« 2010年12月 | トップページ | 2011年2月 »

2011年1月

拍手コメントありがとうございます

 時間がなくて……すいません(;´д`)トホホ…

 コメレスです♪↓

続きを読む "拍手コメントありがとうございます" »

バナー&ヘヴン2第4話更新

 トップに置いてある作品にバナーをくっつけてみました。「きみの」のバナーが可愛くてお気に入りです。画像はlostpia様から(*^-^)

 その脇についてる赤文字R-18、15はご愛嬌(^-^; ……いや、そんな可愛らしいもんじゃないだろうΣ(゚д゚;)

  

 インターポットのお庭の木につぼみが付きました\(^o^)/ 嬉しいです。

 しかしこの記事を書くときもポットもなんだか重くてやりづらい……リニューアルのせいかな?

 

 ヘヴン2第4話を更新しました~。

 以下ちょっとネタバレ↓

続きを読む "バナー&ヘヴン2第4話更新" »

ヘヴンズブルー2:第4話

 
 斜め掛けにしたドラムバッグをナオは肩に掛け直した。身体の脇のその荷物は実際の中身以上に重く感じる。

 夏の夜の匂いと虫の声がやけに懐かしい。昼間は嫌になるほど暑く湿った空気が、夜になるとこうして落ち着き、涼しい風になるのがナオは好きだった。

「……」
 夜の外の匂いを忘れ、今それを懐かしく思っているのは、─── 冬から夏に季節が変わるまで和臣のマンションにいたせいだ、と気付く。その記憶、和臣のそばにいられた思い出は瞬時に温かくナオの心を満たしたが、頭を振って隅に押しやった。

 ふっと息を吐いて、どこかひと休み出来るところはないか、と辺りを見回す。道路の反対側に小さな公園があることを思い出し、そこに向かった。
 動物を模した遊具や周りを柵に囲われたブランコの間を抜けて、背もたれのない木製のベンチに近付く。
 
 風雨に黒ずんだベンチにバッグを下ろして腰かける。傍らの砂場を覆うブルーシートが目を引いた。
 すっかり暗くなった中、人けのない公園の外灯が明るくナオを照らす。

 携帯電話が鳴った。ナオはパーカーベストのポケットから着信音を鳴らすそれを取り出し、通話ボタンを押した。着信拒否設定をしてあるので電話の相手が和臣である可能性はない。─── 尤も、和臣が自分に電話すると考えるのは、思い上がりに過ぎないのかもしれないが。
 
「はい。……レイ?」
『今、大丈夫ですか?』

 かけてきたのはレイだった。受話口の向こうで、明日会えますか、と訊いてくる。
「うん。大丈夫」
『よかった。待ち合わせってどこがいいですか? また、迎えにいきましょうか』

「あ、えーと、……臣さんとこはまずいかな。どこか、レイが決めていいよ。そこ行くから」
『?……なんか、変じゃないですか?』
 臣さんとこなんて、まるでマンションにいないみたいですよ、とレイは茶化すような口調で言う。ナオは少し笑みを浮かべた。

「……うん。ちょっと外出てるから」
『え、外? 今ですか?……オーナーとデート中?』
「ううん。一緒じゃない」

『……どこにいるんですか。そこ、どこですか?』
 レイの声が心配そうに曇る。ナオは問われるままに場所を答えた。

 レイはすぐに現れた。足早に公園に走りこんで来てきょろきょろと見回している。
「……ナオさん?」
 ナオを見つけてまっすぐに駆け寄ってきた。

「今、何時だと思って……こんなとこにひとりでいるなんて」
 食ってくれって言ってるようなもんですよっ、と息を切らしながら顔を強張らせている。ああ、レイにはよく叱られるなあ、と思いながらナオはその綺麗に整った顔を眺めた。

「だいじょぶ、ここ、あんまりそういうとこじゃないから」
「もう! そういうとこじゃなくたって夜の公園でぼんやりしないで下さいよ!」
 えへへ、とナオは照れたように笑う。

「ったくもう、……オーナーはどうしたんです。その荷物は?」
 ベンチの上のドラムバッグを横目に見ながらレイは問いただす。決まりの悪い思いでナオはバッグを足元に下ろして、レイの座る場所を作った。
 
「ええと、……オーナーは、どうしたっけ……? この荷物は、ねえ……」
「はあ?」
 ごにょごにょと要領を得ないナオの言葉に、隣に座ったレイは眉間にしわを寄せた。

「なにごまかしてるんですか。白状して下さい」
「……はい……」
 ナオはしおしおと項垂れて、レイに黒川と会ったことを打ち明けた。……

 

 

 

「……まさか受け取らなかったですよね、その封筒」
 ほとんど口を挟まずに聞いていたレイは、「お金の入った封筒渡されて」とナオが話したところで低く訊いた。

「受け取ったよ」
 あっさりと言うナオにレイは動顛した。
「どうして。ありえない、なんで突き返さないんですか!」

「なんでって……わざわざ持って来てくれたわけだし。もったいないし、受け取らなかったら黒川さん困ると思うし」
「そんな奴どうだっていいでしょう!? 判りましたって金もらってマンション出てきちゃったんですか!?」

「んん、まあ、そうなんだけどー」
「そうなんだけどー、って……一体いくら、いくら入ってたんですか」
「あっ、見るー?」

 呂律もよく回らなくなっているレイの目の前で、ナオはドラムバッグの中をがさがさと探る。膨らんだ大きめの封筒を取り出した。
「はい」

 無造作にレイに手渡そうとする。レイはその封筒をナオへ押し戻した。
「いや、いいです。見ないです」
「そう? 五百万くらいかなー」
 覗いたら、五コ、束になってたから、と朗らかに封筒をバッグへ戻すナオにレイは嘆息した。

