« きみの2:第十七話更新 | トップページ | 第十八話更新&うっかり »

きみの手を引いて2:第十八話

 

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 
 
 浴室から出たハルは、手早くスウェットの下とTシャツを身に着け、洗面台の上に置いたドッグタグを手にした。
「…………」

 しばらくそれを見つめ、手の平に握りこむ。リビングへ向かい、柚月に風呂が空いたことを伝えてソファーに座った。
 底に何か秘めたような、ぎくしゃくとした雰囲気を嫌い、ハルはTVの音量を上げる。

 膝を抱えてリモコンを弄りながら、浴室へ向かった柚月の気配に神経を尖らせた。……十分。二十分。もうすぐ、髪の毛をタオルで拭きながらリビングに来る、……来た。
 柚月の気配を気にしていることを気付かれないように、点けっぱなしのTVに集中している振りをする。

 そうしながら、トランクス一枚のまま冷蔵庫から缶ビールを出した柚月がソファーに座る、その一挙一動にハルは神経を向けていた。
 缶ビールのプルトップが引かれ、中身が柚月の喉に消えていく。

 TVのバラエティー番組は毎週ふたりで楽しみに観ているものだったが、今のハルにはその内容が全く判らない。
 柚月に話さなければならないことで頭がいっぱいだった。
 
 番組が終わり、歯磨きをしようと腰を上げた柚月に次いで立ち上がったハルは、その背中へ声をかけた。
「柚月さん」
「ん?」

 何の気なしに振り返った柚月が自分を見つめる。ハルは目を伏せて、ごくりと息を飲んだ。
「……今日から、オレ、ロフトで寝る」
 自分でも思った以上に小さな声だった。気付いて、軽く咳払いした後、続けた。

「早く帰って来れたから……もう、ロフトに布団敷いてあるんだ。……あ、……あと、あの」
 右手に握りしめていたそれを柚月に差し出す。

「……これ、返す」
「───」
 ドッグタグをその手の平の上に見た柚月は驚いたように目を瞠った。

「もう、こ……恋人とか、やめようかな、って、……そういうの、ウザいと思うし、ただの居候で、いいかなって、……オレ、バカだから、これ持ってるとなんか、……期待、とかするし、……急には、やっぱり、なんとも思わなくなったりとか出来ないんだけど」

 でも、これ返せば、少しずつでも、なかったことに出来ると思う。─── 俯いて笑みを浮かべたハルは、落ち着いた口調で話した。
 柚月は、明らかに呆然としてハルを見つめた。
「……何を、言ってるんだ……?」

「オ……オレ、判ってる、から。……柚月さんの気持ち、離れてるって、……オレに触れないって、知ってる、……あ、あんな痕つけられた身体見たら当たり前だよね、それに、オレ、ナオみてーに可愛くないし、頭も悪いし、いいとこ全然なくて、ガキだし、……あんなことンなって、余計引かれて……でもせめて身体だけでも、柚月さんが欲しがってくれたらって、思ったりしたんだけど、……」

 ハルは口を噤んで目を伏せた。─── 余計なことを言ってしまった。
 後悔の念が胸に湧き上がる。そんな浅ましい、身体で柚月の歓心を買おうとするような思いを言葉にするつもりはなかった。
 取り消したかったが、思わず吐露してしまった気持ちは取り返しがつかない。

「ごめん。なに言ってんだろ、オレ、……ごめん」
 目を伏せて謝ることしか出来ない。柚月が、身体だけを求めるような人間ではないことは、判っていたのに。
 ─── 柚月が身体を求めないということは、心が伴っていないからだ、と判っていたのに。

 身体の横に下げた手の先から、指に絡まったドッグタグが揺れる。
 柚月は受け取ろうとしなかった。自分が身に着けていたものを返されても、困るだけなのかもしれない。
 居たたまれなくなり、後ずさる。

 そのハルの腕を柚月は掴んだ。
 驚くハルが顔を上げる。力強い柚月の手がハルの腕を引いて、寝室に向かう。
「柚月さん……っ」

 ほとんど悲鳴のような声で柚月を呼んだハルはベッドの上に押し倒されていた。
 腿の上にのしかかった柚月がハルの手首をシーツに押さえつける。
 ハルの耳の横で、指に絡んだボールチェーンが、しゃら、と鳴った。

「───……」
 何が起こっているのか判らなかった。真上から見下ろす柚月の顔。強張った表情。
 柚月の唇がハルの耳の下に寄せられ、その大きな手がTシャツの下に潜り込んでくる。

「……っや……っ……」
 胸を手の平で撫で回され、逃れようとした首筋に唇が這う。貪るような柚月の仕草は一瞬だけ長谷川を、─── どうしても、受けた暴力を思い起こさせる。ハルは怯え、裸の肩を押して抗った。
「やだっ……や……!」

 ─── 途端に重さの圧迫がなくなる。
 身体を浮かせた柚月は覆い被さったまま、横向きに丸くなったハルを見つめていた。
「……身体だけでもいいって?」

 低く、囁く声。欲情に霞んだ目にハルを映して、その手で柔らかく乱れた髪の毛を撫ぜる。
「……お前にあの男と同じだと思われたくなくて、触れないようにしてた。触ったら、お前が辛いだろうと思ったから、……怖い思いをさせたくなくて、我慢した。……お前が好きだ。ミハル」
 
