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それさえも甘やかな日々

 

 R-18BL小説です。18歳未満の方、BLに嫌悪感を持たれる方はご遠慮下さい

 

 恋人の誕生日を知らないことを幼馴染みに詰られた日から、三日ほど経った夜だった。 
 柚月はすぐにでもその恋人に誕生日を訊くつもりでいたが、カフェでの彼のバイトも忙しく、今までゆっくり話すことも出来ずに過ごしていた。
 
 本当のことを言うと、ベッドの中で訊き出せ、と幼馴染みには焚き付けられたものの、そのベッドの中でも何もなかった。訊き出すも訊き出さないもそういった雰囲気にもならないのに無理な相談だ。

 そんなことを考えていた柚月の目の前で、浴室から出てきた当の恋人であるハルはタオルで髪の毛をくしゃくしゃと拭いている。その場で、下着だけだったほっそりした身体にスウェットのハーフパンツとTシャツを着て、タオルを肩にかけた。

 キッチンの中にいた柚月はハルよりも先に風呂を済ませていた。二本目のビールを取り出そうと冷蔵庫のドアを開けたそのついでにハルに声をかける。
 
「なんか飲むか?」
「ビールー、……うっそだよ、冗談だってー」
 軽口を叩いて、明るく笑う。
 
 柚月は面白くなさそうに口をへの字に曲げ、ペットボトルからグラスにコーラを注いだ。
「……怖いカオー、冗談だって言ってるのに」
 決まり悪そうにぶつぶつと言うハルの前のローテーブルにコーラのグラスを置く。ハルは大人しくグラスに口を付けながらTVのチャンネルを変えた。

 缶ビールを手にソファーに座った柚月は、そんなハルの隣で表情を和らげる。
 
 本音を言えば、もう少し、ハルのそばに近づきたい。しかしカフェの夕方からの学生バイトが辞めてしまって、その分、仕事が増えたハルが疲れていることは判っていたので。
 柚月はハルと少し距離を空けた。ソファーの端に座り、間違っても身体に触れないようにする。
 
 TVのバラエティ番組がCMに切り替わったとき、振り向いたハルは自分と柚月との間を測るように見て、不思議そうな表情をした。
「……? 柚月さん、なんか観たいのある?」
 
「なんでもいいよ」
「んー、そう?……」
 なんとなく釈然としない面持ちでハルは柚月を見つめる。

 ……そういう目で見られると、非常に困る、と柚月は目を逸らした。ただでさえ、風呂上がりで余計なくらいおかしな気持ちにさせられるのだ。
 ぎこちなくローテーブルの上に缶ビールを載せた柚月は、さらにソファーの隅に身を寄せた。

「……ねえ、なんでそんな離れてんの?」
 不審そうなハルのその質問に、もっともだ、と心の中で相づちを打つ。というより俺だって離れたくなんかない、と思いながらも柚月はそっけなく言った。

「そんなに離れてない」
「離れてるよ」
「ここに座りたいんだ」
「隅っこなんておかしいじゃん」
「おかしくない」

 軽く言い合いながらもハルは詰め寄ってくる。柚月は身体を引いてハルから遠ざかった。
「……あんまり近寄るな」
 柚月の言葉と態度にハルはぽかんと口を開けた。冷たくなった、と取られても仕方のない自分の言動に気付きながらも、柚月は目を合わせることを拒んだ。
 
「……なんで……? オレ、近寄ったら、やだ?……」
 しょんぼりとうなだれるハルの細い肩を目の端に捉える。それでも柚月は目を逸らし続けた。……自分がどんな目でハルを見てしまうか、よく判っていた。
 
「オレ、そばにいるの、イヤ……?」
「……そうじゃない。そうじゃなくて、……触りたくなるから、近寄るな」
「……はあ?」
 
 顔を上げたハルが訝るような視線を向けてくる。柚月はそれを振り払うように、ぶっきらぼうに言った。
「だから、触りたくなるから近寄るなって言ってるんだ」

 一瞬、きょとんとしたハルだったが、言葉の意味が判ったらしく顔を赤らめた。
「……触れば、いいじゃん」
 突っかかるような小さな声に、柚月は首を振る。
 
「明日もバイトだろう、早く寝ろ。寝てるときには何もしない。……多分」
 多少、寝てる時に頭を撫でるくらいは許容範囲だろう。それで我慢する、と柚月は無愛想に顔を引き締めた。
 
「さ、触っていいって言ってるだろ!」
「駄目だ。……触るだけじゃ済まなくなる」
「すま……」

 直截的な欲望を知らされて言葉に詰まるハルに、柚月はつい目を向けた。
「……困るだろう、そんなことになったら。夕方からの学生バイト減って、忙しいんだろう。……お前に負担かけたくないんだ。頼むから早く寝てくれ」