 がくりと力が抜けたように肩を落とすレイを残して、ナオは身軽に立ち上がる。公園の入り口の自販機でペットボトルの炭酸飲料を買って戻ってきた。

 冷たいそれを一本、レイに手渡す。
「レイの家の近くでなくてゴメンね。……缶コーヒーの方がよかった?」
 『缶コーヒーをおごって欲しい、自分の家のそばで』とレイが以前言ったことをナオは覚えていたらしい。
 レイは苦笑いを浮かべた。
 
「ああ、……あれは口実です。ナオさんがうちに来てくれたら、と思って」
「ふーん?」

 よく意味が判らずにナオはあいまいに笑って、自分のペットボトルの蓋をひねる。
 ふたりともがしばらく黙って飲んだ後、目を伏せたレイは押し出すように低く言った。
「……金なんて欲しくなかったくせに」

 詰るような口調のレイに、ナオは明るい声を出した。
「そんなことないよ。封筒、すんごい分厚いでしょー。くらくらして思わず受け取っ……」
「そういうことじゃなくて」

 遮ったレイの声は明らかに硬かった。それに気付いたナオは口を噤む。
「……そういうんじゃなくて。……金に目がくらんだ、みたいな嘘やめて下さい。なんでもないみたいなフリもしないで下さい。……なんで、そんな……」

 目のふちを赤く染めて、レイは絞り出すような声を出した。
「……あのひとのこと、本気で好きなくせに……!」
 ぐっとペットボトルを握りしめ、それをじっと見つめている。そんなレイにナオは穏やかな表情で首を傾げた。

「……さあ、どうかなー。最初から、オーナーが僕のこと本気で相手にしてくれるわけないって判ってたし。……僕も本気になんてしてないよー」

「本気じゃないって……」
「……オーナーね、お見合いするんだって。黒川さんが教えてくれたんだー。……僕はもういらないって」

 ほんの一瞬だけ ───。
 淋しそうな色がナオの目と声に宿る。はっと胸を突かれたレイは言葉を失った。
 それはすぐに通り過ぎ、ナオは満面の笑みを浮かべた。

「オーナーが結婚するの、楽しみだね? どんなひとかな、奥さん。オーナーの趣味ってちょっと変わってるからなー、あ、僕とエンコーするくらいだから、ちょっとじゃなくてすごい変わってるか。いいひとだといいねー」

「……て下さい」
 低いレイの声が聞き取れなくて、ナオは首を傾げた。

「やめて下さい。……なんで、そんな、……俺は、ずっとそばで見てた。ちゃんと、あんたが、……ナオさんが、あのひとのこと、……あのひとだって」
 言いかけてレイは唇を噛んだ。赤くなった瞼を手の平で覆って乱暴に擦る。

「……ああもう! 信じらんないひとだな、本当に!」
「怒ってるの?」
「怒ってませんよ! ただとんでもない嘘つきだと思ってるだけで!」

「エー、嘘つきじゃないよー」
 ナオは拗ねたように唇を尖らせる。それを少しの間眺めていたレイは、ぽつん、と言った。
「……こういう時、俺には本当のこと、言ってくれると思ってたのに」

「本当のことだって」
 ナオの指先が、中身が半分ほどになったペットボトルの側面を軽く押した。その音が夜の公園に響き、二人の耳を打つ。
「……オーナーはちょっとエンコー相手に引っかけられて、一緒に暮らしたりしちゃったけど、それだけ。そのエンコー相手も遊びで、お互い大して好きじゃなかった。これが本当になるんだよ」

「……そんなの本当じゃない」
 あいまいにナオは笑みを浮かべる。聞き分けのない子供に接するように、ゆっくりと言った。
 
「……オーナーのおうちはさー、ちゃんと結婚しなきゃいけないおうちなんだよ。お父さんとかお母さんとかに早く結婚しろって言われてるんだよ、きっと。……ちょうど僕にも飽きてきて、いい機会だって」

「飽きてきてって……ナオさん、……その黒川って奴のこと、オーナーも承知の上だって思ってるんですか」
「……」
 ナオは答えずにペットボトルを弄ぶ。

 穏やかに笑みを浮かべるナオをレイはただ黙って見つめる。─── なぜ笑っていられるのか、とレイは思う。金はその場で突き返すべきだし、オーナーには黒川のことを訊いて真意を質すべきだ。言いなりにマンションを出る必要はない。
 
 しかし、そうしないのがナオなのだ、ということもまた判っていた。自分の不利益よりも、誰も困らせたくない、迷惑をかけたくない、と考えるナオだからこそ、レイを惹きつけた。
 そして同時に、黒川のことをオーナーに訊けないナオの弱さにも、愛しさともどかしさを覚える。

 ナオから目を逸らして、レイは俯いた。
「……俺はそうは思いませんけど」
「オーナーのこと庇うんだ? やっぱり好きなの?」
「誰が!? 誰を!?」

 いきり立つレイにナオは明るく笑う。あの男を擁護したのはナオの為だ。なにもかも全て、甘やかな記憶さえなかったことにしようとするナオを、レイは見過ごすことが出来ない。
 ひとしきり笑ったナオは夜空を見上げた。

「あーあ。……どっか、しばらく泊まれるとこ探さなきゃねー。前のアパート解約しなきゃよかったな」
「……ほんとに、マジで、帰らないつもりなんですか」
「帰らないよ。手切れ金ももらったし」
 
「……じゃあ、俺んちに来てください」
「いいの?」
「いいですよ」

 レイは立ち上がり、ナオのドラムバッグのストラップを持ち上げた。
「行きましょうか。……ジュースのお礼に、うちで夜明けのコーヒーごちそうしますよ、毎日」

「やったー」
 レイの冗談にナオは無邪気に喜んだ顔を見せる。通りすがりざま、公園の入り口のゴミ箱に潰した空のペットボトルを投げ入れたレイは、ナオを見守るような自分の視線に気付いて目を逸らした。

 

 

      

      目次第5話
  

↓*投票して頂けると嬉しいです

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

 

 

木の名前はkibou(^-^;