 ハルは柚月の言葉をぼんやりと聞いた。押し殺したようなその声は、柚月の欲望を如実に語り、ハルに知らせる。
 反応の薄いハルに焦れたように、柚月はその華奢な手を取ると布越しに欲望の形をはっきりと示した自分のものに押し付けた。
 
 ハルはびくッと手を引いた。
 その様子に、柚月は薄く笑みを浮かべる。
「……何もしない。お前に触ると、こんな風になるけど、何もしない、……辛い思いさせたりしないから、……そばにいてくれ」
 声を掠れさせながら柚月は、ハルの指に絡まったドッグタグを外す。一瞬困った顔をして、ハルの首の後ろにチェーンを通した。

 吐息が頬に触れるほど距離が近づく。緊張しているかのように、柚月は覚束ない手付きでコネクターを合わせるのを何度も失敗した。
 自嘲の笑みを浮かべる。声が喉に絡んだ。
「……あがってるな、俺、……笑っていいんだぞ」
「………」

 ハルは笑わなかった。─── その代わり。
 さっき無理やりに触れさせられた場所に手を伸ばした。
 気付いた柚月が腰を引こうとするのが判る。ハルは構わず、布の上から指先でその形を確かめた。

「……ミハル」
「……チェーン、付けれた……?」
「……付けた。……触るな、よ」
「なんで……?」
「……お前に、怖い思いさせたくない」
「……オレ、怖く、ないよ……」
 
 柚月さんだから、怖くない、と囁いて、布地の上から執拗に手の平を這わせる。
 柚月は歯の隙間からうめき声のような息を漏らした。
「……駄目だ、ミハル、……」
「……こうされたら、興奮、する……?」

 観念したように柚月は頷く。
 ハルはごくんと息を飲んで、一番訊きたかったことを問う。
「……オレに、触りたい……?」
 柚月に求められたかった。深く繋がりたかった。

 いくら好きだと言ってくれても、触れてもらえないのならそれは本当じゃない。

「………」
 返事が出来ず、逡巡する柚月にハルは自分の気持ちを囁いた。
「……オレ、……柚月さんに触りたい……」

 あやの言葉が脳裏を過ぎる。─── 柚月が触ってくれないのなら、自分から誘えばいい。
 柚月を見上げて、目を合わせた。
「ちゃんと、触りたい……キスしたい、……柚月さんと……」
「……そんな顔で、そんなこと、言うな……」
 
 何かを耐えるような柚月の声に、そんな顔ってどんな顔なんだろう、とハルは思う。触らせて欲しいとねだるみっともない、浅ましい顔だろうか。─── それでも構わない。
「……柚月さんが、オレに触りたくなかったら、触らなくていいから……そのままでいて……?」 

 ハルは柚月の下着をずらし、獰猛な欲望の形をしたそれに直接両手の指を絡めた。
「……っやめろ……っ」
 掠れて拒む柚月の声にハルは頭を横に振った。
「……お願い……柚月さんの気持ちいい顔、見たいんだ……」

 先端からの体液で手の平が滑りを帯びる。指先で敏感な窪みを弄ると、目の焦点が甘くなった柚月の眉間に皺が寄った。
「……気持ち、イイ……?」
 判っていて、わざと訊いた。─── 柚月は自分を好きだと言い、触られて、欲情している。

 柚月は答えずに、ハルが潰れない程度に体重を乗せた。唇を唇で塞ぎ、舌を絡め取る。応えようとしても、それをあしらうように柚月の舌は巧みにハルの唇を蹂躙した。
 ハルのTシャツを捲り上げ、スウェットと下着を放り捨てた大きな手が身体中を撫で回す。尖り出した胸の突起に柚月は執拗に舌を這わせた。

「……ん……っあ……ん、……」
 呂律の回らなくなったハルの唇から甘い声が漏れる。ハルが触り、大きく硬くさせた柚月のものからはすでに手を外していた。─── 欲情に煽られた柚月の情熱的な仕草に翻弄され、それどころではなかった。
 
「……多分、お前をめちゃくちゃにすると思う」
 身に着けているのがドッグタグだけになったハルを柚月は見下ろした。
「触りたい。お前が好きだ。……お前が嫌がっても、やめてやれない。ごめん」
 
 自分を求め、伴う行為に許しを乞う柚月の熱っぽい目付きと声にハルはぼうっとして、頷いた。─── 嫌がったりなんか、しない。
 何もかもを自分のものにする、と宣言するようなキスを受けながら、ハルは幸福の只中にいた。

 

    
       

      目次最終話
 

   *投票していただけると励みになります。

     ←ネット小説ランキングの人気投票です。

   にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
   にほんブログ村  ←クリックすると投票になります。

    ←クリックすると投票になります。

« きみの2:第十七話更新 | トップページ | 第十八話更新&うっかり »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: きみの手を引いて2:第十八話:

« きみの2:第十七話更新 | トップページ | 第十八話更新&うっかり »

2019年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フォト

リンクⅡ

  • 拍手お礼画像等を使わせて頂いています


  • アルファポリス


     
  • 雪ひろとさんと鷹槻れんさんのサイトです。


ブログバナー

  • Bromance

    リンクフリーです。報告は任意でお願いします。
無料ブログはココログ