さっきのことも、全部言う。……大和のヤツ、どんなカオするか見ものやな?」
 かずさは今にも泣き出しそうな顔でカナエを見上げた。
「……お願い、カナエさん、大和には黙ってて……言わないで、お願い……」

 くっ、とカナエは笑った。─── 可哀想なかずさちゃん。大和のことが大好きで、嫌われたのうて、オレに犯されようとしている。
(どうせ嫌われもんやねんから、エエ目見さしてもらわんとな?)
「おいで」
 かずさの腕を引っ張り、食堂を出ようとする。

「……」
 かずさは動けなかった。このまま、カナエの部屋に連れ込まれたら── 。
「……かな、……カナエさん、……」
 いやだ、と思った。怖かった。

 またカナエに身体を触られて。……あんな、こと。
 
 身体が竦んで動けない。
「……や、だ」
「なんやて?」
「お……お願いです、他のこと、なんでもするから……っ、か、堪忍して、ください……」

 すっと目を眇めたカナエは、かずさを見つめる。ほんの少しの沈黙の後、かずさの手を離した。
 許してもらえた、と気持ちが緩んだかずさに、カナエは背を向ける。
「そおか。ほな、今から見世行って大和にバラすわな」

 その言葉にかずさは凍りついた。食堂を出ようと、カナエの背中が遠ざかる。
「まっ……待って、カナエさん、俺、他のことならなんでもするから」
 
 カナエの前に回りこんでかずさは必死に引き止めた。
「他のことなんかどうだってええわ、そんなん。やらせろや」
「お願い、カナエさん……っ」
 
「何が堪忍や、そんなに大和のこと好きでオレがイヤやったら、とっとと大和に抱いて下さい、言うたらええやろ! まあ大和がお前みたいなガキ相手にするわけあれへんけどな。哂われて、気色悪い言われて、二度と口利いてもらえんようになったらええ、─── オレが言うたる。全部バラしたる」
「やめて、やめてカナエさん、お願い、大和に言わな……」

「─── かずさ……?」
 不意に ─── 。
 
 背後から大和の訝しげな声が聞こえた。

 

 
   

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