 インターポット(仮想ガーデニング?)を始めてみました。お金がかからないようにやってます(^-^;

 ちょっとずつ葉っぱが増えてるのが嬉しいです。\(^o^)/ これから冬なので散るらしいんですが。(;ω;)

 和風のお庭にしたいなあ……。

 

 拍手コメントありがとうございます^^* コメレスです↓

続きを読む "木の名前はkibou(^-^;" »

ヘヴン2第3話更新&注釈忘れ反省

 ヘヴン2第3話更新しました~。

 そういえば、第2話のレイのセリフ「ヘヴンで会っただけで目の色変えちゃって」は「in heaven…」で、メール消された事件は「息も出来ないくらい」です。第1話は「きみの2」の第十五話を引きずってるし……。注釈入れるの忘れてましたΣ(゚д゚;) すいません……。 

 まあ、そういうことがあった、程度で。ι(´Д`υ)アセアセ

 

 先週、中学校の入学説明会に行ってきましたヽ(´▽`)/ これでやっと落ち着いた……(*^.^*) あとは学校指定用品を買いそろえるだけです。

 子供が小学校入った時、6年間って長いと思ったのですが、卒業間近になってみるとあっという間でした。こりゃすぐ高校受験だな!(←親の感覚ってそんなカンジ┐(´-`)┌ 自分のことじゃないからなおさら(^-^;)

 いつも拍手ありがとうございますo(_ _)oペコッ コメレスです↓

続きを読む "ヘヴン2第3話更新&注釈忘れ反省" »

ヘヴンズブルー2:第3話

 
 そんなふうにナオがなんとなくの不安を ─── 和臣の気持ちに対する不安を感じたまま、日々は過ぎて行った。
 
 和臣は明らかにナオを避けるようになっていた。ナオと暮らし始めてから、和臣は仕事を終えると一度マンションに帰ってナオの作った夕食を摂り、ヘヴンズブルーに二時間ほど顔を出す、という生活サイクルになっていたが、その夕食を「仕事で食ってくる」と断るようになった。
 
 朝は昼前にコーヒーだけ飲んで出かけてしまうので、夕食を一緒にしなければ必然的に一緒にいる時間も会話も減る。また、十一時過ぎに帰宅しても、機嫌の悪そうな顔で書斎に引きこもってしまう。
 最初、和臣の態度がおかしいと気付いた頃 ─── レイと食事に行った頃 ─── は一週間のうち二日ほどだったそんな日が、三日、四日と増えていき、三週間も経つ頃にはほとんど毎日のようになった。
 
 もちろん、ナオの不安は増していった。それでも時折り酔った和臣に気まぐれのように抱きしめられ、「どこにも行くな」と囁かれるのは嬉しく、その時だけは不安が消えた。……翌日、いつもよりさらに不機嫌になった和臣に突き放されるような態度を取られたとしても。

 ナオは懸命に不安に蓋をした。
(レイも、ああ言ってくれてるんだし、……大丈夫。大丈夫……)
 そして、和臣に直截聞き質すこともないまま、時だけが経っていった。
 
 その電話があったのは、ナオが和臣の様子に不安を覚え始めてからひと月後だった。
 電話の主は「成沢 繁之の秘書をしております。黒川といいます」と名乗った。男の声だった。
(なるさわ、……臣さんの、お父さん)

 電話があった時、和臣はすぐそばにいた。以前ならば聞き耳を立て、電話を切ればすぐさま「どうした、誰からだ」と訊いてきたのに、今は携帯電話を耳に当てている自分からすっと離れて行ってしまう。
 
 まるで、電話の相手など興味もないように。
 ナオは、背中を向けて自分の書斎に入っていってしまう和臣の後ろ姿をそっと見つめた。黒川という男の言葉もろくに耳に入らず、気が付けば会う約束をしていた。

 
 
  

 
 
 
 指定された店は繁華街から少し離れた小ぢんまりとしたカフェだった。あまり客もおらず、冷房の効いた店内に静かに有線放送の懐かしい歌謡曲が流れている。
 
 ナオがドアを潜ると電話で話した人物らしき男が立ち上がった。黒いスーツに目立たないネクタイと一見ビジネスマン風だったが、雰囲気がサラリーマンとは違う。中肉中背で二十代後半くらいの彼は、どこと言って特徴のない顔の小さな目でナオを見とめ、一礼した。ナオも目顔で頭を下げる。

「……遅れてすいません」
「いえ、私が早く来たんです」
 柔和に言った男は元の席に座り、正面に座るようにナオを促す。ためらいながらもナオは従った。

「コーヒー、……アイスでよろしいですか」
「はい」
 オーダーを取りに来ようとしていた店員に、男はアイスコーヒーとホットをひとつずつ注文してナオに向き直った。

「初めまして、ですね。実は何度か拝見しているのですが、こうしてお会いするのは初めてだ」
「はあ……」
 答えようもなく、ナオはあいまいに返事をする。

「黒川と言います」
 黒いスーツの内ポケットから名刺入れを取り出した男は、ナオに一枚を差し出した。
「……黒川さん」

 名前を復唱しながらナオはその名刺を観察した。肩書の最後に私設秘書とあるのが目を引く。
 ナオの視線に気付いて黒川は頷いた。
「電話でお話しさせて頂いた通り、成沢 繁之の私設秘書をしております。とはいえ、あの方ももう政界から身を引いておりますもので大した仕事はございません。体のいい住み込みの雑用係です」

「ええと、……和臣さんの」
「はい。こうしてお越し下さったからにはご存知かとは思いますが、成沢は成沢 和臣の祖父です」
 
 実際には、愛人に産ませた和臣を認知するのが憚られ、無理に次男夫婦の養子として籍に入れたのだ、と当の本人の和臣から聞いたことがある。どうでもそれぞれ、祖父、孫として押し通すつもりらしいと黒川の口調から知れた。

