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きみの手を引いて2:最終話

 

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 
 
 柚月の腕の中でハルは目を覚ました。
 久しぶりのそんな目覚めに動揺し、戸惑う。Tシャツとスウェットの下を身に着けていることを確認した。

 ─── 昨夜、力が抜けてぼんやりとしてしまった自分を柚月はひどく心配して、「大丈夫か、ごめん、すまなかった」とおろおろと後始末をしたり、服を着せてくれたりと面倒を看てくれたのだ、と思い出す。
 
 正直、最後の方は記憶が定かでない。何度も柚月の手や身体を汚すような事態になり、その快楽に時々意識が飛んだ。
 柚月は優しかった。めちゃくちゃにする、と言ったものの、決して無理強いせず、ゆっくりとハルの身体を開いた。

 柚月が心配していたような、触れることでハルが辛い思いをする、ということはなく、─── しかしそれでも、侵入される瞬間には身体が竦んでしまう。
 柚月はそんなハルをきつく抱きしめた。
 
 身の内を掻き混ぜられ、声が自然に漏れる。羞恥とそれを上回る快楽に思わず涙をこぼしたハルを何度もキスで宥め、絶頂へ導く。
(「愛してる。ミハル」)
 強く抱きしめられ、囁かれる言葉にハルは初めて頷き、応えた。

『柚月さん、……あいしてる、……』
 舌足らずなその言葉は子供っぽくなかっただろうか。柚月は、ちゃんと本気にしてくれただろうか。
 確かめたくて、柚月の胸に頬をすり寄せた。

「………」
 温かい、柚月の体温。そっと見上げて、一日分の髭が生えた顎に指を這わせた。
「……か……かなめさん……」

 ずっと柚月さんと呼んでいた。呼び方で何が変わるわけでもない、とハルはその呼称に満足していた。昨日の夜、柚月と深く身体を繋げた時、「愛してる」と囁かれて初めて、「柚月さん」をもどかしく思った。
 要さん、と呼びたかった。

(……で、でも、急に呼んだらおかしいもんね。なんか、自分のものになった、って……厚かましいカンジだし……だから、判んないように、こっそり)
 目を瞑って、柚月が付けてくれたドッグタグを手の平に握りこむ。自然に口元に笑みが浮かんだ。

「……要さん……」
 幸福感に満たされてゆっくりと目を開けると、─── 柚月がじっと自分を見つめていた。
「……っ」

 いつから起きていたのだろう。目が合い、瞬く間に自分の頬に血が昇るのが判った。
 何か言わなくては、と気が急き、声が上擦る。
「お……はよ」
「……うん」
 
「まだ、時間……早いよ」
「ああ、……そうだな。もう少し、寝る」
「……オレ、シャワー浴びる、から」
 
 聞こえなかったらしい。訝しむ様子のない、いつも通りの柚月の受け答えに、良かった、と胸を撫で下ろしつつ身体を起こした。そろそろとベッドから足を下ろす。
「そうだ、今日はオレが朝メシ作るね。柚月さんもスクランブルエッグでいい? 甘いやつ」
「……要さんて呼ばないのか?」

「………!?」
 ハルは声にならない悲鳴を上げて柚月を振り返った。耳たぶから首筋まで朱に染まる。
「きッ、聞こえてたんならなんかリアクションしろよ!」
「なんか、って……」

 困惑したように柚月は真っ赤になったハルを見上げている。柚月に知られないように寝ている間に「要さん」と呼んだつもりだったのに、それを本人に知られ、ハルは恥ずかしさで居ても立ってもいられない。
 
「ビックリするとか! 不思議そうなカオするとか! な、……なんで勝手に呼んでる? とか!」
「別に勝手に呼んでも構わない」
「かっ構わないって、だってっ……」
 
「駄目なのか?」
 カーテンの隙間から漏れる朝の光が色濃くなっていく。徐々に白く明るくなっていく室内、ベッドの上に横になっている柚月は優しい眼差しをハルに向けている。
 
 その目にハルはうろたえ、視線をさまよわせた。
「……だって……ずっと……柚月さん、て、……急に、ちがう呼び方したらヘンだし」
「俺は嬉しいけど」
 飾らず、率直な柚月の感想にハルは返す言葉を無くし、ベッドの上についた自分の手に視線を落とした。
 
 ─── 柚月はいつだって、自分の一番欲しい言葉を惜しげもなくくれる。
 そんな柚月の前に虚勢など無意味だとハルは知っていた。
「じゃあ、……呼んでイイ……?」
「ああ、……なんて?」

 ……ちょっとだけ柚月は、意地悪だ、とハルは思う。恥ずかしさで消え入りたいような気持ちなのを知っていて、わざと言わせようとする。

「……要さん」
「うん」
「要さん」
「うん」
「……要さん……」
「これから柚月さんて呼んだら返事しないからな」

 力強い手がハルの腕を掴み、引き寄せる。バランスを崩してハルは柚月の上に倒れこんだ。
「───……」
 昨夜、さんざん自分を翻弄した唇に目が吸い寄せられる。

 頭を抱え寄せられ、キスをされた。軽く唇を触れ合わせるだけだったそれはすぐに深くなり、身体中にぞくぞくとした官能をもたらす。
「……ん……っ……」
 甘ったるい声が鼻に抜ける。頭の芯が痺れたようにぼんやりとした頃、ハルはやっと解放された。

 すぐには起き上がれずに、柚月に覆い被さったまま、ハルは目を伏せて息を吐く。
 下から伸びてきた柚月の長い指がハルの瞼と目尻をなぞった。
「……ここ、赤くなってる。お前、泣くと腫れるよな」
「柚月さんのせいだろっ……」
 