「……もうっ、早く寝ろ早く寝ろってハハオヤかよ!?」
 強気な口調で言いながらもハルは目を伏せる。……一度、ハルに向けてしまった視線は逸らすことが出来ず、柚月は本音を吐露した。
「……そばにいたら、どうしても触りたくなる」

 瞬く大きな瞳、ほのかに赤い唇、細い肩から胸へ、さらにその下へも遠慮なく視線を這わせていく。きっと自分は恐ろしくいやらしい目付きをしているに違いない、と柚月は思った。

「……途中でやめる自信がない」
 低く掠れた声にハルは顔を上げる。それへ柚月はさらに畳み掛けた。
「途中でやめない自信ならある」

「……」
 欲情を隠さない柚月に、ハルはすっかり困惑してしまったようだった。俯くその愛しい顔を柚月は丹念に見つめる。
 
「……お前は自覚がないみたいだけど」
「じか……じかくって、なん……」
「風呂上がりにそばにいるだけで、充分挑発してるんだぞ」

 ハルの腕に柚月は大きな手を伸ばす。
「触るぞ。……いいのか?」
「……」
 
 いい、と言えないのを承知で柚月は強引にハルの腕を掴んで引き寄せた。限界だった。
 今まで、何度も、何度も触れたハルの華奢な身体を腕の中に閉じ込める。本当はもっと触れたい。抱きしめるだけではなく、手の平を、指を、唇を、じかに這わせて声を聞きたい。反応が見たい。

 自分のものにしたい。
 しかし、それでも柚月はハルを取り巻いていた腕をゆるゆると解いた。

「……もう寝ろ。ああ、……俺が寝る。悪かったな」
 ハルの両肩を掴んで、身体を引き離す。心地いいハルの体温がすうっと消えていく。柚月は三分の一も残っていた缶ビールを一気に空けると、ソファーを立ち上がって寝室に向かった。

「……柚月さん」
 ハルはそんな柚月を追いかけてきた。返事をせず、ハルに背中を向けたまま、柚月はベッドに上がって目覚まし時計をセットする。

「柚月さん」
 やはり返事をしないでいると、シカトかよ、とハルは小さく非難した。
 それさえも聞こえない振りを貫いた柚月は涼しい顔で ─── そう見せかけているだけの顔で、丸まっていたタオルケットと掛け布団を均す。
 
 いきなり背中を、どん、と突き飛ばされた。驚き、バランスを崩してベッドに手をついた柚月が振り返ると、細くしなやかな身体がのしかかってくる。

 ハルの肩にかかっていたタオルが落ちた。
「な、なに、なんだっ?」
「……黙ってて。こっち見ないで」
 
 柚月のジャージのズボンが引き下ろされる。突然の出来事に抗うことも出来ない。柚月は口をぱくぱくさせて、ハルの細い指先が下着の上から自分の硬くなりつつあるものをなぞるのを見ていた。

「……ハル。ちょ……待て」
「黙ってろって言ってるだろ!」
 見上げると、ハルの顔は真っ赤だった。今まで触れられるばかりで、自分から触れることに慣れていないのだろう。その指先はたどたどしく、頼りない。

 意を決したように、ハルは柚月の下着をずらしてそれを口に含んだ。
「……っ」
 柚月は息を飲んで、煌々と照らしている天井のライトを見つめた。─── 今、下に目を向ければ、ハルが俺の……。

 リビングの点けっぱなしのTVの音に気を逸らす。そうでもしなければすぐにでも暴発しそうだった。
 それでも、募る射精感と共に心臓の鼓動が高まっていく。
「……んっ……ん……っ」
 息切れと共に苦しそうなハルの声がして、思わず柚月は下半身に目をやった。

 生乾きの柔らかい髪の毛。添えられた細い指先。伏せた目の長い睫毛。赤い唇が ──── ……。
「ま……っ待て、ハル、まずい、やめっ……」
  焦ってハルの頭を押し退ける。─── 同時に白濁したものが飛んだ。
 
「……あ」
「…………!!」
  柚月は声にならない悲鳴を上げた。不本意……というよりも。

 自分がぶちまけてしまったものが、ハルの頬から顎を伝う。吐精の後の解放感と、ハルの整った顔が汚れたその光景に柚月はうろたえた。
「……ごめん!わ、悪かった!」
「……オレ、ガンシャされたの初めてだよ……」

 長い睫毛の先からぽたりと落ちる。柚月は慌ててサイドテーブルのティッシュを引き寄せた。
「……ワザとぶっかけたの?」
「そんなわけないだろうっ」

 前髪までかかってしまったのを、柚月は丁寧に拭き取る。目をつぶって大人しく柚月のされるがままになっていたハルが、訊いた。
「気持ち良かった……?」
「……良かったから早かったんだろうが」