「あの、……すいません、僕、名刺持ってないんです」
「ああ、よろしいですよ。鈴原 七生さん」

 名前を ─── 素性を知っているということを印象付けるように、黒川は軽く唇の両端を上げて笑みを作った。オーダーした品が運ばれてきて、それぞれ口を付ける。
 沈黙の後、おもむろに黒川は口を開いた。
「私がこうしてあなたとお話しすることになったのはですね、和臣様のことです」
 
 うわあ、臣さんが様付されるとこ初めて見た、とナオは感心した。けれど、この人たちが住む世界ではそれが普通なのだろう。現になんの躊躇もなかった。

「確認する為に参りました。……あなたと和臣様はお付き合いなさっている。そうですね」
「……」
 ここ最近の和臣のそっけない態度が心を過ぎり、ナオの返事を遅らせる。

(お付き合いなさっている、ようなお上品な関係じゃないし、……臣さんが僕をどう思っているのか判らないけど)
 ナオは内心の不安を押し隠し、素直にこくりと頷いた。
「はい。……ダメでしょうか」

「いいえ、とんでもない。そんな偏見など私も、成沢も持ってはおりません。ただ、その、少し、……想像外と言いますか、理解し難くはあります。判って頂けるとありがたいのですが」
「判ります」
 ナオは即答した。自分と和臣の関係が少数派の部類に属していて、世間一般では受け入れられないものだと知っている。

 そんなナオに黒川は当てが外れたような表情を向けた。軽く咳払いして、その表情をごまかす。
「……話を続けさせて頂きます。あなたは現在、和臣様と一緒に暮らしている。……その前は一人暮らしを?」
「……はい」
 話の行き先が判らず、ナオの中で不安が膨れ上がっていく。もじもじと身動ぎした。

「その若さで一人暮らしとは、なかなか複雑な事情がおありになる」
「僕、もう、十九です。別に変じゃないと思います」
「和臣様と暮らす前、……中学校を卒業されてすぐのことですよ」

 以前の仕事のことを暗に仄めかされ、ナオは俯いた。もやもやした嫌なものが胸にわだかまり、どうしたらいいか判らない。
「……あの、……僕が前していたことは悪いことです。よく判っています。な……成沢さんが……えと、和臣さんのお祖父さんが、僕のこと気に入らなくて、そういう……」

「いえ、それはもう以前のことですからね、今はもう何もないわけですから」
 否定しながら、黒川は観察するような視線をナオに注ぐ。ナオは目線を上げられず、アイスコーヒーの水面を見つめた。

 黒川はゆっくりとした仕草で、自分のコーヒーカップを空にする。音も立てずにソーサーにカップを戻して、俯くナオを見据えた。
「……和臣様に縁談があることはご存知ですか」

「……」
 膝の上に置いたナオの指先が、ぴくりと動く。
 黒川は柔和な ─── しかし先ほどよりも低い声で話を続けた。
 
「と言いますか、縁談はずっと以前から降るようにありました。そういうお家柄なのでね、財界からも政界からも繋がりがあって損はないといったような。……しかし、和臣様は興味をお持ちにならなかった。……失礼」

 一旦、言葉を区切り、黒川は手を挙げてコーヒーを追加オーダーした。空になったコーヒーカップが下げられ、新たなカップが黒川の前に置かれる。時間稼ぎのように黒川はその間、口を開かず、ナオはなんとなく黒川は自分と話をするのが気が進まないのではないかと思った。

 話の再開は突然だった。
「……今までは、それでも良かったのです。まだ若いから、と奥様も大目に見ていた。しかし、あまりに和臣様が固辞なさるので、縁談をですね、それで私が出しゃばって参りました」

 黒川は多分、成沢 繁之氏の秘書というよりもその奥様の使いで現れたのだろう。そのあまり特徴のない目に決意が宿るのを目にして、ナオはふっと息を吐いた。
「単刀直入に申し上げます。奥様は今度の縁談に大変乗り気でいらっしゃる。お相手は家柄も財力も申し分がないお嬢様です。……失礼ながら、あなたは素行もいいとは言えない。その上、男性で、そのう、私にはとても」

 黒川は言葉を濁す。察したナオは寂しそうに小さく笑った。
「……」
「……正直に申し上げますと、あなたは和臣様に相応しくないと言いますか……邪魔、と申し上げては言い過ぎかもしれませんが、和臣様にとって必要ではございません。いえ、むしろ公になると非常に困る……和臣様が、です」

「……判ります」
 ナオの穏やかな声に黒川は明らかに戸惑い、目を伏せた。
「……これは私の仕事なのです。判って頂きたい」

「もちろんです。黒川さんのお仕事を邪魔するつもりはありません」
 ナオはにこりと無理に笑みを浮かべた。
「僕が、……邪魔なんですね?」

「……これを」
 黒川は隣の椅子に置いてあったセカンドバッグから分厚いB5サイズの封筒を取り出し、テーブルの上に置く。すっとナオのグラスの脇に押しやった。

「お受け取り下さい」
 ナオはその封筒をじっと見つめる。─── 中身の想像はついていた。
「……どうぞお確かめ下さい。足りなければいくらでも用立てます。遠慮なく仰って下さい」

「─── いえ。充分です」
「……中をお確かめにならないので?」
「はい」

 俯いたまま、やんわりと微笑むナオに、黒川は急き立てられるように話した。
「……これは、和臣様の為なのです。奥様は大変心配していらっしゃいます。あなたとのことは一時の気の迷いとは存じますが、後々なにかと不都合が生じないとも限らない、……それに、和臣様も縁談を承知して下さいました」

「え……」
「……会ってみてもいい、と。和臣様さえ乗り気になって下さればまとまる縁談なのです。あちらは断らない、そういうお話なのです。……和臣様もそろそろご自分の家族を持ってもいいとお思いになったのかもしれません。どうか、邪魔をなさらないで頂けますか」