 泣くようなこと、柚月さんがするからだ、と頼りない声で糾弾するハルを柚月の眇めた目が射る。両腕を掴まれ、ハルは柚月と体勢を入れ替えさせられた。
 ベッドのスプリングが乱暴な仕草に軋む。

 柚月を下から仰ぎ見る。眠っている時の無意識の表情よりも、ずっと引き締まった、不遜にさえ見える顔つきで柚月はハルを見下ろした。
「……誰の、せいだって?」

 柚月の言っている意味に気付き、ハルは視線をそのがっしりとした肩口に逸らす。
「……かなめさんのせい……」
 言い慣れない呼称に舌が縺れる。じっと見つめてくる柚月の目の中に昨日の夜と同じ、自分を求める光があるのを感じ取り、ハルは身動きが取れなくなる。

 柚月の欲情を知ると、ハルはまるで「抵抗するな」と命令されたように、身体が動かなくなる。それは情けなく、みっともないことなのかもしれない。

 けれど、そんなふうに柚月が求めてくれるのが嬉しかった。
 柚月に求められ、欲しがられることをずっと望んでいた。
 柚月の前では、情けない、みっともない自分でもいい、とハルは力を抜いた。

「……昨日も言ったけど、そんな顔で見上げるなよ」
「……昨日も訊こうと思ったんだけど、そんなカオってどんなカオ?……みっともない、ヘンなカオ?」

「……みっともない、変な顔だったらこんなになるか」
 柚月の腰の中心がハルの下腹部に押し付けられる。……その硬さに、夕べ自分を穿った質量をまざまざと思い出し、ハルは照れ隠しに憎まれ口を叩いた。

「そんなん、朝だからじゃん。……オレのカオとカンケーない。どんなカオなんだよー」
「だから、……色っぽい、何されても構わないって顔だ。……誘ってる」
 大きな柚月の手がハルの頬を撫で、親指が小さな唇をなぞる。
 
「誘ってない、よ、……昨日は、誘った、けど」
 柔らかく唇を弄られながら途切れ途切れに言葉を発するハルに、柚月は掠れた低い声で囁いた。
「……朝だからかどうか、試してみるか?」

「寝るって言ったじゃんかっ……今から泣いたら、オレ、マジでバイト行けなくなる、……復帰したばっかなのに」
「今日、休みだから……俺が代打で出て、環さんに叱られてくる」
「ヤダよそんなの……!」

 環さんにバレバレじゃん、とハルは柚月を押しのけようとした。─── その腕を掴まれ、ベッドに押さえつけられる。
「……柚月さ……要さんっ……」
「泣かさない、とは言わない。……そんな自信はない」

 思いも寄らない柚月の真剣な声だった。
「……成沢さんみたいにはなれないし、……頼りないって自覚はある。お前が俺を信頼出来ないのは判ってる。俺はただの学生で、なんの力もない、……でも、それでも」

 信じて欲しい、と柚月の唇が動く。
「……お前が望む限り、俺はお前のそばにいる」
 その手を離さないと言うように、柚月はハルの指に自分の指を絡めた。

 柚月らしいその誓詞に、胸が熱くなる。ゆっくりと下りてきた唇に合わせて目を閉じた。
 ─── 自分が柚月の元を離れたいと思うことなどない、とハルは確信していた。
 いつだって、柚月は自分のことよりも、相手を大事にする。
 
(だから、オレは要さんよりも、要さんを大事にしよう)
 弱さや狡さの陰に隠れて見えなかった、自分より大事なもの。

 ずっと前からそれを手にしていたことに気付いたハルは、その温もりに身を委ねる。
 重なり、指を絡めた大きな柚月の手を握り返した。

 

 
                         end

 

     .。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

 

 「きみの手を引いて2」、最後までお付き合い下さいましてありがとうございます。
                                            m(_ _)m
 
 たくさんの方に読んで頂き、最終話をお届けすることが出来て感無量です。
 
 拙い文章と物語ではありますが、拍手お礼小説を書いてみました。
 
 下記拍手ボタンを押して頂けるとご覧頂ける仕様になっていますので、もしよろしかったらどうぞ。モジモジ(。_。*)))

 ではまた、次回作でお会い出来たら嬉しいです。

 *後日談を掲載しました。読んで頂けたら嬉しいです。(o^-^o)

 
  
                  八月金魚 拝

 
 

       

     目次その腕の中

 

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コメント

初めまして。
小説家になろうで連載されていた頃から、愛読させてもらっています。
もどかしいくらいの切ない恋ですが、きっと本当の恋ってこんなんだろうなと思います。「きみの手を…1」の最終話、やっと柚木に思いが通じて「本当によかった」と心から思いました。
番外編、関連作品も拝見させていただいてます。
ブログを見つけて「きみの手を…2」を見つけた時は、また2人に会えるんだ、と思い、とても嬉しかったです。また次回作楽しみにしています。
 
 
八月>初めまして(*^-^) コメントありがとうございます。
なろうサイト様からお越し下さったんですね~。

「きみの」という物語に真摯に向き合って下さって、言葉に出来ないほど嬉しいです。(≧∇≦)o(_ _)oペコッ
文章としてはすごく拙いし、とても自信は持つまでには至らないのですが、anさんのようにこの話を大事に思って下さる方のおかげで、また頑張ろうと思えます。

次回作も切ない、ハピエンで行きたいと思っていますので、よろしくお願いします。
                                         (o^-^o)
 
 

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