「あれ、自虐的ー……柚月さんがシカトするから、頑張ったんだ、オレ」
 目をつぶったまま、くすくすと笑うハルに柚月は目を眇めた。
 ハルの肩から落ち、ベッドの端にかろうじて引っかかっていたタオルを手に取る。

 ハルが目を開ける前にそれを目隠しのように巻きつけた。頭の後ろで結わえる。
「……!? な、なに、柚月さんっ」
「よく拭いてやるだけだよ」

「なんか、なんか違う、とってよ!」
 言いながら、自分で目隠しを取ろうとするハルの両手首を掴んで阻んだ。
「……柚月さん?」

 不安そうに自分の名を呼ぶハルを無理やり押し倒した。Tシャツの裾を捲って薄い胸に手の平を這わせる。
「やっ、やあ、やめて……!」
 悲鳴を上げたハルは、柚月の手から逃れようと身を捩った。いつもとは違う、子供じみた仕草と声に柚月は戸惑い、少しだけ身体を浮かせる。

 ハルは目隠しをされたまま、ベッドの上に横たわっている。柚月の指先がほんの少し、ハーフパンツから伸びた膝に触れただけで、びく、と身体を硬くして縮こまった。
「ゆ……ゆづき、さん……」

「……」
「見えない、から、返事して……おねがい……」
 オレ、柚月さんじゃなきゃやだから、とハルは泣きそうな声で懇願した。 
「……柚月さんじゃ、ないみたいで、やだ……他の、知らない奴みたいで……やだよ……」

 不安にかられたハルの小さな声に、柚月は憐憫とも愛しさともつかない感情を覚える。─── 柚月ではない他の男と、金のために、或いは眠る場所を確保するために、乞われて身体を与えていたことをいつもハルは悔やんでいた。

『……他の奴とヤって慣れてるって、柚月さんに思われたら、やだから……』
 嫌ならやめる、と身体を離そうとした柚月にすがりついてきたいつかのハルの痛々しい姿が、目隠しをされ、ベッドに横たわって身体を硬くしている今のハルの姿と重なる。

 柚月はすっと手を伸ばして白い頬を包み込んだ。もう片方の手で膝を割り開いてその間に身体を入れる。宥めるように膝から腰へ手を滑らせた。
 そんなふうに柚月が触れる間中、ハルは身体を竦ませ、ひとつひとつの仕草に敏感に反応した。
 
「……っや……あっ……」
 身体を強張らせ、柚月から逃れようと手が宙をさまよう。柚月さん、と涙声が呼ぶ。
 
 柚月はハルの頭の後ろの結び目を解いた。現れた瞼がゆっくりと開き、柚月を捉える。
「……よ……よく見えない……」

 ハルは手の甲でごしごしと目を擦った。タオルで圧迫されたせいか、視界が霞んでいるようだった。柚月は、ハルのその手を取って甲に口付ける。
「あんまり擦るな。目が傷つく、……怒ったか?」

「……っ柚月さんのバカ、意地悪、した……」
「……他の奴のほうがよかったか?」
 ほんの少しの嫉妬心から柚月は図らずも訊いてしまう。
 まだよく見えていないらしい目で、ハルは必死に柚月の輪郭を捉えてしがみついてきた。

「やだっ……柚月さんがいい。他の奴じゃやだ……」
「……ごめん」

 ハルが、今までの他の男との情事を気にし、それを自分に知られたくない、と思っていることはよく判っていたはずなのに。
 ─── 自分以外の男には触れられたくない、と知っていたはずなのに。

 ごめんな、ともう一度柚月は囁き、ハーフパンツの裾から手を入れる。萎縮しているそれを手の中で慰めた。
「……ん……っあ、……やっ……」

「もう見えるか?」
 顔を真っ赤にしたハルは何度も頷く。柚月はあえかな声を上げるハルの唇を自分の唇で塞ぎながら、ハーフパンツと下着を引き下ろした。

「!! や……っ」
「……誰に、何されてる?」
 ハルに軽く体重をかけ、身動きが取れないようにしながら柚月は訊いた。

「ゆ……っ柚月さんに、……」
「に?」
 その間も忙しなく手を動かし、ハルの思考力を奪っていく。ハルの身体から力が抜け、解れていく様子が愛しくてならない。

「んっ……手、が……柚月さんの、手……あ……っ」
「手が、どうした?」
 耳たぶまで赤く染めて、目を潤ませている。手の中のものが限界を迎えそうなのを悟り、柚月は身体をずらし、それを舌先で包み込んだ。

「やー……っダメ……っ」
「……今は? 何されてる?」
「……くち、……くちで……あ……っ」

 細く、甘い声を上げながら達してしまったハルに、柚月は満ち足りた笑みを浮かべた。

 
 ……その夜。何度も触れ合うだけのキスの合間に、柚月はハルの誕生日を訊き出すことに成功した。

  

                                end. 

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