 臣さんが、とナオは思わず呟いた。人前で、いつもの呼び方をしてしまったことにも気付かないほど動揺していた。
「そ……うですか」

「先ほども申し上げた通り、ご連絡頂ければいくらでもご用立て致します。……和臣様のマンションを出て、二度とお会いにならないと約束していただけますか」
「……はい」

 ナオはもう一度、小さな声で、はい、と言った。
 懐かしいメロディが低く流れる中、アイスコーヒーの氷がゆっくりと溶けていく。二杯目のコーヒーにほとんど手を付けずに立ち上がった黒川が会計を済ませて店を出て行った後も、ナオは席に座ったままだった。

      

      目次第4話
  

↓*投票して頂けると嬉しいです

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

 

 

三学期

 三学期ですね……ついに役員交代の時期がやって参りました!\(^o^)/

 2月には新旧役員会があるので、やった、旧だ、と思いつつ資料を作成中です。( ̄▽ ̄)

 それ以外にも長男が今年中学入学ということで、詰襟の学生服を仕立てに行ったり(高校で誰かひとりくらいブレザーの学校行ってくれないものだろうか。……←自分に正直過ぎる感想でちょっと┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~)入学説明会があったりで、気もそぞろです。落ち着け、私。入学するのは私じゃない。(゚ー゚;

 そんな地に足が着いてないような八月ですが、作品にたくさんの拍手ありがとうございます。o(_ _)oペコッ

 コメレスです↓

続きを読む "三学期" »

ヘヴン2第2話更新

 ヘヴンズブルー2の第2話を更新しました。

 2、2、ってなんだかややこしいですね……。普通にヘヴンの第2話もあるのに。続き物の厄介なところ┐(´-`)┌ タイトル変えたら良かったかも……。

 しかしそう簡単にタイトルも思いつかないので、コレでいきます。もういいよ……ヘヴンでいいじゃん。きみのだってそうなんだからさあ。←さんざん考え、迷いに迷った挙句の結論┐(´д`)┌ヤレヤレ

 16さん(読んで頂いているか判らないんですが(^-^;)メールありがとうございます。o(_ _)oペコッ またメールでお返事しますね~。(*^-^)

 

 以下、第2話ちょっと言及。↓

続きを読む "ヘヴン2第2話更新" »

ヘヴンズブルー2:第2話

 
 レイの目の前に座っていたナオは、躊躇いながらも告白した。
「臣さん、最近ヘンなんだ」
「はあ?」

 とあるホテルの一階ラウンジのレストラン。昨夜はこのホテルの一室でふたりきり、一夜を過ご……せてたら良かったな、と思ったのはレイだったが、無論、そんなことはあるはずもない。

 以前からナオを食事という名のデートに誘っていたレイの努力は実り、やっとここまでこぎつけていた。とは言っても、真っ昼間のランチバイキングであったし、ナオにしてみれば友人と一緒に昼メシを食べに来ただけ、ということはレイには良く判っていた。

 ナオには、大好きな、大好きな、恋人がいるからだ。
 その恋人の名は成沢 和臣という。浅黒い肌に、まあ端正と言ってもいい顔立ち、背もそこそこ、実家は金持ちで多分権力者、そしてナオより十四も年上、三十三歳の大人の男だった。

 その男のことを脳裏に思い浮かべるたびに、レイは整った目鼻立ちを歪めてしまう。
(……俺なんか、ナオさんより年下のガキだけど)
 だから、ナオさんが俺よりあの人のほうがいいって思うのは仕方ないかもしれないけど。

(それでも、俺がナオさんを諦める理由にはならないはずだ)
 
 力強くそう考え、たゆまぬ努力の末デート(?)に成功していたレイだったが、食事の間中なんとなく元気のない想い人にわけを訊ねてみれば、その大好きな恋人の様子がおかしい、と言う。

 大体、万事が万事この調子で、最終的にナオの口から出るのは「臣さん」の名前なので、その度にレイは敗北感と達観にも似た諦めを味わうことになる。

 また今回も同じ気持ちを味わうのだろう、とレイは一旦は不機嫌そうに歪みかけた唇の端を上げて、皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「ヘン、って何がです?」
「んー、上手く言えないんだけど、……なんかよそよそしいっていうか……他人行儀っていうか……」

 言ってしまえば確定的になってしまうその微妙な雰囲気を認めたくないのだろう、ナオは目を伏せて口ごもる。それを察したレイはまなじりを優しく下げて、ナオを制した。
「話したくなかったらムリに話さなくてもいいですよ。元気ないみたいだから、気になっただけ」

「別にムリってわけじゃないよ、……それに、そうだ、聞いてもらったほうがいいかも」
「そうですか? ナオさんの気が晴れるなら、どんな惚気でも付き合いますけどね」
「ノロケじゃないよー」

 ナオは拗ねたように唇を尖らせた。そんなナオが可愛らしくてたまらず、レイは口元を綻ばせる。
 テーブルに所狭しと並んだ空の皿に視線を落として、ナオは小さく話し出した。
 
「……臣さんさ、こないだっからヘンなんだ。僕のこと、なんか、……避けてるっていうか……遠ざけようとしてる、ような気がするんだ。ケータイのこととか、なんにも言わなくなったし……メール来ても全然、気にしないし……今日だって、誰と会うとか訊かないで、出かけるって言っても、ああ、って……ああ、そうか、って……」

「今までヤキモチ焼いてくれるのが嬉しかったのに、そうじゃなくなったから淋しいってことですか?」
「そんなんじゃないけどさー……」
 そんなんなのだろう。レイは視線を泳がせるナオを眺めた。

 これだから、ヘヴンのオーナー ─── 成沢には勝てない、と思う。ナオは恋人と他人とで表す態度を露骨に変えたりしない人間だが、 ─── 二人きりの時は別なのだろうけど ─── それは要するに体面を気にして格好を付けているだけで、結局のところあのオーナーにメロメロに恋をしている。
 
 ちぇ、とレイは心の中で舌打ちをした。
 損な役回りではあるけれど、仕方がない。何より自分が、ナオの浮かない顔を見たくない。
「……大丈夫ですよ。あのオーナーが心変わりなんて、ありえない」

「ありえない、なんて……」
 どうして判るの? とナオは小さく訊く。不安な気持ちを表に出すのがみっともない、と思っているのだろう。
 レイは安心させるように微笑んだ。

「だってただの友達でしかない俺にまで嫉妬してるでしょう。あの人。ちょっとヘヴンで俺と話しただけで目の色変えちゃって。俺のメール、ケータイ取り上げられて消されたんでしょう、ナオさん」
 
 それはほんの二週間ほど前のことだった。たゆまぬ努力の一環で、ナオを食事に誘うべく、ウザいと思われない程度に何回かメールを送ってみたりしたレイの下心を感知したのか、ものの見事にそのお誘いメールはナオの恋人に見つかり、あえなく消去される、という事件が起きた。
 
「びっくりしましたよ、メール消された、ごめん、って返って来た時には」
 いや、本当はあのオーナーならやりかねない、と思ったけど。レイは心の中で呟き、その時のことを反芻する。
 
 それが元でナオとその恋人は軽いケンカになったそうだが、犬も食わないというアレで、結局は前以上にラブラブになったらしい。面白くもなんともない。
 ナオに本心を悟られないようにレイはにっこりと笑った。

「あの人、ナオさんのことマジなんですね。メールひとつでそんなに慌てるなんて。……こんなに想われてるのにその気持ちを疑うなんて、あんまりだと思いますけど」
「……そうかなあ……? そう言われたら、そうかもしんないけど……」
 
「オーナーだってそろそろナオさんが自分のものだって判って来たんじゃないですか? だから、ダレと会っても構わないって」
「……自分のものって……」
 ナオはそばかすのある白い頬を赤らめた。そんなナオの恥ずかしそうな顔を見るたびに、レイは、ああチクショウ、と思う。

 恋人とのことを冷やかされたナオが自分に見せるその表情は、半端なく可愛い。しかし、その表情は冷やかされた恋人のものなのだ。
 もし自分が ───。
 
 その恋人になりたいと思って行動したら。
 
 レイは心の中でため息を吐いた。戸惑ったナオが自分から離れていくことは判り切っていた。
 ナオが恋をしているのはヘヴンのオーナーであって、自分ではない。

「……そうですよ。ナオさんはオーナーのものでしょう」
 心も身体も。全部。
(ナオさんはあのひとのものになりたい、と思っている)
 自虐的だなあ、と判っていながら、レイはその考えを胸の中で噛みしめた。
 
「……僕は、臣さんのものかもしんないけど」
 おずおずと言い出したナオに、ほらみろ、とレイは苦笑した。まったく俺の入り込む隙なんてない。
 好きな相手が、他の男のことを心の底から想うのを目の当たりにするのはいっそ清々しかった。
 
 そんな悟りを開いたかのように穏やかなレイを、思い詰めた目で見て、ナオは口を開いた。
「臣さんが、僕だけとは限らないだろ」
 
「ナオさんだけじゃなかったらダレがいるっていうんです?」
「……レイ、とか」
「マジですか。やめてください」
 
 ……どうして。どうして、俺とアレがどうかなってると思うんだっ?
 レイは肩を落として、今度は心の中でなく、現実にため息を吐いた。
 
「本当に、ほんっとーにやめてください。俺とあのひとがどうとか想像もしないでください。マジで」
「だって、だってさあ、レイってキレイだし、なんか雰囲気あるし、臣さんがレイのメール気にするのってそういう」
「違いますっ!」
 
 ナオさんに綺麗とか雰囲気ある ─── 多分その雰囲気はナオさんに対する気持ちだろうけど ─── とか言われるのは、気にされてるみたいで正直嬉しい。嬉しい、けど。
(あの男と俺がデキてるとか思われるのは死んでもいやだ!)
 錯乱しそうなる気持ちを抑えながらレイは冷静に言った。
 
「絶対違います死んでも違いますそんな誤解されるくらいなら死んだ方がマシです」
「……そこまで言わなくても……」
 
 そこまで言うほどのことだ、とレイは苦笑いするナオに面白くない顔を向けた。─── 大好きな臣さんの気持ちが離れてしまったのかもしれない、という不安で、想像力がおかしな方向へ働いたのだろうが、それにしてもあんまりではないだろうか。

(……あーあ。なんで俺、このひとのこと好きなんだろうな……)
 カレシいるのに。俺なんて弟ぐらいにしか思われてないのに。小さいし、顔なんかも小作りだし、華奢で細くて乱暴になんか扱えない感じで、でも芯が強くて、他人の気持ちに寄り添うようなとこあるくせに俺の気持ちには鈍感で。

(……やっぱり好きだなあ……)
 冗談でもいいからいっぺんチュウさしてくんないかな。百歩譲って抱きしめるだけでもいいや。……千歩譲って手ェ繋ぐだけでも……。
(……て中学生か、俺……)
 
 つい自嘲気味に笑ってしまったレイに、ナオはほっとしたような笑みを向けた。
「……怒ってないよね? レイ」
「怒ってませんよ」
 要するに、ナオはヘヴンのオーナーのことが大好きだ、というだけなのだから。レイは自分の気持ちなどおくびにも出さず、席を立った。

「アイスコーヒーでいいですか。取ってきます」
「あ、うん」
 二人分のコーヒーを手に戻ってきた時には、次の客を入れる為にテーブルの上がすっかり片付いていた。

 席に座ってからレイは肩を竦めた。
「やっぱり落ち着きませんね」
「まあねー、こういうとこだからね。ゴハン美味しかったからなんでもいいいけど、……もう出る?」
「そうですね、……映画でも、どうですか?」

「うん。いいよ。なに観る? 観たいのある?」
 ……ほらこうやって断らないところが期待させるんだよな、とくったくなく微笑むナオから目を逸らして、レイはストローに口を付けた。
 
 
 
 
       

      目次第3話
  

↓*投票して頂けると嬉しいです

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

 

 

インフルでコタツ寝

たくさんの拍手ありがとうございます。o(_ _)oペコッ 

前回の記事とおんなじ書き出し……なんかネタがないものか。うーん……あ、旦那さんがインフルエンザA型と診断されました。(||´Д`)o=3=3=3 ゴホゴホ

無論看病はしますが、うつったらいけない、ということで、この二日くらい八月コタツで寝てます。全然寝不足です。ベッドで……寝たい……。(-.-)zZ

そして次男もインフルっぽく熱が上がってきたので、さくさくと病院へ。リレンザもらってきました。

今日もコタツか……。(@Д@;

コメントありがとうございます(*^-^) コメレスです↓

続きを読む "インフルでコタツ寝" »

拍手ありがとうございます\(^o^)/

 ヘヴン2にたくさんの拍手ありがとうございますo(_ _)oペコッ

 コメレスです。↓

 

続きを読む "拍手ありがとうございます\(^o^)/" »

新年

 あけましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願いします。o(_ _)oペコッ

 年末年始にも関わらず、拍手を頂けて大変嬉しいです\(^o^)/ いろいろとお忙しいでしょうに、はるばるうちのブログに来て頂けるなんてほんとに感無量……モジモジ(。_。*)))

 さて、ご挨拶がてら、ヘヴン2の第1話を掲載しました。(軽!Σ(゚д゚;)

 第1話というかプロローグみたいなもんですが、エピローグに当たるものがなさそうなので、第1話です。……うーん、あれをエピローグにするか……? ないわけじゃない、ような気もするんですが、まあ、ごちゃごちゃするので、第1話で。(^-^;

 また掲載ギリギリまで手直しの連続ですが、読んで頂けると嬉しいです。(*^-^)

       

                                  

ヘヴンズブルー2:目次

 ~あらすじ~

 ふたりで暮らしていた和臣とナオだったが、和臣の気は塞いでいた。自分の独占欲を押し付ければナオを失なってしまうかもしれない……。そんな疑心暗鬼に囚われた和臣はナオと距離を置こうと冷たい態度を取り始める。
 一方、和臣の態度に気持ちが離れてしまったのではないか、と不安を募らせるナオの前には和臣の父の秘書を名乗る男・黒川が現れた。和臣と別れるように迫られたナオはそれを承諾し、マンションを出て友人のレイの元へ身を寄せる。

 ※「きみの2」「in heaven…」「息も…」と少し繋がってます(^-^; 十八歳以上の方は読んで頂けると、より一層楽しめるかと思います。

 ※後日談、掲載しました。よろしくお願いします。

 

    第1話

    第2話 

    第3話 

    第4話 

    第5話 

    第6話 

    第7話

    第8話 

    第9話 

    第10話 

    第11話 

    最終話

    ~ 後日談 ~

    この空の下:目次 

 

※投票して頂けると嬉しいです

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

 

ヘヴンズブルー2:第1話

  
 軽くため息を吐いた成沢 和臣は、目頭に指を当て、揉み解した。
 経営する店舗のひとつ、ヘヴンズブルーの事務室。和臣の目の前のパソコンの液晶画面に映し出されている売り上げデータは決して芳しくはなかった。

 その前に所有する他の不動産物件からの収入データも検分したが、この不況にしてはよくやっているという程度で大きな儲けが出ているわけではない。

 しかし、実際のところ、それらのせいでため息を吐いたわけではなかった。
 
 三日ほど前にほんのちょっとした事件が起きた。知り合いの少年が監禁され、その救出に手を貸すことになったのだ。少年の恋人は、少年が自分のところへ帰って来ないはずがないと言い張り、譲らなかった。結果としてその主張は正しく、少年は養父に監禁されていて、和臣は少年の恋人と共にそこへ乗り込んだ。

『そいつと僕のどこが違うんだ』
 その時、養父に言われたその言葉は、少年の恋人にはひどく堪えたらしい。電話で話した時は自己嫌悪で落ち込んでいた。─── 「あの男と自分は同じだ」と。

 和臣はそれをその場で言下に否定した。
 
(柚月くんとあの男が同じなら、この世には支配欲の塊みたいな人間しかいないだろうよ)
 柚月 ─── 少年の恋人 ─── の性質を何から何まで全て知っている、とは言わない。
しかし、それでも柚月は恋人を傷つけたりはしないと断言出来る。彼は、恋人である少年を苦しめるくらいなら、自分が傷ついたほうが百万倍マシだと思っているような人間なのだ。

(監禁して脅して、無理やり自分の意のままにしようとする奴とは、人間の格ってものが違う)
 相手の為ならば自分が血を流すことも厭わない、といったような柚月の性質を、和臣はまばゆく思っていた。
(……羨望、ってやつかね)

 正直、以前の和臣ならば、柚月のような人間の話などキレイごとだと一笑に付し、都市伝説か、と意地悪く思ったに違いない。実際、初めは信じていなかった。 しかし、柚月は、和臣のところに転がり込んできていた少年 ─── ハルを二度も迎えに来、ハルが和臣に想いを寄せていると知ると ─── 本当のところ、それは大きな誤解だったが ─── ハルを、和臣に預けようとした。

 その頃にはどうしようもなくハルに惹かれていると、絶対に手を離したくないと思っていたにも関わらず、だ。
(……あの時の、悲愴な顔)
 ハルをこの店へ送り届け、遠く離れた出入り口の近くで、カウンターにいる自分とハルをじっと見つめていた柚月の顔が思い浮かぶ。

(まるでこの世の終わりみたいな顔をしていた)
 心臓が焼き切れるような、そんな想いをしても、ハルが幸せになる方を選ぶ。

(……まったく、柚月くんには敵う気がしない)

 自分とは違うと和臣は思う。自分は ───。

(……あの男と一緒だ)
 和臣の思いはそこへ帰っていく。─── 何度も、何度も浮かんでくるその思い。

 周囲の人間の前では何事もないように振舞っている和臣だったが、ハルの養父の支配欲、傲慢さ、思い通りにならなければ気が済まない気質、その醜さ ─── それを目の当たりにして「もしかしたら自分もこうなのか」と打ちのめされたような気持ちになったのは、柚月だけではない。

 むしろ柚月ではなく、和臣こそ怒りを伴うほど痛感したのだ。─── 「こいつと俺は同じ種類の人間だ」と。
 同類嫌悪で思わずその養父に対して必要以上に威圧的になったが、頭に昇った血が下がり切ると、反動のように気持ちが沈み始めた。
 
 冷静に考えても、ハルを監禁した養父と自分は同じタイプの人間だ。違うのはただ一点だけ。
 手に入れたいと願った人間 ─── 現在の恋人であるナオが、幸運にも自分を好いてくれたということだけだった。
 体面を失っても手に入れたいと望んだ、彼の柔らかな笑顔が和臣の脳裏を過ぎる。
 
 それをかき消すように、あの男の声が耳に蘇った。
『……どうして……瞠は僕のものだ。何もかも思い通りにしていいはずだ……』
『そいつと僕の、どこが違うんだ……そいつだって瞠を所有していると思っているから、ここに来たんだろう……!』

 養父の ─── 長谷川の気持ちが判り過ぎるほど判ってしまって、思わず苦笑した。─── ナオの気持ちが移って他の男の元に身を寄せたとしたら、自分も同じように彼を取り戻そうと「所有権」を主張するだろう。

(あれは、ナオの気持ちを失い、それを必死に取り戻そうとする俺そのものだ)
 そんなふうに自己嫌悪に駆られること自体、和臣には耐え難いものだった。自分が悪い、などとくよくよ思い悩むのはみっともない自己陶酔に過ぎない。自分を否定してその先へ進むのを拒むような思考回路を和臣は持ち合わせていなかった。

 そんな和臣でさえも、長谷川の存在は精神的に堪えていた。─── ナオに執着すればするほど、長谷川に近づく、と判ってしまった。
(……ナオは)
 気付いているのだろうか。自分に向けられているこの独占欲が、養父がハルに向けたものととてもよく似ているということに。

(例え、今気付いていなくても)
 聡いナオのことだ。いずれ気付いて、それとなく自分から離れて行こうとするかもしれない。
 耐えられない、と和臣は真っ先に思った。

(そんなことは耐えられない。ナオの気持ちを失う)
 どうしたらいい? どうしたら、ナオの気持ちを繋ぎとめて置ける?
 和臣は再びため息を吐いて、頭を横に振った。─── そんなふうに思い詰めて考えれば考えるほど、ナオの気持ちが離れていくと判っていた。

 デスクの上に置いてあった煙草の箱を手に取る。際限なく深くなってしまいそうな思考を逸らそうと、一本抜き取り、火を点けた。
 しばらく漂う煙を眺めているとドアがノックされた。

「失礼します」
 入ってきたのはヘヴンのフロアマネージャーの牧田だった。手の上にアイスコーヒーの載ったトレイがある。
 そのグラスをデスクに置き、吸い殻のある灰皿を新しい灰皿と取り換える。

 良く出来た秘書のような一連の動作を見るともなしに見ていると、牧田は動きを止めて和臣に目を向けた。
「……どうかしましたか」
「ああ、……うん」

「あんまり売り上げが悪くてショックなんですか。まさか夜逃げしたいなんて言い出さないで下さいね。姿をくらます前に御大に頭の一つでも下げて援助してもらって下さい」
「……安心しろ、そこまでひどくない」

 冷静な口調で、父親に援助してもらえ、と和臣のプライドなどどうでもいいことをきびきびと発言する牧田に、呆れながら苦笑いが漏れる。
 
「そろそろ店長になったらどうだ? いつでも昇格させてやるぞ」
「またその話ですか。雇われ店長も悪くないですが、オーナーのその怖い表情を見ていると思い切れません」
 
「……この顔は、店の経営状態のせいじゃない」
 唇の端を上げて、自嘲気味な笑みを牧田に向ける。
「そんなに怖い顔か?」
 
「そうですね、怖いというよりも、……」
 言葉を濁した牧田の様子に、彼が最初に発した質問を思い出す。どうかしましたか、と訊いたのは、何も店の経営状態を懸念するばかりではなかったのだろう。
 
 従業員にまで心配されるとはな、と和臣は眼鏡をかけた牧田のすっきりと整った顔を見上げる。
「俺の様子は、そんなにおかしいか」
 
「お気付きじゃないんですか?─── このところずっとぼんやりしてらっしゃる」
「……」
 牧田が言うならそうなのだろう。和臣は煙を吐き出した。

 黙り込んでしまった和臣をそのままに、牧田は軽く頭を下げて事務室を出ていく。牧田の姿がドアの向こうに消えてからも、和臣はその言葉を考えていた。
(ずっと、ぼんやり、か……)

 原因は判っている。ナオに向かう自分の執着心 ─── ナオとの関係、と言ってもいいかもしれない。
(……少し、気持ちを離したほうがいいのかもしれないな)
(少しは、ナオにも自由をやって……そうすれば、きっと)

 新しい灰皿に煙草を押し付けて消す。データを保存してパソコンをシャットダウンした。
 アイスコーヒーの氷がカランと音を立てる。グラスの外側の水滴がコースターに吸い込まれていくのを、和臣はただじっと見ていた。

 

      

      目次第2話
  

↓*投票して頂けると嬉しいです

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

 

 

« 2010年12月 | トップページ | 2011年2月 »

2019年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フォト

リンクⅡ

  • 拍手お礼画像等を使わせて頂いています


  • アルファポリス


     
  • 雪ひろとさんと鷹槻れんさんのサイトです。


ブログバナー

  • Bromance

    リンクフリーです。報告は任意でお願いします。
無料ブログはココログ